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青春をどこかに置き忘れてきた俺が、学校に入ることになりました。

「なぁ、ケーちゃんよぉ、俺、……マジで大丈夫なんかな?」




 CBXよりも速く走るケーちゃんの背中の上から語りかけ(なんかケーちゃんが周りに空気の膜みてーなやつを張ってくれてるおかげで普通に会話出来る)ると、背中越しに優しい声が返ってくる。


 


「ふむ、主人よ? 何やらお主は自分に自信がないようだが、お主も見ただろう? あの村人達の視線を。あれが実際のお主に対する評価なのだ」





……そんなもんかねぇ。





卍卍卍




 数時間前、豚ヤローから食料をカッコよく取り返した俺は村の連中から思いっきり褒められていた。




「勇者様だー!」




「素敵ーー! 抱いて!」




「ありがたや〜ありがたや〜」




 へっ、なんかこういうのって照れちまうよな? 別に対したことなんざしてねぇのに必要以上に褒められたらむずがいーよ。




「ま、んなもん俺にとっちゃあ朝飯前だからよ? 別に豚ヤローをぶん殴ったわけでもねーし?」




 俺がそう言うと村の連中は更にどよめき立つ。




「こ、殺さずに奪い返した? オーク・キングダムから?」




「も、もしかして俺達の目の前におられるのは神様なんじゃ……?」




 うーん、ホントは豚ヤローが超絶スケベぇだっただけなんだけど言わねぇって約束したから仕方ないけど、なんかむず痒いんだよなぁ。




「ま、いいや、じゃあ俺は行くからよ?」




 俺がそういうと、村の奴らはざわめき始める。ったく、なんだってんだよ。




「そ、そんなこと言わずに、ど、どうかこの村にずっと」




 いやいや、そりゃあ褒められるのはウレシーっちゃそうだけどよ? んなむず痒い奴らに囲まれてたんじゃ肩こっちまう。




「悪りぃな」




 そう言って手をひらひらしながらケーちゃんに跨ると、それを村人に囲まれる。




「ど、何処か行くあてが?」




 行くあてねぇ。そーいや俺、キャンプしてたんだっけ? あの助けてやったヤローを探さねぇと。




「えーっと、人を探してるんだけどよ?」





「そ、それは一体どのような人物で?」




 えーっと確か。




「なんてかよ? キノコみてーな髪型した弱そうな男なんだけどよ?」




「……キノコ、キノコのような立派な頭部、…………はっ、もしや、ウンバー校長、チョッカンコール高等魔法学院のウンバー校長では?」




 ……ん? なんか学院とかいう不穏な単語が聞こえたなぁ。


 


「え? 学院ってお前、学校か?」




 俺マジで学校にはいい思い出ねーんだよな、センセーにゃ嫌われっし、クラスメイトにゃ避けられっし、女子なんか俺見ただけで泣き出すしよ?




「はい! チョッカンコール高等魔法学院は、魔法を主軸とした高い水準の教育を売りにした学校です。しかしご心配には及びません。オーク・キングダムを倒したお方だと前もってご連絡させていただいておくので、タケシ様はそのまま向かわれるだけでOKです!」




 いや、……OKです言われても学校はなぁ。




「何ならそのまま入学出来るように手配しておくことも出来ます。しておきましょうそうしましょう!」




 村人がハイテンションに捲し立ててくるけど、どーもなぁ。




「主人よ」




 声に振り向くと、ケーちゃんが何やら切なげな目で俺を見ている。




「本当は行きたい、いや、入学したいのではないのか?」





「……わかる?」




「ああ、主人は単に嫌なだけで迷いを抱くような男ではないはずだ。そんな場合はただキッパリと断るだけ、……そうだろう?」




 なるほど、ケーちゃんには全部お見通しか。




「……そうだな、行って、みるか」





卍卍卍





 と、いうわけで俺は今、絶賛新しい学校に向かって荒野を爆走中だ。




「主人よ」




「ん、どうした?」




 俺の問い返しに、ケーちゃんは今までで一番優しい声で言う。




「学校、楽しいといいな」




 ……ほんと、そうだな。

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