#15 TSしたあとにTS前の身分証を出すことは詐称を疑われるだけでなく知り合いに会った時のリスクが高いので気をつけるべき。
2026年1月4日改訂版です。
タイトル変更しています。
読みやすさが250%アップしています。
体調が悪い時に勢いで書いた文はカスだということを再認識しました。残り数話も数日中に行いますのでお待ちください。
ここまでの状況をおさらいしてみよう。
女の子のカワイイボイスで遊ぶためカラオケ店にやってきた僕!気持ち良く歌い終えて、いざお会計へ!そこで大ミス!男の写真が写った学生証を出してしまい疑われる不正使用!しかも店員さんは同じ学校の知り合い!これから僕はどうなっちゃうのー!?
たすけて。割とマジで。
「事情って……何? ねえ、神尾くん……?、あなた、これどういうこと?」
「えっと、違うんです、これは、その、ほら!あー、ちょっとした事情で……!」
無理があることは言っている僕でもわかります。
もうちょっと上手な嘘をつけよって思ったでしょ!?しょうがないじゃんだって言い訳が思いつかないんだもん。
「ちょっと待って、ニセ神尾くん。ここじゃ話しにくいから、裏で話そう」
「え、ええっ!?」
抵抗する間もなく、スタッフ用のドアの向こうへ連れ込まれた。
狭い通路に段ボールが積み重なってて、事務室的というか、なんかいかにも裏方!って雰囲気だ。
山田さんは後ろ手でドアをバタンと閉めて、僕のことをガン見してくる。
「で?どういうことなのか説明してくれるよね?」
「は、はい……あの、その……」
頭はフル回転でも、いい答え方は下りてこない。
……そもそも「神社で願ったら女の子になれるようなった」なんてあまりにも滑稽無類すぎて、正直に言っても信じてもらえるわけないだろう。
だって自分でも今思うとバカみたいな話だと思うし。とりあえず、なんとか誤魔化そうと口を開く。
「あのさ、その、変装してるだけなんだ!」
「変装?」
山田さんが目を細める。うん、めっちゃ疑ってるね。
「こ、これは女装なんだ!」
自分でも苦し〜〜〜って思いながら喋る。
山田さんは黙って聞いてたけど、急にため息ついて、目は訝しげにこちらを射抜く。
「女装って言ったって、身長も縮んでるように見えるし、骨格だってどう見ても男の子のものじゃないわ。声もそんなに自然に出るものじゃないわよね?気づいてなかったかもしれないけど私途中で何回かフード運ぶときにあなたの部屋の横を通ったけど、男の出せるキーじゃなかったわよねよ。つまり、あなたは少なくとも女装してる訳じゃない。証明完了ね」
「……あぅぁ」
詰んだ。完全に詰んだ。いやまあ、そもそもが無理があったんだ。
山田さんの冷静なツッコミにはもう言い逃れできない。でもじゃあ、どうする……?
「え、えっと、あのぉ」
僕がそんなことを思ってフリーズしていると、出口を塞ぐように仁王立ちしていた山田さんは溜息をつきながら腕を解いて、今までより少しだけ優しい声で言ってきた。
「うーん……なんかそういう嘘が付けなくてすぐテンパっちゃうところとか、話し方の癖とかはすごく神尾くんっぽいわね……」
「……!!信じてくれるの……!?」
「まだ信じたじゃないわ。でも、まあ今回はいいわよ。あなたが神尾くんであろうと神尾くんの身分証を持ってきた通りすがりの女の子であろうと。
今日は店長もいないし、わざわざ警察呼ぶのだって面倒だし、退勤時間が延びるじゃない。
実は私、今日のバイトあと10分で終わるのよね」
「もう一回確認するけど、本当にあなた神尾くんなのよね?」
「う、うん……」
「じゃあ、とりあえずそういうことにしておいてあげるわ。そ、の、代、わ、り、っ!私の仕事終わったらちゃんと話聞かせてね?」
「う、うん……分かった」
「……逃げないでね??」
「ひゃ、ひゃいっ!?」
最後ドスの効いた声で念押しされて、僕は思わず小動物のような悲鳴を上げてしまう。
完全に逃げ場なし。どうもありがとうございましたっ!!!
もう正直に話すしかないとは思うんだけど、ただ、ほら……どうやって信じてもらおう……。
ちなみに代金は温情で学生料金にしてもらえた。
◇
20分後。
カラオケ店の裏口で待っていると、制服から私服に着替えた山田さんが姿を表した。
なんでこの間に逃げなかったのかって?……それも考えたけどさ!
僕たちは同じ学校でそこそこ顔を合わせる機会もある中で、夏休み明けにどんな顔していればいいのかわからないじゃんっ!!
「じゃあ、近くのファミレスで話そうか。じっくりと」
「う、うん……」
山田さんの後に続いて、数件先のファミレス気分は尋問官に連行される罪人だ。
店に入りるとボックス席へ案内され、僕たちは向かい合って座る。
何も頼まないわけにはいかないのでドリンクバーを注文。コーナーでドリンクを取ってくるやいなや、山田さんは僕に詰め寄る。
「で、暫定神尾くん。本当のところ、あなた誰なの?どういうつもりなの?ねぇ、教えてよ」
捲し立てるように圧を掛けてくる彼女に思わずたじろぐ。
これはもう、正直に話した方がいいかな……。そりゃ見世物になるのはごめんだけど、別に絶対に隠し通さなきゃいけない能力じゃないと思うし。
何より、嘘が付けない僕にとっては、それがいちばん手っ取り早く後腐れないように思える。
「信じてもらえないかもしれないけど、実は、神社でお願いごとをしたら、女の子になっちゃったんだ。しかも、いつでも男に戻れる能力もついてきて……今は女の子の姿を楽しんでる、みたいな?……感じ……」
ストローを刺してジュースをすっていた山田さんの動きが止まる。表情を2、3回変えて、何が言いたげな表情をして、言い淀んで、少ししてゆっくり口を開く。
「……は?神社に願ったら女の子になった?いや、え、本気で言ってる?頭やっちゃった?大丈夫……?」
まぁ、そうなるよね。普通に僕も有り得ないとは思うんだけど。でもこれが本当だからそうとしか言いようがなくて。
「さすがに非科学的すぎて信じらんない」
そう付け加えたらこの反応。山田さんは常識人だった。
「女装とかじゃなくて……?それならまぁ……理解はするわよ……?」
「じゃなくて」
「だったら性自認的なあれだったりする感じ?それにしては変化が急すぎると思うのだけど?」
「そういうわけじゃないです」
「……頭痛い。整理するわ、あなたが言ってることは、ある日突然、身体の性別が完璧に変わったってことよね?」
「そういうことです」
「いやいや、いやいやいや……じゃあそんなオカルトじみたこと有り得るわけないじゃないっ!?もっとマシな嘘つきなさいよっ!!」
「嘘じゃないってば! ほら、こうやって戻れるし!」
頭の処理が追いつかなくなってムキになったのか喚く山田さん。ピークタイム後の空いている時間帯とはいえ、他のお客さんもいるから視線が注がれる感覚に慌てて静止しようとする。
仕方ない、もうこうなったらアレをやって見せるしかない……!!
「山田さん、ちょっと見てて。」
そう言って山田さんを静止すると、僕は少し集中して、
(男に戻れ)
と念じた。
瞬間、光が僕を包み込んで、僕は男に戻った。
……服が女の子の僕に合わせたレディースモノだからちょっとキツイんだけど
「え、え、え!? 今、何!?え、神尾くんっ!?……男!?今の女の子が、え、神尾くん……いやまあ確かに面影はあった気はするけど……そうじゃなくて、え、性別が、変わった……?ええぇ!?」
大混乱する山田さん。でもこれで能力がホンモノだって伝わったよね。
……明らかに男が女装してるみたいで恥ずかしいからもう戻るよ!もう見たよね!いいよね!
(女の子になれ!)
慌てて女の子の姿に戻ると、山田さんは目を白黒させて、大混乱している様子。
アニメや漫画で言うなら、渦巻きのようにぐるぐるした目だ。
そうしてしばらくブツブツ言っていた山田さんはやがて黙り、なにかを考えている様子でやっと口を開く。
「……信じられない……こんなこと、あるわけない。……あるわけないのに……。でも……確かに今見たわけだし……信じるしかないのかしら……」
「信じてくれると助かるよ」
「うーん……そうは言われても、科学的に説明できないことは信じにくいわよ。私、オカルトとかスピリチュアルとか信じてないから」
信じられないものをどうにか咀嚼して飲み込もうとする山田さん。だけどまだ完全には信じられていなさそうだ。
それからまたしばらく考え込んだのち、山田さんはハッと顔を上げて、
バンッッ!
テーブルに両手で台パンして、僕の方にグイッと体を乗り出す。
「ねえ、神尾くん。その……神社?ってどこにあるの」
「え? 電車何本も乗り継いで、田舎の駅から徒歩2時間くらいの山の中なんだけど……」
「ふーん。じゃあさ、そこに連れて行ってよ。私の友達にオカルト大好きな子がいるから、その子も呼んでさ。私の目で、実際に見れば、本当だって信じれるかも」
「ええっ!?」
さすがに予想外すぎる提案にビックリする僕に、山田さんはニヤッと笑ってこう告げた。
「じゃあ、決まりね。明日……はダメねシフト入ってるから、来週はあいてる?そんな非科学的な超常現象が実際に起こりうるなら自分の目で確かめてみたいものね……っ!!」
「……うん、まあ、それならいいけど……」
スマホのカレンダーアプリを開いてみるも、その日は特に何も用事は無い。
……ちょっと強引な気がするけど、とりあえずは信じて貰えた……?ことだし、まぁ、御礼参りもしたかったし、丁度いいかな。
こうして、山田さんのノリで、僕はもう一度あの神社に行くことになったのだった。




