実は結構無力な俺は、初めてピンチに陥りました。
「ったくよぉ、ホントお前って強情だよな?」
【わたしが優しいだけですー(ㆀ˘・з・˘) タケシくんが傷ついちゃうのが嫌なだけですー( ゜д゜)】
いやお前、それ普通にあれだ……。
「…………嬉しーよ、ありがとな」
それは言葉にした分の何倍も、言葉にできないほどに嬉しいことだ。
俺が俺のやりたくないことをして悲しくなる。
自分を嫌いになる。
そんな未来を予測して、先回りして止めてくれる。
俺が悲しくなることをヤだって思ってくれるその心が。
俺がどういうことを嫌がるのか理解してくれているその気遣いが。
今は只々、暖かい。
……流石に恥ずかしくてここまでは言えねぇけどな。
【そ、それくらい当たり前ですし? わたしくらい優しくてキュートな女の子ならショボいタケシくんにそれくらいの情けをかけてあげるくらい朝飯前ですし( ゜д゜)】
おう? こいつ照れてやがるな?
ま、今それはいい。
それより。
「……はぁ、じゃあどうすっかなぁ?」
先程びびって漏らしていたジジイを見やる。
するとジジイは落ち着きを取り戻し、座り込んだままこちらに不敵な笑みを向ける。
ジジイを殺さずに済んだのは良かったが、先程の青臭いやり取りを見られたのだ。
もはや俺たちに対する恐怖心は期待できない。
ピコン!
【頑張れ(о´∀`о)】
卍卍卍
「フォッフォッフォッ、……まさかお主、人を殺める度胸すらない小童とはの」
「……くそっ」
先程までションベン垂れてたとは思えない程のイキったニヤけ面でジジイが詰め寄ってくる。
……流石はこんな悪どい施設を運営しているだけであって、修羅場にはある程度慣れてるってことか。ションベン漏らしてたけど。
「ほれほれ? どうしたんじゃ? ワシをヤるのではなかったのか? ほれ、見ての通りワシゃあジジイじゃ、暴力されたらすぐに死んでしまうぞい?」
ジジイは自分で頬をペチペチと叩きながら近寄ってくる。
……くそっ、なんてムカつく顔なんだ。ウィン子に止めてもらって殺さずに済んだことも忘れて全力で殴り飛ばしてしまいそうだ。
……となるとだ。
「で、テメーは一体どうしたいんだ?」
「どうするもこうするも、この“初心者ダンジョン”をどうにかしたいのはお主じゃろうに、でもワシもうお主怖くないから引いてなんかやんないよ?」
言い終わるとジジイは俺に向かって全力のベロベロバー。鼻の穴にウンコ詰めてやろうかな。
「なるほど、……じゃ、いいや」
言うやいなや俺は床にドカッと胡座で座り込む。
「ま、気張って営業続けてくれよ? 俺ぁずっとここにいるけど」
「なるほど、そうくるかい」
ジジイはニヤケ面を崩さないまま言う。
「……ふむ、ちょうど準備できた頃かの?」
そう言うとジジイはパチンと指を鳴らす。
「バリアフリー・アサルト!」
シュイン。
ジジイの掛け声で建物の壁が所々青く光りだす。
「なんだよ、この機械」
うーん、機械は苦手なんだよなぁ。昔パソコン触った時も30分以上エロサイトにたどり着けなくて結局大外刈りかけて壊しちまったし……。
「ふん、見せてやろう、戦闘能力とは腕っ節よりも、度胸よりも、金が物をいうのじゃということを」
シュイン。
『マジックザバリアフリーシステム、オールグリーン』
「ふん、フレイマー!」
ジジイが軽く振るった杖から俺に向かって火の玉が発射される。
「……ちょ!」
その火の玉は今までシビコやらエバハン先生やらが出してたようなのとは違い、眩いほどに強く光、熱い。
「……くっ」
俺一人なら飛んで避けることも出来そうだが、俺の後ろには弱っちい魔物どもが大量にいて、そいつらはさっきからずっと震えている。
「フォッフォッフォッ! マジックアイテムで増幅し尽くした炎に焼かれて死ぬがいい!」
「……くそっ」
……どうする? 俺が盾になった所で多分死ぬし、俺の位置で爆発させちゃ意味がない。
……くそっ、俺が強いったって誰も守っちゃゆれねぇのか?
俺はやっぱりただのめんどくせぇ奴なのか?
腕っ節で調子に乗ってワガママ言ってるだけのしょぼくれた……。
「直角・レシーブ!」
ヒュン。
俺の目の前に突如ピンク色のでかい三角形(意味わかんねーかもしれないけどそうとしか言えない)が現れ、それに当たった魔法弾は角度を直角に変えて真上に飛ぶ。
ドーーン!
そして魔法は空中で爆発。
……一体何があったんだ?
いや、さっきの無駄にダセェ技名は。
「ふん、主人よ、相変わらず無茶ばかりしているようだな」
「ケーちゃん!」




