#15 謎の神社にもう一度行ってみよう!
本日も更新します。
筆者はカラオケ店ではバイトしたこと無いです。
カラオケ店の会計カウンターで、山田彩花さんに詰め寄られた瞬間、頭が真っ白だった。女の子の姿で学生証を見られて、しかもその学生証には男の子の僕の写真が貼ってある。山田さんの目が怪訝そうに僕と学生証を行ったり来たりして、心臓がバクバク、冷や汗が止まらない。
「事情って……何? ねえ、神尾くん、これどういうこと?」
彼女の声が低くなる。僕の頭は「逃げる?」「いや、怪しすぎる!」とかぐるぐるしてパニック。
「えっと、違うんです、これは、その、ちょっとした事情で……!」
なんとか誤魔化そうと絞り出した言葉もめっちゃ弱い言い訳。山田さんは眉を寄せてじっとこっちを見てる。そりゃそうだよね。こんな状況、どう考えてもおかしいもん。すると、山田さんが僕の腕をつかんでカウンターの奥に引っ張っていく。
「ちょっと待って、神尾くん。ここじゃ話しにくいから、裏で話そう」
「え、ええっ!?」
抵抗する間もなく、スタッフ用のドアの向こうへ連れ込まれた。狭い通路に段ボールが積み重なってて、事務室的というか、なんか裏方っぽい雰囲気。山田さんはドアをバタンと閉めて、腕を組んで僕をガン見。
「で? 説明してくれるよね?」
「う、うん……あの、その……」
頭フル回転。 でも、「神社で願ったら女の子になれるようなった」なんてあまりにも滑稽無類すぎて、正直に言っても信じてもらえるわけないだろう。だって自分でも今思うとバカみたいな話だと思うし。とりあえず、なんとか誤魔化そうと口を開く。
「あのさ、実は、ちょっとした実験で……その、変装してるだけなんだ!」
「変装?」
山田さんが目を細める。やばい、めっちゃ疑ってる。
「うん、そう! ほら、委員会の企画でさ、変装してどれだけバレないか試してみようって……」
自分でも「うわ、苦しい嘘!」って思いながら喋ってた。山田さんは黙って聞いてたけど、急にため息ついて、目は訝しげにこちらを射抜く。
「神尾くん、委員会でそんな企画やってないよね。私もメンバーなんだから知ってるよ。そもそも夏休みにやらないでしょ委員会」
「……あ」
詰んだ。完全に詰んだよ! 山田さんの冷静なツッコミにはもう言い逃れできない。どどど、どうしよう。
僕がそんなことを思ってフリーズしていると、山田さんは溜息をつきながら腕を解いて、少しだけ優しい声で言ってきた。
「まあいいよ。実は私、今日のバイトあと30分で終わるからさ。終わったらちゃんと話聞かせて。逃げないでね」
「う、うん……分かった」
逃げ場なし。正直に話すしかないのかな。でも、どうやって信じてもらおう……。
ちなみに代金は温情で学生料金にしてもらえた。
◇
30分後、カラオケ店の裏口で山田さんと待ち合わせ。彼女は制服エプロンを脱いで、学校の制服に着替えてた。見慣れた姿だと「あ、山田さんだ」ってすぐ分かるけど、僕の秘密を知ってる人が目の前にいるって思うとドキドキする。
「じゃあ、近くのファミレスで話そうか」
「うん、いいよ」
という感じで、僕たちは駅前のファミレスへ。奥の席に座って、山田さんはドリンクバーを注文。コーナーでドリンクを取ってくるやいなや、真っ直ぐこっちを向いてきた。
「で、神尾くん。本当のところ、どういうこと? さっきの変装って話、嘘でしょ?」
「……うん、嘘だった。ごめん」
観念して、正直にぶっちゃけた。
「実はさ、性転神社ってとこで願ったら、女の子になっちゃったんだ。しかも、いつでも男に戻れる能力もついてきて……今は女の子の姿を楽しんでる、みたいな?」
要点を掻い摘んで、大体全部話す。次第に山田さんのジュースを飲む手が止まって、目が「!?」ってなっていく。
「は!? 性転神社? 願ったら女の子? 何それ、非科学的すぎるんだけど」
「そうだよね! 自分でも信じられないよ! ……でも本当なんだって!」
必死に訴えたけど、山田さんは首を振る。
「いやいや、そんなオカルトありえないよ。神尾くん、もっとマシな嘘ついてよ」
「嘘じゃないってば! ほら、こうやって戻れるし!」
ファミレスの席で、ちょっと集中して男の子の姿に戻ってみせた。光が僕を包み込む。山田さんが「きゃっ!」って叫んで、ジュースこぼしちゃった。
「え、え、え!? 今、何!? 本当に男に!?」
「でしょ!? だから言ったじゃん、本当だって!」
慌てて女の子の姿に戻ると、山田さんは目を白黒。しばらく黙ってたけど、やっと口を開く。
「……信じられない。こんな非科学的なこと、あるわけない。でも、確かに今見たし……」
「ねえ、信じてよ! 僕だって最初ビックリしたんだから!」
「うーん……でもさ、科学的に説明できないことは信じにくいよ。私、オカルトとか苦手だし」
山田さんの言葉にガックリ。どうすればいいのさ。すると、山田さんが顔を急にガバッと上げて言った。
「ねえ、神尾くん。その性転神社ってどこにあるの?」
「え? 電車何本も乗り継いで、田舎の駅から徒歩2時間くらいの山の中なんだけど……」
「ふーん。じゃあさ、私の友達にオカルト大好きな子がいるから、その子連れて一緒に見に行ってみない?」
「ええっ!?」
予想外すぎる提案にビックリ。山田さんはニヤッと笑う。
「だってさ、こんな非科学的な話、私一人じゃ納得できないよ。でも、オカルト好きなら何か分かるかもじゃん。で、どう?」
「……うん、まあ、それならいいけど……」
こうして、山田さんのノリで、僕の秘密を解明する(?)計画がスタートした。
◇
数日後、駅前で山田さんと待ち合わせ。そこに現れたのが、山田さんの友達、佐藤美月ちゃん。身長150cmもないくらいの小柄な子で、僕より10cmくらい小さい。長い前髪が片目を隠すメカクレ系美少女で、普段はダウナーな雰囲気が漂ってる。僕に向かってぺこりと会釈すると、クールな声で自己紹介。
「初めまして、神尾夏樹……オカルト的に興味深いって山田から聞いてきた。性転神社、マジであるの?」
「う、うん、マジだよ……」
「最高……絶対行きたい。今すぐ行こう」
オカルトって聞いた途端、目がキラキラしてテンションが上がっているのが傍目でもわかる。すごくかわいい。
僕たちは電車を何本も乗り継いで、田舎の小さな駅に到着。性転神社はそこから徒歩2時間。とは言ってもこの神社、Go○gleマップにも出てこない謎の場所だ。しかも日によって見つけられるときと、見つけられないときがあるらしい。僕がこないだ一発で来れたのって結構ラッキーだったのかな。
そんな説明を聞いて、美月ちゃんはさらにテンションが上がる。
夏真っ盛りで、駅に降りた瞬間、セミがジジジッと鳴きまくってる。暑さがヤバい。山道に入ると、さらに本気出してきた。最高気温は33℃って言ってた気がするけど、体感気温は40度超えてるんじゃないかってくらい。山田さんは10分もしないうちに泣き言を言い始めた。
「ねえ、ちょっと待って……暑すぎるよ……死ぬって……」
「だ、大丈夫? 山田さん!」
僕はカバンからハンディーファンと冷感タオル出して貸してあげる。温暖化に対抗した人類の現代の利器。これがないともはややっていけない。
「神尾くん、ありがとう……生き返る……」
山田さんはハンディーファン顔に当てて、なんとか歩き出す。一方、美月ちゃんは汗だくでも平気そうな顔だ。
「オカルトの聖地……絶対近い。気配感じる」
「美月、元気すぎでしょ……私、限界なんだけど……」
山田さんの愚痴無視して、美月ちゃんはスタスタ前進。道は急な坂や岩だらけで、セミの鳴き声が頭にガンガン響く。30分過ぎたあたりで、山田さんが音を上げた。
「もう無理……足が動かない……」
「まだ1時間半くらいあるよ! 頑張って!」
「嘘でしょ!? 死ぬって!」
冷感タオルを首に巻いてあげて励ましたけど、山田さんの目は半分死んでる。美月ちゃんは、
「オカルトの試練だよ、耐えなきゃ」
ってクールに言い放ちつつ、先頭キープ。僕も暑いけど、置いてくわけにいかないから必死に歩いた。1時間過ぎると、山田さんがまた止まる。
「ねえ、本当にあんの? この神社……私、騙されてない?」
「あるよ! 僕が来たんだから! あとちょっとだよ!」
「ちょっとじゃないよ! セミうるさいし、汗やばいし……」
ハンディーファンの電池切れちゃって、山田さん絶望。持ってきたモバイルバッテリーで充電してるけど、暫くはお預け。でも、僕が水筒の水かけてあげたら、
「神尾くん、優しい……生きる……」
ってなんとか復活。過酷な2時間が終わり、やっと性転神社に辿り着いた。
小さな神社が目の前に現れた瞬間、美月ちゃんのテンションが爆上がり。
「ここだ! 性転神社! やばい、エネルギー感じる! マジ最高!」
山田さんはヘトヘトで膝に手ついて、
「やっと着いた……本当にあるんだ……信じられない……」
僕も疲れたけど、山田さんに助けられたお礼したくてうずうず。
「山田さん、美月ちゃん、ありがとう! ここだよ、性転神社!」
興奮する美月ちゃん、疲れきった山田さん、お礼の気持ちでいっぱいの僕。三人で神社の境内に入っていく。セミの声が遠くに響く中、この場所の謎はまだ解けないけど、なんかワクワクしてきた。
明日も18時に更新します。
感想評価リアクションお待ちしております
ほんと、「いい」とか「d」とかだけでもめちゃくちゃ嬉しいので!




