序章
子供の頃、
夢が夢だと分かっていても起きることが出来ない。
そんな恐怖を味わった経験はないだろうか。
この現象を【明晰夢】だと知ったのは高校の頃であった。
【明晰夢】は人それぞれ感じかたが違うらしいが俺のは主にこんな感じ。
・疲れている時に起こりやすい
・夢を夢だと認識している
・夢と理解しているのに妙にリアル
・夢の中である程度夢の内容をコントロール出来る
(あまり強くコントロールしようとすると目覚めてしまう)
・コントロールにはエネルギーが必要でエネルギーが0になるの夢から覚めてしまう(表現力が乏しいので分かりやすくエネルギーとしている)
・大抵悪夢になりやすく、悪夢になると夢から覚めるのが困難になる
細かくは色々あるがこんなところだろうか。
高校、大学時代はこの【明晰夢】をコントロールしてエッチな夢なんかみて、昨日見たエッチな夢の話題で友達と盛り上がるイケてない学生生活を謳歌していた。
そして現在。
大学を卒業して3年、大卒で就職しホワイトとは決して言えないグレー企業での生活にも大分馴れてきた。
通勤時間2時間の満員電車に乗って、会社で上司に怒られながらサービス残業、
いつものお店で安い定食を食べて帰宅。
不幸とは思わないけど幸せとも思わないそんな生活を続けている。
そんなある日、
いつものように朝の満員電車でウトウトしていたときに、
3年ぶりの【明晰夢】が起こった…
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夢の中では緑色の芝生の中に俺と【謎の女性】が立っていた。
俺と同い年か年下か、黒髪のショートヘアーで服装はどこかの銀行の制服?のような格好をしていた。
いかんせん後ろ姿で正確に顔を見ることは出来なかったが流石【明晰夢】、かなりタイプの女の子を登場させてくれたなと内心ガッツポーズを決めていた。
夢の中ぐらい女の子と喋りたい!という悲しいモテない力を発揮して
「っあ、あの!」 《0/3》
どもりつつも声を掛けることに成功した。
その瞬間
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「あ~北千住~北千住~、お乗り継ぎの方は~」
車掌のアナウンスで現実に戻されてしまった。
あと少しで顔が見られてのにとぐぬぬ...していると
乗り継ぎミスった…
結局部長にこっぴどく怒られ反省文を書く羽目に。
いやいや、まず始業開始30分前に席についていないと怒られる方がおかしいだろ!と内心ムカッ腹立てながらそれに面と向かって文句を言えない社会の歯車の自分を情けなく思う。
内勤の俺は毎日部長の顔色をうかがいながらピリピリとした空気の中仕事をしている。
お昼に同僚とご飯を食べたらまた胃痛との戦いだ…
そんな仕事をしながらふと朝の夢を思い返していた。
久しぶりの【明晰夢】だったがいいものが見れた
こっそりと別タブを開いて「明晰夢 見る方法」で検索をした。
お昼の間や疲れている時、塩を入れたお風呂に入るなど本当に効果があるか分からないことも多々あったがふと目に留まるブログを見つけた。
「AIちゃんの明晰夢日記」というものだ
正直ブログなどをやっている人と絶対に話が合わないだろうと日頃から思っている俺にとっては
このようなブログを見ることもあまりないが、なんとなくクリックをしていた。
内容はタイトルの通り、見た明晰夢の内容についてと感想というものであった。
閲覧数も10件と少ないブログがなぜ検索で上位に来ていたのか謎だが
更新自体は1年間ほぼ毎日更新されていた。
さすが夢、書き込みの内容も飛んでいて「今日は空を飛びました」「モンスターと戦った」などなど
中二病の精神を持つ俺でもアイタタタ...と思う内容ばかり。
そんな中で最新の更新を見てみると、今日の朝8時06分
「草原で誰かに話をかけられた」というものだった。