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#16 謎の神社に謎のおみくじ、もうひとりの転換者。

本日も更新します。私偉い

 性転神社にやっと辿り着いた僕たち。過酷な道を2時間歩き抜いて、汗だくでヘトヘトだ。興奮する美月ちゃん、疲れきった山田さん、お礼の気持ちでいっぱいの僕。三人で鳥居をくぐって境内に入った瞬間、なんか変な感じがした。


 さっきまでジジジッと頭がおかしくなりそうなほど鳴いてたセミの声が、パタッと止んだ。夏真っ盛りの暑苦しい空気も、スーッと涼しくなって、異様な静けさに包まれる。別世界に来たみたいだ。


「ね、ねえ、ちょっと怖いんだけど……」


 山田さんが小声で呟いて、僕の腕をつかむ。顔がちょっと青い。


「え、マジ!? やばい! オカルトすぎる! 最高!」


 美月ちゃんは目をキラキラさせて、150cmもない小柄な体でピョンピョン跳ねてる。長い前髪が揺れて、メカクレの片目がチラッと見えた。


「僕、2回目だしあんまり気にならないけど……確かに不思議だね」


 初めて来たときはビックリしたけど、今は慣れた。お社の前に三人並んで、賽銭箱を見つめる。木の匂いと静けさが妙に落ち着くけど、やっぱり普通じゃない雰囲気だ。


「じゃ、僕から行くよ」


 カバンから5000円札――ピン札だよ!――取り出して、賽銭箱にそっと入れた。深々と頭下げて、心の中で感謝と祈りを。


「僕を女の子にしてくれてありがとう。また楽しく過ごせますように」


 目開けると、スッキリした気分。次は山田さんが前に出て、小銭入れガサゴソ。


「えっと、私、25円にする。語呂合わせがいいのよ、二重にご縁ってね」


 25円をチャリンと入れて、軽く手を合わせる。怖がってるわりにはちゃっかりしてるな。最後に美月ちゃんが、カバンから1万円札を取り出した。


「え、美月ちゃん!? 1万!?」


「オカルトに敬意払うならこれくらい当然だよ」


 1万円札をふわっと賽銭箱に入れて、目を閉じる。何かブツブツ呟いてるけど、聞こえない。めっちゃ真剣だ。僕と同じ額入れるなんて気合入ってるな。


 全員祈り終わって、お社の前で感想言い合った。


「なんか、スッキリしたよ。やっぱりここすごいね」


「私は……怖かったけど、まあ無事に済んだし良かったかな……」


「最高! オカルトの気配バッチリ感じた! また来たい!」


 美月ちゃんのテンションに、僕と山田さんは苦笑い。で、来た道戻ろうと歩き出す。山田さんが早速、


「え、また2時間歩くの? 無理だって! 足死ぬよ!」


「確かに暑いし大変だったよね。僕のハンディーファンの電池また切れちゃってるし……」


「美月が元気すぎるのが悪いんだよ。私、もう限界だから!」


「オカルトの試練だよ、耐えなきゃ」


 美月ちゃん、クールに言い放つけど、山田さんはブーブー文句。まあ、気持ち分かるよ。でも、鳥居くぐった瞬間――なんかおかしい。


「え、待って、どこ!?」


 目の前が、いきなり田舎の駅の近く。さっきまでの山道も神社も消えてて、普通の田舎の風景。セミのジジジッって音がまた聞こえてきて、暑さが戻ってくる。振り返っても、鳥居も何もない。ただの草っぱらだ。


「え!? 何!? どういうこと!?」


 山田さんがパニックで叫ぶ。僕もビックリして、


「え、僕も分からないよ! こんなの初めてだ!」


「やばい! オカルトすぎる! 瞬間移動!? 最高!」


 美月ちゃんだけテンション上がって、目をキラキラ。山田さんが僕の腕つかんで、


「ねえ、神尾くん、これやばくない!? 私、怖いんだけど!」


「う、うん、確かにやばいけど……でも、無事に駅まで戻れたし、良かったんじゃない?」


「良くないよ! 非科学的すぎる!」


 山田さんの叫びに、僕と美月ちゃんちょっと笑っちゃった。でも、そのとき気づいた。僕の手、なんか握ってる。見ると、性転神社名義のおみくじ。紙に「性転神社」と書いてあって、小さな紐で結ばれてる。


「え、これいつ!?」


 慌てて美月ちゃん見ると、彼女も同じおみくじ握ってた。


「私も持ってる……やばい、オカルトの贈り物!?」


「え、美月ちゃんも!? 何これ!?」


 山田さんは持ってなくて、


「え、私だけないの!? 何!? 差別!?」


「山田さん、25円だったからかな……」


「語呂合わせが悪かったって言うの!?」


 僕と美月ちゃん、おみくじ見つめてドキドキ。山田さんはムスッとしてる。


「ねえ、これ家帰って開けてみようよ。みんなで結果持ち寄ったら面白いよね」


「うん! オカルトのメッセージ絶対読みたい!」


「私はいいよ! 怖いから関わりたくない!」


 結局、おみくじは持ち帰って開けることに。電車何度も乗り継いで最寄り駅着いたときには、もう日も暮れてて、全員くたくた。明日また会う約束してRINEを交換、その日は解散した。



 家に帰ると、お母さんのご飯の匂いがしてホッとした。「ただいまー」って言ったら、


「おかえり、夏樹。遅かったね」


「うん、ちょっと遠くまで行ってて……」


 お母さんのカレー食べて、お風呂入って、寝る支度。ベッドにゴロッと横になって、ふとおみくじ思い出した。「そういえば、これ開けてなかった!」って飛び起きて、カバンから取り出す。紐解いて、ドキドキしながら広げた。


「運勢……大吉! やった!」


 喜びつつ内容読む。古風で難しい言い回しだけど、まあいいこと書いてある感じ。「健康に恵まれ、友情が深まる」とか「努力が報われる」とか、当たり障りないな。でも、最後の一文が引っかかった。


「性転の力を過用せば、思わぬ副作用あらん。慎めよ」


 要約すると、「今のままなら問題ないけど、性転換の力使いすぎるとヤバいことになるかも、気をつけて」って感じ。え、ちょっと待って、副作用!? 何!? 怖くはないけど、なんかモヤモヤしてきて、そのまま寝ちゃった。



 翌日、怖くなったわけじゃないけど、念のため久しぶりに男の子の姿で山田さんと待ち合わせ場所へ。駅前の広場で、山田さんが先にいて、僕見るなり、


「神尾くん、え、男!? 珍しいじゃん!」


「う、うん、なんか気分でさ……」


 ちょっと照れつつ答えた。美月ちゃんまだ来ないのかなって思ってたら、山田さんのスマホがピロンって鳴る。RINEを見ると、


「緊急事態だからちょっと遅れる」


「え、緊急事態!?」


「美月のアパート近いから、様子見に行こうよ」


 僕と山田さん、急いで美月のアパートへ。5分くらいで着いて、エレベーター乗らず階段ダッシュ。部屋の前着いた瞬間、中から「うわあああ!」って叫び声!


「美月!?」


 山田さんが扉に飛びついてノブ回す。僕、「鍵閉まってるんじゃ……」って思ったけど、なぜか開いてて、ガチャッとドア開く。中入ると、そこにいたのは――男の子!?


「え、誰!?」


 見ると、夏樹と同じくTSした、男の子の美月ちゃんだった! 前髪長いままだけど、声低くて、明らかに男の体型!


「美月!? え、男!?」


「やばい、オカルトすぎる……私、男になっちゃった……」


 美月ちゃん、クールな声で呟く。


「何!? 神尾くん、これどういうこと!?」


 部屋の中、僕と山田さん呆然、美月ちゃん男の姿で立ち尽くす。性転神社の謎、また増えちゃったじゃん!

明日も18時です。

感想とかどしどしください(渇望)

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