一話 教師陣と俺
登校初日。
電車で定期券でも良かったんだけど、せっかくバイクがあるんだからこれでいこう。そんなに遠くもないし。
俺こと東雲吾妻は高校二年生。本日編入予定だ。気のいい奴らが揃っていることを祈ろう。
「バイトも探さないとなぁ」
色々物入りだ。
ゲームと漫画読書が趣味の俺は、欲しいソフトもあるし、欲しい機材もある。
ちょっと、貯めてたお年玉で中型バイク免許を取らなければ良かったと後悔もしている。あれは完全にノリで取ってたから……。
まぁこうして役に立ってるし。
「……リュックでいいか」
通学鞄は自由らしいし。
もう始業式も終わってるけど、今日はホームルームだけなのだそう。
ならなくてもいいんじゃねとは思うが、俺の決めることじゃない。
「さーて、行きますかぃ」
玄関を出て、扉を閉める。
「あ……こんにちは、東雲君」
「お、よりぴー! おはよう、早いね!」
「いえ、あの、何故六時半に家を出ているのですか?」
「え? 福岡には朝課外の習慣があるのでは?」
「……今は、特進コースだけですよ」
「え、マジ!?」
「ごめんなさい、言っておけばよかったですね」
「いやいや、いいんだけど。早起きは三文の徳だからね」
無意味だったというのか。
俺朝シャンまで決めるくらい早起きだったのに。
「ねえねえ、俺のクラスってどこ?」
「二年二組ですよ。ワタシが副担をしてます」
「へー! じゃあ、よりぴーは失礼かな」
「まぁ、それ以外なら……」
「じゃあよっちゃんだな」
「あ、あだ名は決まってるんですね……」
「選んでよ、じゃあ。よりぴーかよっちゃんか」
「頼子先生と呼んでください」
「あ、ういっす。了解です頼子先生」
ちょっとよりぴーがキレかけていた。
まぁ俺もこんなふうに粘着されたらキレるかもだが。
「担任はどんな感じの人なんですか?」
「……小学生?」
「え……?」
「いや、でも! すごく頭がいいんですよ! カリフォルニアの大学を首席で卒業して、博士号も……」
「でも、ロリなんだ」
「……は、はい。正直、ワタシも外見は幼いんですけど……彼女は、中身も……」
「……」
気になるなぁ。
「んじゃ、俺はバイクで散歩してまーす」
「あ、気を付けてくださいね?」
「はーい! 行くぞ、びゅんびゅん丸!」
「え!? そんな名前なんですか!?」
「冗談ですよ。インディアンジョーク」
「な、なぜインディアン……」
突っ込んだら負けだよ、先生。
一通り散策も終わり、コンビニに寄った。
駅前のコンビニ。お菓子でも買おうかな。
「むむ……!」
俺のゲテモノレーダーが反応している。
おお、何だこれは。塩バニラキャラメル味のポテチだと!?
いいじゃないか。お、こっちにはスイカ味のキャンディーが。
微妙に美味しそうなんだか違うんだか、そう言う感じのラインナップが俺の心をくすぐる。
残り一つ。
手を伸ばしたら、小さな手とぶつかった。
「あ……」
「あ、うん。いいよ、俺はこっちも気になってたから」
新作発売の小豆味のポテチを手に取る。
けれども、何を思ったか、塩バニラの奴を取って、俺に押し付けてきた。
「?」
「生徒さんに物を譲らないほど、わたし教師として心は狭くないの!」
「……」
意味を咀嚼する。
ふむ、この子は教師……。
しかし、果てしなく小さい。そして幼い。余裕で小学生。ダボっとしたパーカーが余計に彼女を小さく見せている。
綺麗に染め上がった、柔らかそうな細い金髪が印象的だ。
「君は先生なの?」
「そう! ってあれ、君知らないなあ。藤間学園の制服だよね? 何年生?」
「二年でーす」
「じゃあ尚更変だよ。わたしが知らないなんて」
「俺、本日転校予定の東雲吾妻だ」
「あー! わたしのクラスに入る子だ! そっか、顔写真までは見たことなかったからなぁ。イケメンだねぇ!」
「ひぃっ!?」
「? どしたの?」
「い、いや、褒められると寒気が……」
「……」
「……」
「いよっ、男の中の男! 日本男児はかくあるべし! クールでいなせなナイスガイ!」
「いやぁぁぁぁっ!? 背中がかゆくなるぅぅぅぅっ!?」
褒められなれてないという弱点を攻められる。
目の前の小さな女性は楽しそうに笑った。
「あはは、ジョーダン。でも、割といいなーって思っちゃった。ふふーん、お姉さんが何か奢ってあげよう」
「マジっすか? じゃ、ドクターペッパーで」
「そんなの置いてるわけないじゃん」
「え!? ドクペないの!?」
「海外流通の、コストゥコにでも行かないとないんじゃないかなあ」
「しょ、しょんなあ……!?」
しょんぼり。
これからはアマズンで取り寄せよう。
「どこから来たの?」
「東京」
「へー! じゃあ、九州ならならではのものを奢ってあげよう!」
「あざーっす!」
「うんうん!」
彼女は背伸びしてアイスコーナーに手を突っ込んで、商品をキャッチ。
……なんだ、あのメタリックな包装。
俺の不安をよそに買い物を済ませる彼女。
一緒にコンビニを出て、それを渡された。
「はい、ブラックモンブラン!」
「……黒い、栗?」
「あのねえ、モンブランは白い山って意味なの」
「英語じゃないでしょ?」
「フランス語」
マジか。話せるのか?
白い山……だから、なんか富士山っぽいのがパッケージに書かれてあるのか。
「じゃ、頂きます」
「めしあがれ!」
包装を破いて、棒付きアイスを取り出す。
ずっしりと重い。黒いクランチチョコに覆われている。
さて、中身は。
齧ると中は白いバニラ味のアイスが。
そして、ざくざくとした食感が面白い。
ミルキーな甘みと、チョコのアクセントが調和して――
「美味い……!」
「うんうん!」
彼女も同じものを取り出して、齧っている。
その間にも、人は結構出入りしていた。
中には、俺と同じ制服の人間も出入りしていて、先生に向かって挨拶している。
「へー、結構人望があるんですね、先生」
「ふふん、まーねー! ……」
「……ん? 何?」
「いや、話しやすいなーって思って。ほら、わたしこんな外見だしさー。こうやって馬鹿にされないで喋ってたの久しぶりー」
「いやね、先ほどよりぴー先生にそれで怒られたからちょい反省」
「あれ? よりぴーって、もしかして堂島頼子? しってるの?」
「同じアパートなんすよ」
「あー、なるほど。まぁ、頼子ちゃんは真面目だからなぁ」
「そういや、先生頭いいらしいっすけど、担当科目は?」
「保健体育」
やべえ、頭関係ねえ!
「というか、別に妙な敬語はいいよ」
「そう? じゃあそうしようかなー。敬語も中々面白そうではあったんだけどね」
「うん、敬語はなんかおちょくられてるみたいだし」
「あ、分かる?」
「このー。まぁいいけどね。近寄りがたいよりは何倍もいいはずだし」
「近寄りがたいというと?」
「隠れて。そして、アレを見るのだ」
こそこそと、何故か小さな先生は俺と一緒に隠れる。
指さした方向には、ビシッとスーツの女性。
品のよさそうな女の人だった。美人で目が大きいのだが、迫力があるというか。美人でスタイルもいいけど、ちょいおっかない。
目を大きく開けているせいか、すげえ眼力だ。
「そこの君、生徒の登下校中の買い食いは禁止されてるはずよ」
「は、はい! すみません! 反省文は勘弁してください!」
「全く……。後で職員室に来なさい。反省文よ、小野坂君」
「うえー……」
当の本人はコンビニの中に入ってしまった。
「誰よあれ」
「郡山美咲ちゃん。二年一組特進クラス担任、音楽教師。みーちゃんって呼んでるけどすっごい怒るの」
「なるほど。そういや、センセの名前は?」
「ありゃ、言ってなかったっけ。北条院有栖だよ! よろしく、あずにゃん!」
「……」
「どしたの?」
「いや、珍しく度肝を抜かれてた。俺の事そう呼ぶのは初めてだな……」
でもフレンドリーなのでまぁ気にしないでおこう。
そして、先ほどの郡山先生が出てくる。コンビニ袋を片手に、青い軽自動車に寄る。
「みーちゃーん!」
「!?」
逃がさないように有栖先生の手を握りしめたまま、郡山先生に駆け寄ってみる。
ギロリ、というようにこちらを睨んで、怪訝そうに目を細めた。
「知らない生徒ね。で? なんで知らない貴方が私のことをみーちゃんと呼ぶのかしら」
「いや、有栖先生が言ってたから」
「ごめんみーちゃん」
「だから、みーちゃんはやめなさい。それから、君もやめなさい」
「じゃあみさちゃんだね。よろしくみさちゃん」
「あだ名をつけるなと言ってるの」
「じゃあ何ならいいの? 冷血爬虫類とか?」
「ぷふっ!」
笑った有栖先生共々睨まれて震えあがる。
「こ、怖いよーあずにゃん! めっちゃ怖いよー!」
「怖いっすねー有栖先生。俺は単にあだ名を言っただけなのにー」
「それは悪口じゃない」
「じゃあ何ならいいの?」
「郡山先生でいいじゃないの」
「ヤダ、楽しくない」
「そだよ、みーちゃん!」
「……頭痛い」
郡山先生の頭痛の種が増えたようだ。
「よし、これで仲良くなったな」
「え!? どの辺が!?」
「それは北条院先生に同意するわ。どの辺が仲良しなのか説明してくれる?」
「先生は悩んでいる。悩んでいるのは、俺の事。俺は先生を悩ませている種。言い換えればそれは、先生は俺を強く意識しているということに他ならない。哲学的にとらえると、俺に興味があると捉えても間違いではない!」
好きの反対は無関心だとよく聞くし。
「……」
「いやーん、もう、年頃の男子高校生のことで悩むだなんて、先生ったらス・ケ・べ!」
「反省文と土下座、どっちがいい?」
「すみませんでした」
「早っ! 残像が見えるほどの土下座だ!?」
「……まぁ、ほどほどにしなさい。私と関わっても、あまりいいことはないわよ」
「やだ! 姿が見えたら嫌になるくらい粘着するぜ!」
「……」
「この有栖先生がな!」
「あずにゃんじゃないの!?」「貴方じゃないの!?」
シンクロする先生ズ。
意外と、仲がいいのかもしれない。
有栖先生がちょっと待っててと先に教室に入る。
転校は初めてだからな。緊張するな。
どんな人間でいればいいんだろう。
うーむ……
「いいよー! 入ってきて!」
「あいよ」
入ると、様々な視線が飛んでくるが、微笑みで受け止める。
「さ、あずにゃん自己紹介して」
「あ、あずにゃん?」
頼子先生が困惑するものの、まぁいい。
俺は真顔になり、教卓を叩いた。
一瞬で教室が静かになる。
「俺は東雲吾妻だ。今日はクラスメイトの君達に、残念なことを言わなければならない」
「……」
全員が、息をのむ。
「頼子先生のパンツはネコさん柄だ」
「ワタシのパンツは水色です!」
「へえ、そうなんですか」
「あ……っ!?」
真っ赤になる頼子先生。
「へー、どれどれ」
「ちょ、有栖先生!?」
俺達に見えない角度から覗いたようだった。
「どんな奴でした?」
「あんまり可愛くない」
「よ、余計な事言わなくていいの! 東雲君、いい加減にしなさい! セクハラですよ!」
「じゃあ、何をすればいいって言うんだ!」
「え、えええ!? 逆ギレ!? そ、それは、普通に自己紹介などを……?」
「はい。東雲吾妻です。好きなモノはフライドポテトとドクペとゲームでーす。嫌いなのは褒め言葉とシリアスな空気! よろしく!」
女子の半数は俺をやべー奴だと認識したのか、目を合わそうとしなかったが、男子の拍手で迎えられていた。
「勇者だ! あの堂島先生のパンツを間接的にだが教えてくれるなんて!」
「英雄だ……!」
「神だ!」
「「「救世主だ!」」」
「いや、その論法はどこまでが最上限なのかよくわからないというか……」
頼子先生はあきれ顔だったが、まぁいい。
割と塩対応されるとへこむので、最初からそう言う認知を産み付けておけば、そう言うキャラで通る。
おかしい。
転校生と言うのはチヤホヤされて何ぼだと思うんだけど。
誰も寄ってこない。
どころか。
「ちょ、ちょっと。誰か話しかけてよ」
「な、なんかちょっと変な人っぽいし……」
なるほど、こういう弊害もあるわけね。
次に活かそう。これはもう仕方がない。
放課後、寂しいので帰ることにする。
「ったー! 間に合ったか!?」
「?」
誰だろう。
ぼさぼさの黒髪ロン毛の、目つきの鋭い逞しい男が入ってきた。
「南、お前もうホームルーム終ったって。今日はもう終わり」
「げっ、マジかよ!? ヤベぇ……北条院先生と堂島先生に怒られる」
「あんなかわいい人に怒られんならいいじゃん」
「反省文十枚だぞ十枚。遅刻は一枚だが、今日は遅刻ってレベルじゃねえだろ?」
「そらお前、自業自得じゃん」
「まーなぁ。……あ?」
そいつは眉をつり上げて、こっちに歩み寄ってくる。
ガンつけられてる。
「何だテメェ、知らねえ顔じゃねえか。どこの誰だよ」
「どうも、あなたの恋人の右手よ!」
「ああっ!? オレは左利きだぞテメェ!」
「そう言う問題じゃないと思うぞ……」
クラスメイトAの突っ込みを無視して、男は顔面を近づける。
「舐めてんのかコラ。あ?」
「顔近いね、ドキドキする」
「うおおお、気色悪っ! 何考えてんだテメェ!?」
「お前が顔近づけるからじゃん」
「こ、この……ッ!」
はぁ、と溜息を吐き、顎をしゃくる。
「何?」
「鈍いなおい。自己紹介しろっつってんだよ」
「言ってないじゃん」
「流れで分かんだろ!」
「俺エスパーじゃないし。ヤンキーってみんなエスパーなの?」
「オレをヤンキー扱いするんじゃねえよ!」
「いや、ねえ?」
残るクラスメイト諸君に同意を求めるが、返ってこなかった。
多分、怖いんだろう。
俺も遅刻の下りがなかったら余裕でビビってたと思うし。
その言葉で分かったのは、意外とルールを順守するんだなということ。
わざわざ先生に会いに行き反省文を書こうという心意気は、律儀以外の何物でもない。
「はぁー。じゃオレから言う。南蒼汰だ。お前は?」
「転校生。夢の国から舞い降りたキューティーエンジェル、田中梅子だ」
「夢の国から舞い降りたわりにはえらく渋い名前だな」
「黒髪ロングの美少女で巨乳、色白だ」
「ほー。そろそろ絞めてやるぞ」
「冗談だって。俺、東雲吾妻。本名だ。で、君……梅子だっけ?」
「そりゃお前が勝手にほざいた名前だろうが!?」
「それも冗談。南蒼汰だったよね。うーん……南を甲子園に――」
チョークスリーパーを決められそうになるが、寸前で避ける。あぶねえ。
「いい加減にしろやコラ! 大人しくやらせろ!」
「いやっ!? やらせろなんて、昼間っから何を叫んでいるというの!?」
「くっ、この……! 何だテメェ! マジで頭沸いてんのか!?」
「おっぺけぺー」
「ぬおおおお、ムカつく! めっちゃムカつく!」
「でも俺、ちょっと感動してる」
「何でだよ」
「俺に話しかけてくれたの、君が最初だ!」
何事も初めては重い。
クラスメイトは相変わらずドン引きしているが、この南蒼汰君はそうでもない。
噛みつく気力があるのはいいことだ。
「お前自己紹介の時何して……いや、いい。何となく察しがついた」
彼も、やっぱりげんなりしていた。
俺も俺みたいなやつが絡んで来たらダッシュで逃げるもん、無理もない。
「じゃあこれから、南蒼汰が俺の初めての人だって言って回るから」
「沈めるぞクルルァ!」
「冗談だって。じゃ、一緒に職員室いこーぜ!」
「は? お前も遅刻か?」
「いや、面白そうなのでついていく」
「しょ、職員室が面白そうなのか……? ま、いいけどよ……」
「よし、じゃあ行こう。蒼汰でいいよね。というか苗字忘れた」
「鳥頭か!? 南だ、南蒼汰! まぁ蒼汰でもいいけど。んじゃ、テメェは吾妻……でいいのか?」
「うん、俺のオススメはあずにゃんだけど」
「吾妻な吾妻。もうお前のペースには付き合わねえからな」
「んだとクルルァ!」
「ってそりゃオレの真似かクルルァ!」
「ほらそっくりー!」
「テメェ、いつか殺す……!」
そんなわけで。
友達が一人増えた。
……友達と言うことにしておいてほしい。
結局、蒼汰はその場にいた頼子先生に説教を喰らっていた。
同じく同席していた有栖先生はしゃーないよと流していたが。
「ここで書きなさい」
「へいへーい」
本当に反省文を書くようだ。
「全く。で、東雲君はどうしたんですか?」
「彼が『職員室一人じゃ怖いよー、冷血爬虫類が陣取ってるから一人で行きたくないよー』というので仕方なく……」
「サラっと嘘吐いてんじゃねえよ!」
「誰が冷血爬虫類よ!」
蒼汰と郡山先生が同時に突っ込む。
リアクションがあるっていいなあ。
「あら、郡山先生、東雲君と面識が?」
「え、ええ。朝――」
「ハエを長い舌で確実に捉えて素敵なモーニングのところに鉢合わせてしまって……」
「爬虫類から離れなさい」
「ぷぷっ」
「北条院先生、沈められたいのかしら」
「な、何でもございません、みーちゃん」
「……全く」
しかし、職員室全体がどよめいていた。
小声で、男性教諭が寄ってくる。
「な、何をしたんだい。あの郡山先生があんなにムキになるなんて……」
「ちょっとありまして」
「……うーん、その調子で頼むよ。美人だけど表情変わらないから……職員室の雰囲気も硬いんだ」
「了解です」
離れていく教諭。
よし、お墨付きももらったし、どんどん粘着しよう。
「ふんふんふーん、何が出るかなチョコキューブー!」
有栖先生は中にフィギュアの入ってるお菓子を開けている。
って机きたねえ。フィギュアばっかだし。
「あ、ダブったー。頼子ちゃんあげるー」
「い、いらないよ……って、カメレオン。今度は何のシリーズなの?」
「冷血爬虫類フィギュア」
「冷血は必要だったのかしら……?」
「ひい!? みーちゃん怒らないで!?」
「……全く」
ん? 郡山先生、今、有栖先生を見る目と口元が柔らかかった。
本気で嫌がってないのか?
「はい、チョコをあげよう、あずにゃん」
「どもっす」
「ホントにそれで呼んでるヤツいたのか……」
驚愕を隠せない蒼汰を眺めながら、俺はチープな味のチョコを齧るのだった。