#2_最弱の始祖吸血鬼
第二話目!評価ありがとうございます!よろしければ感想も((((グェ
……改めまして、本編、どぞ。[頬を手でさすっている]
「……それでさ」
俺は歩きながら、シルナ達に問う。
「……なんで俺、黒シャツ黒ズボンに黒マントなの?」
そう、俺の服は全て黒色だった。マントは裏側が赤色。よく吸血鬼とかが羽織ってる、あのマント。それを、俺が着ている。
「ヴァイス様、寝る前にウキウキしてその服選んでたよ?なんか、違う世界では吸血鬼はこう言う服装がメジャーだとか、なんとかって言ってたかな」
俺の後ろをトコトコと歩いてついてきながら、俺の問いにシルナが答えた。
……オーケー全てを察した。だがそうなってくると、俺……もといこの始祖吸血鬼は、別世界を覗き見ることが出来るって事か。いや、見るだけじゃなく顕現することも出来たりして……?まあ、そんなわけないよねっ!
そんな事を考えつつ、ふと頭をよぎった言葉があった。……強さについてだ。始祖の吸血鬼と言うからには、種族間内ではさぞかし強いんだろうなぁ〜。
俺は自分が強い力で無双しまくるのを想像しつつ、シルナ達に聞いてみることにした。
「ねえ、俺って強いの?」
「……あ、えっと……」
「その……なんとお伝えすれば良いのでしょうか……」
シルナ達の反応はあまり良くなかった。俺が強いかどうかについて、あまり話したくない様子だ。……けど、自分の強さは大体でいいから把握しておきたい。
だから、俺は質問の仕方を変えてみた。
「じゃあ聞くけど、俺って弱い?」
これで首を横に振れば、少しは強いと言うことになるから、行動しやすいだろう。
……けど、シルナ達の反応は、俺の予想外のものだった。
俺の質問に対し、二人とも首を縦に振って頷いたのだ。
「……え?」
思わず、素っ頓狂な声が出る。
さっきまで想像していた俺強無双が、パリンと音を立てて割れていくのが分かる。
……異世界転生したのに弱いのかぁ〜。まあ、流石に種族内で最弱って事はない……よね。
「……俺って、吸血鬼の中で最弱?」
「……うん。ヴァイス様が眠っている間に、みんな強くなっちゃったから」
肩をすくめて苦笑しつつ、シルナがそう言った。
「前は、ヴァイス様が種族の中で最強だったんですけどね。始祖の名に恥じぬ強さで、誰も勝てませんでした」
それも、ヴァイス様が眠る前のことですけど。
そう言って何とも言えない苦笑いのような表情をするルド。
マジかぁ……俺が転生したのって、最弱の始祖吸血鬼……かぁ。
……けど、種族内最弱ってだけで、普通からしたら十分強いとかもあり得る。と言うか、そうであって欲しいなぁ……。
自分の強さは分かったけど、まさか種族内で最弱の存在に転生するなんてね……。
はぁ……俺の無双想像が消えていく……。
俺は、自分が種族内最弱だと分かって、がっくりと肩を落とす。それを、まあまあ気を落とさないでと言った感じでシルナ達が慰める。絵だけ見ればかなり尊いんだけどなぁ、この状況。
そうして、俺が落ち込んでいた時だ。突然、脳内に誰かの言葉が響いた。脳内と言うより、魂に直接……?
『よお、ヴァイス。起きてっかぁ?起きてたら返事してくれ〜。あ、返事の仕方一応言っとくな。眠ってて忘れてるとか前あったからな。返事の仕方は心で強く言葉を思い描く事だ。とにかく、起きてたら返事をしてくれ』
声は……荒々しいけど根は良い男性だ。
……何故だか俺は、この声の人物を知っている気がする。
ご丁寧に返事の仕方を教えてくれたから、その方法を試してみる。
起きてるよ〜……返事できたぁ?
恐る恐る、心で強く言葉を思い描いてみた。すると……
『返事出来てるぞ。……なんか、ヴァイスお前、口調とか雰囲気とか、随分可愛くなったな』
と言う返事が返ってきた。……どうやら成功したみたい。
こっちの世界でも俺、可愛いって言われるんだ……。前の世界でも見た目女子みたいってよく言われてたからなぁ……もしかして、今の俺の姿も結構可愛いのかな……?だとしたら、ちょっと見てみたい気もする。
っと、思考が逸れた……今は俺の姿は関係ないや。あとで鏡見よーっと。
『そう?それで、なんのようなの〜?』
『あー、そうだった。魔王の宴が開催されっから、参加しろよ?会場までは……まあ、お前の事を心酔している吸血鬼達が案内するだろ。そういうことだ、んじゃワルプルギスで会おうな!』
それだけ言って、声の相手は言葉を発さなくなった。
嵐のようだったな……と俺は思った。
「ワルプルギス……魔王の宴?……すごく怖そう」
俺は、思わずそう呟いていた。俺の呟きに、シルナが反応する。
「え、何々ワルプルギス開催されるの?僕ワルプルギス行く!案内もする!」
目をキラキラとさせ、ウキウキと言った感じでそう言った。
「……なら、俺も。シルナ一人じゃ、何しでかすか分かったもんじゃないので」
仕方ないな……と言った感じでそう言うルド。けど、言葉とは裏腹に、ほんの少しだけ、笑っている気がする。
「ルドー、何さその言い方ー」
そう言ってルドの方をポコポコと叩くシルナ。
「事実でしょう……?」
やれやれと、肩をすくめて苦笑するルド。
……この二人、案外お似合いかも。
「と言うか、ワルプルギスって怖く……ないの?」
若干震え声になっていると自覚しつつ、俺はそう言った。すると……
「怖いわけないじゃん。人間達が盛大に勘違いしちゃってるんだよ」
「そうですね。ワルプルギスとは、結構頻繁に開催されているものなのです。中々に強制力もありましてね……基本は強制参加です。ですが、内容は楽しい宴……と言ったところでしょうか。魔王達の間で近況報告をしあったり、最近あった面白い話を語り合ったり……まさしく、魔王達の宴ですよ。ノリとしては、前にヴァイス様が言っていた人間達の飲み会?とやらのソレです。全然怖くないですよ」
そう言って、肩をすくめるルド達。今日やけに肩をすくめるなぁー(((hahaha気のせいだ
……なるほど。ノリが飲み会なら、確かに怖くなさそう。と言うか、そんなに軽いノリなんだ……。それなら、行ってみようかな……?さっき会話のやりとりをした声の主の姿も気になるし。
「じゃあ、行ってみようかな……」
俺がそう言うと……
「やった!案内は任せて、僕場所分かってるから」
「……俺も行きますよ。長くお眠りになった事で、他の魔王達の顔や名前を覚えてないと言うこともあるでしょうし」
俺はバッチリ記憶してるので、とほんの少しだけ得意げに言うルド。
本当に少ししか誇らしげにしてないルド、すごく尊いなぁ……。
――こうして俺らは、魔王の宴、ワルプルギスに参加する事になった……




