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思春期から抜け出しきれてない俺は、自分へのムカつきをモノに八つ当たりしました。

「……で、親分よぉ? どうするつもりなんだ? まさかマジにあいつらに仲間差し出そうってんじゃねーべな?」




 鎧の奴らが帰っていったあと、俺と親分は村の集会所みたいなところに戻って来て話し合っていた。




 うるさそうなガル太郎はケーちゃんに頼んでどっかに連れてってもらった。




「……そ、それは」




 親分は俯き、絞り出すように小さく言う。




 ダメだこりゃ。




「つーかよぉ? 何そんなビビってんだよ? あんなしょぼそーな兄ちゃんに偉そうなこと言われたからってよ? あんなん軽く捻ってやりゃあいいべ?」





「お前は奴らの恐ろしさを知らないからそんなことが言えるんだ!」




「はぁ? なら説明してもらおうか!」




「いいか? “初心者ダンジョン”を運営している連中は【冒険娯楽研究会】といってだな……」





 それから親分のする【冒険娯楽研究会】について10分ほど説明される。




 簡単にまとめると、




・【冒険娯楽研究会】は冒険者(魔物を殺して金を稼ぐ稼業)の持つ危険なイメージを払拭し、もっと一般的にライトなものとして印象づけて、その初心者をサポートする事で金を稼ごうとする集団である。




・【冒険娯楽研究会】は会員数2万人を誇る大集団で、そのうち約五千人程は有事の際には命を張って戦える戦闘員である。




・【冒険娯楽研究会】に逆らった村の魔物達(今聞いて分かったけどケーちゃんやらロンタンは普通の犬じゃなくて魔物って種類の生き物らしい!)は、とてつもなく残忍な方法で壊滅させられるらしい。




・現状奴らの魔の手から逃れるには、“初心者ダンジョン”に定期的に生贄を差し出す以外に道はない。




・ダンジョンでは客を飽きさせない為に魔物の種類をローテーションしていて、比較的強い奴しかいないガルムの村は今まで標的になってなかったけど、今月から始まったイベント【炎獣祭】という、倒した獣の皮をポイントと交換して豪華賞品をゲットとかいう人格が悪魔に支配されているとしか思えないイベントの要員として引っ張ろうとしてるらしい。





 と、いうことらしい。




「……なるほどな」




 全てを聞いた俺は一度重く頷くが、震える心を抑えられない。




「けどよ? んなら尚更んなもんなら仲間差し出しちゃいけねぇだろ」




「……わかっている」




「わかってねぇ!!」




「いいかテメェ! いくら奴らが怖くたって、強かったってなぁ! テメェの子供差し出して、『どうぞ殺してください!』ってのと同じなんだぞ!」




 俺が大声で怒鳴りつけると、親分も地面を前足で強くバンと叩いて威嚇してくる。




「だからわかってるってんだ! ……わかって、ん、……だよ、……んなこたよぉ」




「……そうか、ならわかった」




「俺に任しとけ! 鎧野郎どもも、クサレダンジョンも、全部俺がブッチめてやんからよ?」




「いや、そ、それは」




 親分は焦った様子で言う。




「なんでだよ? 俺ぁオメーより強ぇーんだ! 心配しねぇでも、2度とテメーらに楯突く気なんて起こんねぇくらいにはあいつらにツメてやっからよ?」




「簡単に言うなぁ若造がぁ!」




 親分がまた地面をバンと叩く。この頑固モンがぁ。




「それならお前はこの村にいつまでいるんだ! ずっとか? そうではないだろう? なら、お前が村を去った時、奴らが気付かないとでも思うのか? それで復讐に来ないとでも思うのか? その時俺たちは何をされる? 村の連中は何体生き残れる?」




 ……それはそうかもしれない。確かにその可能性はある。




 けど違うだろ? 前を向くってのはそういうことなんじゃねぇのか? 




 襲って来る、とてつもなく怖ぇ『かもしれない』を無理矢理ねじ伏せて、『こうなって欲しい』の方だけを見なきゃなんない時があんじゃねぇのか?




 確かにそう思いさえすれば絶対大丈夫ってワケでもないかも知れないけどよぉ。




 ……ちっ、上手く考えらんねぇ。




 無力な自分への苛立ちから俺は壁を拳でドンと叩く。




「んなこと言ってっから奴らにナメられんだろーが! 全部バレてんだよ! テメーらがヘタレで! 命を盾にすりゃあなんでも言うこと聞くってよぉ!」




 悲しげな目をする親分をひと睨みする。




 もしかしなくても、この親分は俺の想像も出来ないような大きな責任を背負っているのかも知れない。




 根性はある。




 度胸もある。




 それに目を見ればわかる、親分は、優しくていい奴だ。




 だからきっと、仲間を失うことはとても辛くて、それでもどうしようもなくて。




 けれどもバカな俺はそんな親分を安心させるような言葉なんて知らなくて。




 ドガっ!




「ボケが!」




 バカな俺は意地を張って手近にあったゴミ箱を蹴り飛ばし、悪態をつきながら出ていくことしか出来なかった。


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