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#14 女の子になったからには女声ボーカルの曲も余裕で歌えるわけで。

お久しぶりです。なんやかんやありまして3日間安静にしなくてはならず、久々に纏まった執筆時間が取れましたので更新します。

 僕が女の子になってから一週間が経った。あの性転神社で「可愛い女の子になれて、でもいつでも戻れるように」と願った翌日から、僕、神尾夏樹の生活はガラッと変わった。でも、悪いことじゃない。ううん、すごくいい。

 だってさ、これは僕の理想なんだよ!? こんな可愛い女の子になりたいなぁなんてずっと思ってたのが、実際に叶っちゃったんだから。


 最初は慣れなかったこの身体も、今じゃだいぶ馴染んできた。鏡を見ると「誰この可愛い女の子……僕だ!」って感じで、ちょっとニヤけちゃうくらいだ。変身初日に家族にバレたときは焦ったけど、驚くほどあっさり受け入れてくれて、今では女の子の僕が家にいても誰も驚かない。日常の一部って感じだ。


 あれからもお姉ちゃんにはお古の服を貰ったり、着せ替えられたりしてる。可愛い服をくれるのは嬉しいんだけど、その後の写真撮影が長すぎるのがちょっと悩みだ。

 お姉ちゃん、めっちゃ連写するんだよね。フラッシュが光るたびに「はい、次はこっち向いて!」「ちょっと笑って!」とか指示されて、モデル気分を通り越して疲労感が募る。そんなに撮ってスマホの容量なくならないのかな……とか、ちょっと心配になる。

 昨日なんて「夏樹のベストショットアルバム作るんだから!」とか言ってたけど、正直、そんなに見返す時間あるのかな、お姉ちゃん。





 冬華とも最近よく遊ぶようになった。とは言っても、ここ数日はもっぱら冬華のメイク練習に付き合わされてる。「なつ姉も勉強になるし、この機会に練習できるからいいよね!」って言われるけど、僕が自分でメイクするより、冬華が僕の顔を弄ってる時間の方が長い。

 僕の顔のこと、質のいいキャンバスだとでも思ってるんじゃ……?なんてことをちょっと思ったり。

 でも確かに冬華のメイクは上手くて、ただでさえ美少女な僕がちゃんと超絶美少女になる。しかも日によってクール系だったり可愛い系だったり、テーマを決めてて、それがちゃんとその通りに仕上がってるのがすごい。昨日は「大人っぽい夏樹」をテーマにされて、口紅まで塗られたときはちょっと照れたけど、鏡見て「うわ、僕ってこんな感じにもなれるんだ……」って感動したよ。冬華って、将来そういう仕事に就くのかな。







 そして、この数日で僕が一番ハマってるのが、声で遊ぶことだ。男の子のときの僕の声は、男の子にしては高めだったけど、女の子と間違われるほどじゃなかった。友達には「夏樹って声高いよね」ってからかわれたこともあったけど、今の僕は完全に女の子の声。アニメのヒロインみたいな高くて透き通った声が出るんだ。これが楽しくて仕方ない。例えば、アニメのセリフを真似するとか。日曜の朝、リビングで女児向けアニメを見てたら、ついその場のノリでやってみたくなった。偶然にもリビングに誰もいなかったから。誰もいないということは、誰にも聞かれないということだ。


 テレビでは魔法少女がキラキラしたステッキを振り回してる。僕もソファの上で立ち上がって、彼女になりきってみた。


「キラキラ☆魔法の力で、みんなを笑顔にしちゃうよっ!」


 高い声が部屋に響いて、自分で言うのもなんだけど、めっちゃ可愛い声だ。調子に乗って次のセリフも叫んでみる。


「ハートフル・スパークル・ビームっ!」


 両手を前に突き出して、魔法を放つポーズまで決めた。うん、完璧だ。気分はもう魔法少女そのものだよ。テンション上がって、ついステッキの代わりにリモコンを手に持っちゃってた。


 でもその瞬間、視界の端で何か動いた気がした。扉の方を見ると、ほんの少し開いた隙間からお姉ちゃんと冬華がこっちを覗いてるじゃないか。しかも二人とも、ニマニマした顔で目を細めてる。お姉ちゃんは肩を震わせて笑いを堪えてるし、冬華はスマホを構えてるっぽい。


「ちょっとぉ!?」


 声が裏返って、慌ててソファに座り直した。リモコンが手から滑り落ちて、床にカタッと音を立てた。


「ふふっ、夏樹、魔法少女似合うよ~」


 とお姉ちゃんがニヤニヤしながら言う。


「キラキラ☆って、めっちゃ可愛かった! 動画撮っちゃった!」


 と冬華が追い打ちをかけてきた。


「み、見ないでよ! 撮らないでよ! 恥ずかしい!」


 顔が一気に熱くなって、僕はソファのクッションを抱きしめて顔を隠した。


「えー、見ちゃうよ。だって面白すぎるもんウケる」


 とお姉ちゃんが笑いながら扉を閉める。


「次は一緒に歌おうね!」


 と冬華も楽しそうに去っていった。


「……勘弁して」


 と呟きながら、クッションに顔を埋めた。家族が受け入れてくれるのは嬉しいけど、こういうのはやっぱりちょっと恥ずかしい。後で冬華に「動画消して!」って頼もうかな……。





 それから数時間後、僕は気分転換に外に出ることにした。この前お姉ちゃんと冬華に連れられて買った可愛い服を着てみる。白いブラウスにピンクのスカート、それに小さなリボンのアクセサリーを付けてみた。鏡で何度も確認したけど、やっぱり女の子の姿だとテンションが上がる。髪を軽く整えて、カバンを肩にかけた。


「よし、完璧っ」


 行き先はカラオケだ。だって、カラオケなら誰にも邪魔されずに、この高い声で思う存分遊べるからね。一人で部屋に入れるし、お姉ちゃんや冬華に覗かれる心配もない。最高の選択だよ。


 カラオケボックスに着いて、個室に入るとすぐに曲を入れ始めた。まずは女声のアニソンからだ。画面に流れる歌詞に合わせて、


「君の笑顔が僕の宝物~♪」


 なんて歌ってみる。うわっ、めっちゃ気持ちいい! 男の子のときじゃ絶対出せなかった高音がスルッと出て、ちょっと感動すら覚える。次はボカロ曲に挑戦だ。


「ねえ、聞こえる? この電子の歌声が~♪」


 リズムに乗って手を振ったり、体を揺らしたり。自分で歌ってて思うけど、この声、結構いい感じじゃない? 調子に乗って、昔好きだったアイドルソングとか、最近流行ってるアニメ主題歌とか、次々に入れて歌いまくった。マイクを持つ手がちょっと汗ばむくらい夢中になってた。


 夢中で歌ってると、喉が少し乾いてきた。部屋の電話でジュースを注文して、一息つきながら次の曲を選ぶ。男の子のときは高音が出なくて諦めてた曲も、今なら余裕だ。例えば、このボカロの名曲とか。


「世界の果てまで響き合え~♪」


 最後の一音を伸ばして、気持ちよく締めた。自分で自分に拍手したいくらいだよ。ジュースを一口飲んで、「いやあ、女の子の声って最高!」とか独り言を呟いた。







 時間が経つのはあっという間で、部屋の電話が鳴った。受話器を取ると、店員さんの声が聞こえる。


「お客様、退出時間10分前です」


「え、もうそんな時間!?」


 時計を見ると、本当にあと少ししかない。ちょっと名残惜しい気持ちになるけど、仕方ない。


「わかりました。そろそろ出ます」


「ありがとうございます。お待ちしております。あ、あくまで10分前ですので、時間まででしたら歌われて構いませんので」


「じゃ、じゃあ、最後に一曲だけ……」


 お気に入りのバラードを選んで、しっとりと歌い上げる。


「君と過ごした時間が~♪」


 最後の一音が消えたとき、なんだか満足感でいっぱいだった。やっぱり、カラオケに来て正解だな。喉が少し疲れたけど、それすら心地いい。






 荷物をまとめて部屋を出て、会計カウンターに向かう。カウンターにはバイトっぽい女の子が立ってて、制服のエプロンを着てる。


「学生証を提示していただければ学生料金になりますよ」


 と彼女が言う。


「え、じゃあお願いします」


 カバンから学生証を取り出して渡した。ちょっと得した気分でニコニコしてたんだけど、店員さんが学生証を見て、首をかしげた。


「……神尾夏樹さん?」


「は、はい、そうですが?」


 彼女がじっと学生証を見つめてる。何か変だったかな? と思ったら、彼女が口を開いた。


「えっと、でも、この写真……男の子ですよね?」


 その瞬間、頭が真っ白になった。しまった、女の子の姿で学生証を出すなんて考えもしなかった! 学生証には、もちろん男の子の僕の写真が貼ってある。慌てて何か言い訳を考えようとしたけど、言葉がぐちゃぐちゃになって出てこない。


「え、えっと、それは、その……!」


 彼女が怪訝そうな目で僕を見る。制服のエプロン越しに、胸元のネームプレートが見えた。そこには「山田」と書いてある。……山田? どこかで聞いた名前だ。でも、カラオケ店の制服だから、誰だかすぐには分からない。


「神尾夏樹って、あの委員会の?」


 彼女が呟いた瞬間、電撃みたいに思い出した。山田さん! 学校の委員会で一緒だった、山田彩花さんだ! 隣のクラスの子で、何度か一緒に書類整理とかしたことがある。確かに、男の子の僕のことを知ってるはずだ。


「え、待って、山田さん!?」


 しまった! 声に出してから気づく。僕が相手のことを知らないフリをしていれば、少なくとも女の子の僕=男の子の神尾夏樹って成立しなかったはずなのに! ……いやでも、そうしたら学生証を不正利用した謎の女の子になっちゃうよね、僕!? それなら最初から一般料金にしておけば良かったのにっ……!


「やっぱり! 神尾くん!? でも、女の子……? 女装……? いやでも、流石に自然すぎる……?」


 彼女の目が僕と学生証を行ったり来たりしてる。まずい、完全にバレてる! しかも、僕、彼女がここでバイトしてるなんて気づかなかったし、こんな状況で再会するなんて予想もしてなかった。頭の中で「どうしようどうしよう」がぐるぐる回って、冷静になろうとしても無理だ。


「えっと、違うんです、これは、その、ちょっとした事情で……!」


 頭がフル回転するけど、まともな言い訳が浮かばない。山田さんは眉を寄せて、じっと僕を見てる。


「事情って……何? ねえ、神尾くん、これどういうこと?」


 彼女の声が少し低くなって、明らかに疑ってる。心臓がバクバクしてきて、冷や汗が背中を伝う。この状況、どう切り抜けよう……。

今日から4日連続18時に更新します。

感想評価リアクションお待ちしております。


あとお昼ごろにTS純愛短編(R18)上げたのでそちらも是非。

https://novel18.syosetu.com/n4370kf/

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