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転生への音色

転生への音色

 俺は天宮静優(あまみや せいや)、普通の男子高校生だ。

 今は高校からの帰路を友人の裕翔と一緒に辿っている。

 しばらく歩き、T字路に着いた。


「また明日な、天宮!」

「うん、またね〜」


 俺はそう言って、右の道へ進む裕翔に手を振る。――これが最後に交わした言葉になることも知らずに。

 俺の家はT字路を左に進んだところにあるため、裕翔とはいつもここで別れている。

 俺はT字路を左に曲がり、歩く。

 俺の高校はもうすぐ夏休み。まだ高校入ったばかりなのに裕翔と友人と呼べるまでに仲良くなったので、夏休みは裕翔と遊びまくる予定。既にお互いに夏休みに行きたいところはある程度固めていたので、後は夏休みが来るのを待つのみ。

 早く夏休みにならないかな〜。

 そんな事を考えながら道を歩いていると、広い道路に出た。大通りだ。俺の家はこの大通りを渡った先にある。大通りは車や人が沢山通っていて、活気に溢れている。

 横断歩道の信号が、青になった。たくさんの車が横断歩道の手前にあるL字の白線で止まる。

 俺は()()()()()()()()()()()()()()()()()して、横断歩道を渡り始める。

 横断歩道を渡っていると、車の勢いの良いエンジン音が左側から聞こえてくる。

 ……おかしい。今は確かに横断歩道は青信号のハズ。

 俺は気にせず横断歩道を渡る……けど、エンジン音は俺に近づくばかり。それに、ブレーキの音が一切しない。……まさか。

 そう思って渡るのをやめようとした時には、既に手遅れだった。

 俺は既に車に身体の左側から勢い良くぶつかり、高く吹っ飛んでその下を車が勢いよく通った後、地面に背中から打ち付けられていた。


「っだぁ……あがぁ……」


 俺が痛みで声にならない声を上げた数瞬後……ガシャン!と、車が何かに勢い良くぶつかる音がした。

 周囲が人の声で騒がしくなってくる。遠くから救急車の音も聞こえる。けど……


 ――もう、眠い。


 眠くて、仕方がない。周囲にいる人の声も、遠くから聞こえてくる救急車の音も。全てが、寝るのに邪魔な騒音にしか感じない。

 ……あはは、もう、目が開かないや。……声も、出せない。段々、音が聴こえなくなって静かになってきた。

 ごめんね、裕翔……夏休み、一緒に……遊べ、ない……や……。


 これが、死ぬ……?なんだか、深い眠りにつくみたい――


 ――それが、俺……天宮静優が、この世で最後に思った事だった……。

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