実はいい奴な俺は、シベリアンハスキーと友達になりました。
「悪りぃな、送ってもらっちゃってよ?」
俺は今、ケーちゃんの背中に跨って猛スピードで草原を爆走中。
あれから荒ぶるケーちゃんを軽くあしらってやると、ケーちゃんは俺の強さを認め、俺を街まで連れてってくれることになった。
いーよな? こういうのってよ? 旅は道連れっつーかよ? 拳を交えた野郎はもはやダチだっていうかよ? とにかくあったけぇよな?
「おう、ケーちゃんよぉ?」
「どうした、我が主人よ?」
猛スピードで走りながら振り向くケーちゃんの口の中が風圧でブルブル震えてちょっと面白い。
っていうかケーちゃんいったい何キロ出てんだろ?
こないだヨウヘイくんのCBX(勝手に借りた)で180キロ出したけどそれより速ぇし。
「街についたら飲みにいこーぜ? 奢ってやんからよ?」
「主人よ、誠に申し訳ないのだか我は冥界の番犬、人の子には恐れられているゆえそのような場所には」
「ひゃっはっはっは! テメェんな、ブルドックみてーなクチバシして偉そうなこと述べてんじゃねーよ!」
言いながらケーちゃんの背中をバシバシと叩いてやる。
「痛たた! 主人よ! 走行中ゆえそのようなことをされると危険が!」
「悪りぃ悪りぃ!」
おっとっと調子に乗りすぎたみてーだ。
だってケーちゃん話しやすくておもしれーんだもんよ?
おめーらだってそーいうことあんべ?
楽しい野郎相手だとついつい楽しくなってシツレーなくらいはしゃいじまう時がよ?
「ま、とにかくよ? んな水くせーこと言うやつぁ俺がブッチめてやんしよ? ケーちゃんいい奴だからちっと話ゃあ皆すぐ好きんなるって!」
言いながら、今度は優しくポンポンとケーちゃんの背中を叩く。俺にだってガクシューノーリョクはあんだぜ?
「……そうかも知れぬな」
ケーちゃんの背中越しに聞く声は、少し嬉しそうだった。