表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/17

超越者たち



 今日は朝から町が活気に溢れています。

イベントが今日からとのことですけど、

昨日ササナさんから詳しい内容を聞くのを忘れてしまいました。

また会ってくださるそうなので、その時に詳しく聞こうかなと思います。


 最近は食事を求めて屋台を巡るのが楽しみになってきました。

光る文字を出している人を巡っていると何人も食事を出している人がいます。

メニューもそれぞれ違っていて、選ぶ楽しさもありますね。

ただ名前の横のボーナスが今一つ理解できないですけど。

まぁ気にしなくても良いのかなとも思いますね。

料理が美味しいので、それだけで満足です。


 あと武器や防具を出品している人達…どうも値段の付け間違いじゃなさそうです。

何人も同じくらいの値段をつけているのを見れば私にも分かります。

ただ…あんな値段で本当に売れているのか疑問です。


 たとえば蒼星の宝剣。値段が1200000エリンします。

ラセムの実何個ぶんか、考える気にもなりません。

いったいどんな剣なのか興味がありますけど、一生買える気がしないですね。

村を訪れる商人の方が持ってくる魔力の込められた剣でも30000エリンほどです。

ちなみに私の持つショートソードは魔力が込められてはいませんけど

質が良く、売れば5000エリンにはなると言われました。

もし旅先でどうしても困るようなことがあったら売りなさいと言われましたけど、

この町では売れる気がしないです。


 さて今日は討伐依頼と一緒に薬草採取の依頼も受けようと思います。

ソーングラスの討伐が楽勝なので、もうひとつ依頼を受けて収入も二倍作戦ですね。

収入を増やそうと思った理由は、魔法習得の為です。

きっかけはギルドの中で話している人の内容から。

エルフは耳が良いので、つい聞こえてきちゃうんですよね。

それによるとお金を払う事で魔法を教えてくれる場所があるそうなんです。

私もエルフですし、基本的な精霊術はいくつか使えます。

これは自然の中で暮らすうちに自然と身に付くものです。

なので選んで魔法を習得できるということに驚きました。

ひょっとしたら転移の魔法も覚えることが出来るかもしれません。

その魔法を教えてくれる場所にはまだ行ったことが無いですけど、

安いはずがないですよね。

そういった理由でお金をたくさん稼ぐ必要があります。


 薬草の採取場所は林の中のようです。湖に行く時に通った場所ですね。

魔物がいないので楽に行けると思います。

ついでに水浴びをしてもいいかもしれません。

ソーングラス討伐→薬草採取→水浴び→薬草採取→ソーングラス討伐→帰宅。

自分で言うのも何ですけど、無駄のない素晴らしい計画ですね。

ではさっそく依頼をこなしにいくとしまょうか!



 


 クランハウスではササナ、アリオン、タビコ、ハウル、リリーフ、アンズの六名が

テーブルを囲んで話し合っていた。


 「今日の昼からクラン対抗戦が開始される。

 ルールはラセムを多く集めたクランが勝利。シンプルだな」


 ハウルの言葉にリリーフが手を上げる。

リリーフはメガネをつけた長身の青年で、

ササナと並んでこのクランの頭脳担当でもある。


 「リーダー、そのラセムというのは?」


 いまだラセムが何なのかプレイヤーには知らされていなかった。

ただ誰も知らないことから、イベント用に新しく作られたアイテムだろうとは推察している。


 「開始するまで不明だ。まぁもうすぐだな」


 クランハウスに設置されている時計を見て、ハウルは答える。

 

 「とりあえずどのレベルの敵が落とすかよね。

 低レベルの魔物だったら私とリーダーの出番かな」


 ササナはそう言ってハウルを見る。

ササナは魔術系、ハウルは戦士系という違いはあるものの

どちらも広範囲攻撃を得意としている為、数を討伐する依頼を得意としていた。


 「そうですね。高レベル帯なら僕やアンズさんのサポートも活きるんですけど」


 リリーフはそう言ってメガネをクイッと指で持ちあげる。

リリーフは回復と支援系を得意とする司祭系の職についている。

アンズもリリーフの言葉に無言で頷く。

アンズは仙女と呼ばれる系統の職であり、

こちらは攻撃魔法と支援魔法をバランスよくこなすことが出来る。


 「まぁ人手がいるような内容じゃなかったらいいけどな」


 アリオンはそう言ってソファに大きくもたれかかる。

アリオンは戦士系の盾職であり、あまり敵を倒すことは得意ではなかった。

タビコは黙って話を聞いている。彼女はレンジャー系の職であり、特に得手不得手はない。

心の中では探索や採取なら私の出番かなと思っていた。


 アリオンが言うように、ササナ達のクランは人手が必要なルールが得意ではない。

クランは最大で15人まで集まることが出来るが、

ササナ達のクランはその半分にも満たない人数しかいない。

過去には15人在籍していたものの、

引退や他のクランに移るなどで人数が減少していた。

特に募集などをしていない為、

減る一方だったが改めて募集するほど活発に募集もしていなかった。


 「おっ、そろそろだ」


 ハウルが時計を見る。時計の針がちょうど正午になるところだった。

正午になると同時にゲームをプレイしている全員に

クラン対抗戦の詳しいルールが通達される。


 「これは…果物…ですね」

 

 リリーフがメガネをクイッとさせながら運営からのお知らせを見る。

そこに載っていたのはリンゴのような形の黄色い果物。


 「入手方法…不明!? どの敵が落とすのか調べることからはじめるのかよ!?」


 アリオンはそう言って髪をガシガシとかきむしる。困惑した時の癖だった。


 「でも敵が落とすとも書いてませんよ。

 どこかで採取する可能性もあるんじゃないですか?」


 タビコの言葉にリリーフとハウルは頷く。


 「タビコの言うとおりだな。

 とにかく掲示板で情報が出るのを待っていたら出遅れる。

 各自分散して怪しい場所や敵を探すとしよう。果物だから森林地帯が怪しいか?」


 「そうですね。場所はやはり樹があるところが…どうしましたササナさん?」


 リリーフがお知らせのページを見つめたまま動かないササナをいぶかしむ。

本来ならハウル以上に率先して方針をまとめるところだが…。


 「……えっと…」


 ササナの様子がおかしいことに、クランの他のメンバーもようやく気が付く。


 「昨日これたべました…」


 そのあとに続く言葉で、クランメンバーは混乱した。




 ひと騒ぎあり、ようやく落ち着いたクランハウス。


 「ササナさん、その食べたというラセムの実はどこで手に入れたんですか?」


 リリーフがササナに尋ねる。食べたというのはこのさい置いておいて、

とにかく入手方法を知るのが第一と考えた。

他のメンバーも身を乗り出してササナの言葉を待つ。


 「えっと…新規の子から貰ったの」


 その言葉でタビコはピーンとひらめく。

 

 「ササナ、それってこの間言ってた天使な子ですか?」


 「そう。その子がお礼ですっていってくれたのよね」


 二人の言葉を聞いてもよくわからないリリーフ。

ただ誰かがくれたというのは理解できる。


 「その新規の子がなぜ持っていたのか不明ですけど、

 やみくもに探すよりはその子に聞くのが早そうですね。

 ササナさんはその子と連絡がとれますか?」


 「いえ、こちらからは取れないわ。出来るだけ見守ってあげようと思ってたから」


 こちらから連絡を取れる手段を作ってしまうと、

余計なお節介をしてしまいそうだったので

時々ギルドで落ち合うというくらいしか決めていない。

ササナにしてみれば、貰った果物が謎のイベントアイテムだとは思いもしなかったので

裏目にでてしまっていたが。


 「ふむ…その新規の子を知っているのはササナだけだな。

 とりあえずギルドに行ってみようか?

 そこが出会える可能性は一番高そうだ」


 ハウルの言葉にササナ以外が頷く。ただササナは複雑な心境だった。


 (あまりこういったことに巻き込みたくなかったから、あえて距離をとったのになぁ…。

 でもイベントアイテムなんてどこで入手したのか、たしかに興味はあるわね…)


 「…あまり大人数で行っても怖がらせちゃうと思うし、

 私とタビコの二人だけで行くことにするわ」


 「ふむ…ササナがそう言うならそうするとしよう。

 たしかにこんな人数で囲んだら、怖がらせてしまうかもしれないからな」


 「わかりました。では僕達は僕達で情報を集めるとしましょう」


 ハウル、リリーフの言葉でアンズ、タビコ、アリオンの三人も頷く。

アリオンだけは凄く残念そうな顔をしながら。



 「それじゃあ――!!?」


 六人が立ちあがったところで、ササナの元に緊急のサインが届く。

メッセージは何も添付されていない。

だがその差出人の名前を見て、ササナの顔が強張る。

そこにある名前にはメルシャと書かれていた。



 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ