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なんの特徴もない俺が、なぜか自己紹介で滑らずに済みました。

「止まれ!」




 なんかでっかい鉄の門の前、鎧を着たやたらと偉そうなオッサンにら高圧的に止められる。




「……んだよ?」




 このオッサンはまあこれが仕事なんだろけど、初対面でいきなしでっけぇ態度とられたらたとえ年上が相手でもムカついちゃうことってあるよな?




「お前ら、ここはチョッカンコール高等魔法学院だ! 通行許可は出ているか?」




「は? なんでテメェにんなこと教えなきゃなん……」




「ああ、サタデナイ村の人間から連絡が入っているはずだ。オーク・キングダムを倒した男が入学すると」




「ちょ! ケーちゃん!」




 割って入ってきたケーちゃんに恨めしげな視線を向けると、ケーちゃんは呆れた感じで睨み返してくる。




「主人よ、普通に説明すればする話をどうしてお主はそう……」




「いやだってよぉ! でっけぇ態度取られてそのままなんか言い訳みてーなの始めちゃったらよ? なんか俺が負けてんみてーじゃねぇか? ムカつくべ?」




「……はぁ、お主はあれか? 魔王にでもなりたいのか」




「んだよ魔王ってよぉ、俺ぁんなダセーもんにはなりたくねーんだよ、俺ぁただ、世界で一番かっちょいい男になりてーだけだ!」




 俺が腰に手を当ててビシッと言ってやると、あろうことかケーちゃん、『ふふっ』て鼻で笑いやがる。




「テメー! いくらケーちゃんでもそれはムカつくぞ!」




「ふん、主があまりにもバカなことを言うもん……」




「ちょちょ! お待ちください!」




 と、そこで鎧のオッサンに間に入られる。




 けっ! 覚えてろよケーちゃんめ。




「んだよ?」




「し、失礼しました。あ、あなた様がオーク・キングダムを倒したというタカシ・ムトー様でございますね」




「んだとテメー! 武勇伝聞いた瞬間態度変えてんじゃねー! 俺ぁそーいうバックボーンで人への態度決める奴がいっちゃん嫌……」




「わかったわかった! 我が悪かったからもう黙っててくれないか?」




卍卍卍




「それでは、転校生を紹介する」




 やたらと西洋風で綺麗な教室の中、そう言われて俺は教壇の脇に立つ。




「今日から一緒に勉強することになった、タケシ・ムトーくん、……と、ケルベロスくんだ」 




 なんか知らんけどケーちゃんまで同じクラスに編入することになり、ケーちゃんまで俺の隣(下半身が廊下にはみ出してるけど)いる。




「なお、皆んなには申し訳ないが、教室の改装工事が終わるまでケルベロスくんが席につけないため、しばらは授業を体育館で行うこととする」




 そしてまずは俺がセンセーに自己紹介を促される。




「えーっと、俺ぁタケシ・ムトーだ! 特技はケンカ、趣味は人助けだ。……まぁあれだ、なんの特徴もないつまらない男だけどよ? よろしく頼む」




 俺がそう言うと教室中からヒソヒソとした囁きが聞こえる。




「えーっ、あの人が噂のオーク・キングダムを倒した?」




「すごいすごいすごい、すごい人と同じクラスに……」




 なんだろう? 俺、悪い意味でのヒソヒソはいつもされてたけど、なんかこーいうのは初めてだ。




 なんか、……照れるな。




「ま、まぁ次ケーちゃんいけよ?」




 そう促すとケーちゃんは頬をポリポリとかきながら話し始める。




「わ、我は冥界の番犬ケルベロス。特技は防衛、趣味は人間観察だ。な、なんの特徴もなくて申し訳ないがよろしく頼む」




 言い終わった瞬間、教室中がドッと湧き上がる。




「め、めめ冥界の番犬が特徴もないとか!」




「と、特技は防衛て! そりゃそうだろうよ!」




 皆一様に腹を抱えて笑い出す。




 ……ちっ、羨ましいなぁ。




 そう思いながらケーちゃんの方をジロリと見ると何やら口元をモニュモニュさせている。




 ……嬉しいのかよ。




 はぁ、……いいなぁ。

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