#14 女の子になったからには女声ボーカルの曲も余裕で歌えるわけで。
2026年1月3日改訂しました。
黒歴史レベルで恥ずかしい書き方を削除。
やっぱ体調悪いときの全能感信頼しちゃだめ。
僕が女の子になってから一週間が経った。
最初は慣れなかったこの身体も、今じゃだいぶ馴染んできた。
鏡を見ながら「誰この可愛い女の子……僕だ!」なんて言って、わかってるのに繰り返してはちょっとニヤけちゃうくらいには。
ガチャッ!
「ナツキ〜私のお古の服なんだけどこれたぶんもう着ないからやるわ、たぶん似合うと思うよ☆」
「わーいお姉ちゃんありがとう♡」
例のごとく突然扉が開いてお姉ちゃんが入ってきて、僕に服を押し付けて行った。
実はあれからも、ちょくちょくお姉ちゃんにはお古の服を貰ったり、着せ替えられたりしてる。
可愛い服をくれるのは正直かなり嬉しいんだけど、その後の写真撮影が長すぎるのがなぁ。
……いやだって、お姉ちゃん、めっちゃ連写するんだもん……。
「はーい、次はこっち向いて!このポーズ!そう!!それ!!!いい感じ!!!!動くな!!!!」
とか言って指示してくるから、モデル気分を通り越して疲労感が募る。
そんなに撮ってスマホの容量なくならないのかな……。
◇
冬華とも最近よく遊ぶようになった。
とは言っても、ここ数日はもっぱら冬華のメイク練習に付き合わされてる。中学生の冬華にとって、メイクは中学校のクラスの女子の間での流行の最先端なんだそう。
「なつ姉も勉強になるし、この機会に練習できるからいいよね!」
とかなんとか毎回言ってるけど、僕の顔のこと、質のいいキャンバスだとでも思ってるんじゃ……?
僕が冬華に教えてもらいながら自分でメイクするより、冬華が僕の顔を弄ってる時間の方が圧倒的に長い。
でも、確かに冬華のメイクは上手くて、ただでさえ美少女な僕がちゃんと超絶美少女になるんだよね。
「これが……僕……!?」
「僕……かわいい……」
「かわいいのにかっこいい……」
なんて毎日のように驚いている。
しかもさ、日によってクール系だったり可愛い系だったり、テーマを決めてて、それがちゃんとその通りに仕上がっているんだよ?これで始めたてだって言うから、うちの妹凄すぎる。
元々手先が器用だし、絵もうまいと思っていたけど、こんな才能があるとは。お兄ちゃん……今はお姉ちゃん?びっくりだよ。
◇
最近ハマっていることとして、「声で遊ぶ」ことがある。どういうことかといえば、それはもう字のごとく。
今の僕の声ってめちゃくちゃ可愛いんだよね。だから今まで出せなかったカワイイボイス、通称カワボが自分で好きなだけ生産できるのだ。
(再生)
『みんなのアイドル☆かみおなつきですっ♡!』
(再生)
『みんなのアイド』
(再生)
『みんな』
(再生)
『みん』
「んへへへ……」
それに気がついてからは、自分の声をスマホに録音してイヤホンで聴いたり、好きなアニメの女の子キャラクターのセリフを真似して言ってみたりしていた。
この前調子乗って某日曜朝女児アニメヒロインの決めゼリフを収録してたらお姉ちゃんと冬華がこっそり覗いてたみたいで、そのあとめっちゃイジられた。むぅ……
◇
というわけで、カラオケに来た。それも、ヒトカラ。
どういうわけかって?カラオケなら合法的に誰にも邪魔されずに、この声で思う存分遊べるからねっ!
一人で部屋に入れるし、お姉ちゃんや冬華に覗かれる心配もない。我ながら最高の選択を思いついたものだ……!
カラオケ店に着いて受付をし、個室に入るとすぐに曲を入れ始める。
まずは女声のアニソンから。声変わりしてからサビの高音がどうも出しづらいなーと思っていたけど、どうだろう
「はなて〜〜〜〜〜〜〜っ!!♪」
すごい……!!ちゃんと声がハマる。掠れず、芯があって凛とした、それでいてカワイイ声。それが今の僕自身から発せられていることに、興奮しないわけが無いよねっ!?
テンションが上がった僕は次から次へとデンモクに曲を入れる。J-POP、アニソン、ボカロ……。そのどれもがだいたいいい感じに声が出せてホクホクだ。
ちなみに「高音テスト」の曲もかなり良いところまで行くことが出来た。流石に最後の「嘘だよ」からは出なかったけどね。あれはそもそもそういうものだから気にしない。
「ああっ……!楽しい……っ!!!」
とにかく、女の子の僕のカワイイボイスは歌にも通用することが分かったので、僕は次々と間髪をいれずに曲を入れては歌いまくった。
◇
時間が経つのはあっという間で。
部屋の電話が鳴ったので受話器を取ると、店員さんの声が聞こえる。
「お客様、退出時間10分前です」
(え、もうそんな時間!?!?)
時計を見ると、本当にあと少ししかない。延長する……?いや、結構疲れてるからやめておこう。ちょっと名残惜しいけど、仕方ないね。
「わかりました。そろそろ出ますね!」
「ありがとうございます。お待ちしております。あ、あくまで10分前ですので、お時間まででしたら、ラスト1曲歌われて構いませんので」
「じゃあ、お言葉に甘えて……!」
「はい。お待ちしております」
そう言って、電話が切れる。さて、ラスト1曲、何を歌おうか……!?
◇
「ふぁぁぁ……満足満足……」
最後に選んだのは、ハイテンポのJ-POP。凄くハイカロリーな曲だけど、最後に歌うのはちょうど良い。
歌い終わった時には3分前。少し急いで荷物をまとめて部屋を出て、会計カウンターに向かう。
カウンターにはバイトっぽい女の子が立っていて、僕が向かってくるのを待っていたよう。さっきの電話の店員さんかな?
部屋番号の書かれたオーダーシートの挟まれたバインダーを渡して、お会計に移る。
「学生証を提示していただければ学生料金になりますよ」
「え、じゃあお願いします」
カバンから学生証を取り出して渡した。
学割って学生の特権だよね。こんなに楽しんで、割引までしてもらえるなんて、なんて素晴らしいんだろう?
そう思ってニコニコしてた僕を店員の女性がじろじろと見つめる。……なんだろう?
首をかしげた僕に、店員さんが学生証を出して応える。
「……この学生証は本当にご本人のものでしょうか?」
「は、はい、そうですが?」
彼女がじっと学生証を見つめてる。何か変だったかな? と思ったら、彼女が口を開いた。
「えっと、でも、この写真……男の子ですよね?」
その瞬間、頭が真っ白になった。
しまった!!
学生証の僕と、今の僕、全然姿が違うんだ。
「え、えっと、それは、その……!」
彼女が怪訝そうな目で僕をじっと見つめてくる。たぶん、学生証を不正に使おうとしたとか、そういう類の。
必死に弁明をしようとするも、混乱しちゃって言葉が出てこずあわあわと挙動不審になる僕。
もしかして警察に……?僕は学割の不正使用という詐欺で逮捕されて犯罪者になっちゃう……?
一瞬のうちにそんなことを考えていると、ふと店員さんの胸元のネームプレートが見えた。
「山田」
あれ、この名前に、この顔。どこかで会ったことがある気がする……??
「……神尾夏樹って、あの委員会の?」
そう山田さんが呟いた瞬間、僕は急に思い出した。
目の前の店員さんは、高校の委員会で一緒だった、山田彩花さん。
僕の隣のクラスの子で、何度か一緒に書類整理とかしたことがある。
そして彼女は確かに、男の子の僕のことを知っていて。不審がるのも当然だ。
「……山田さんここでバイトしてたんだ……」
しまった!心の声が漏れていたことに、声に出してから気づく。
僕が山田さんのことを知らないフリをしていれば、少なくとも女の子の僕=男の子の神尾夏樹って成立しなかったはずで……いやでも、そうしたらやっぱり学生証を不正利用した謎の女の子になっちゃうよね、僕!? それなら最初から忘れました〜とか言って一般にしておけばっ……!!
「あなた神尾くん!?え、いや、でも、女の子……? 女装……?いやでも、流石に自然すぎる……?」
彼女の目が僕と学生証を行ったり来たりしてる。
まずい、これはまずい。
と、とにかく、なんとかしてこの場を脱しないと
「えっと、違うんです、これは、その、ほら!あー、ちょっとした事情で……!」
僕は絶望的に嘘が付けなかった。
頭はフル回転するのに、まともな言い訳が浮かばない。空回りも良いところだ。
そんな僕の様子を、山田さんは眉を寄せ、じっと見つめる、いや、睨まれている……。
「事情って……何? ねえ、神尾くん……?、あなた、これどういうこと?」
彼女の声が少し低くなって、僕のことを疑っていることは明らかだった。
この状況、どう切り抜ければ…………っっ!!!
TS純愛短編(R18)上げたのでそちらも是非。
https://novel18.syosetu.com/n4370kf/




