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旅立ちのエルフ


 故郷のエルフの村を旅立って数日。

私はようやく人間の住む町へと辿りつきました。

私の名前はメルシャ。世界を旅する(予定)のエルフです。


挿絵(By みてみん)


 目の前には白く巨大な壁。この大きな壁が町全体を囲っているようです。

エルフの村ではせいぜい木の柵をいくつか立てているくらいでしたから驚きです。

村のみんなは人間の事を見下しているところがありましたけど、

この町を見れば考えも変わると思います。

少なくともこんな町を作る人手も規模もエルフにはないのですから…。


 ただ心配ごともあります。人間はエルフを隙あらば奴隷にしたがると聞きました。

私達エルフの容姿が人間にとっては美しいかららしいですけど…正直嬉しいと思う反面、

奴隷は遠慮したいです。

世界を自由に見て回る、その為に家族の反対を押し切ってエルフの村から旅立ったんですから。

最初の町でいきなり自由を失ったら目も当てられません。

あと奴隷にされたらあんなことやこんなことまでされると聞きます。

そんな経験が無いのでどんなことをされるのか分からないですけど、

とにかく言葉に出すのも憚れるようなことなんだろうと思います。

村の人に聞いても誰も詳しく教えてくれなかったし。


 とはいえ心配のし過ぎな気もしますね。

人間社会で暮らしているエルフも少なくはないみたいですし、

いきなり奴隷にされることは流石に…。

ともかく町に入る前から考え込んでいてもはじまりません。

私は意を決して門へと向かいました。


 「ふぇぇぇ…」


 っとつい間抜けな声をだしてしまいました。

門の両脇には鎧で身を包んだ兵士が直立不動で立っています。

見るからに強そうです。怖いです。魔物なんかが町に侵入しようとしても、

サックリと倒されてしまいそうです。

私もサックリと追い出されないか心配です。

町に出入りしている人も多いです。そしてみんな足早です。

というか歩いている人がいない? 人間とはそんなにせっかちな種族でしたっけ。

格好も様々です。このあたりはエルフの村とは大きく違います。

多種多様。それもまた人間という種族の特徴だと聞いています。

そのような多様性が人間の繁栄に繋がっているんでしょうね。


 でも…多様性があるとは聞きますけど、これほどとは思いませんでした。

村にもいた戦士や狩人のような格好はわかります。

魔術師なんでしょうか…ローブ姿の格好もまぁわかります。

下着同然の格好なのはどうなんでしょう…あと狼の頭を模した兜や鳥の頭を模した兜…

誰も気にしているように見えないから問題はないんでしょうけど…。


 とりあえず門番の方に挨拶をしておいたほうがよさそうです。

顔見知りになっておけばいきなり追い出されることもないと思います。

奴隷にされそうになっても助けてくれるかもしれません。


 「あ、あのこんにちは」


 本当に挨拶しかできませんでした。近くで見ると大きい…

見上げなければ顔を見ることが出来ないほどです。


 「始まりの町アーレスへようこそ!」


 門番さんはにっこりと笑って挨拶を返してくれました。

私の中で門番さん=怖いという図式が一瞬で崩壊しました。

きっとこの門番さんは良い人間に違いありません。


 「あの、町に入ってもいいでしょうか?」


 町によっては通行料を取られる場所もあると聞きます。

多少は人間社会でも使える通貨を持っていますけど、足りるか心配です。


 「この町の門は全ての者に開かれている。遠慮することはありません」


 通行料はいらないみたいです。

それにしても全ての者に開かれている…すごく素敵な言葉です。

他の種族と極力関わり合いにならないように生活する私達の村とは凄く違います。

私達の村では時たま訪れる商人の人以外、

これまた時たま迷い込む旅人くらいしかやってきません。

村の看板を出しているわけでもないので、

ほとんどの人が気が付いていないと思いますけど…。


 ともかく私は堂々と町に入っても良いことが分かりました。

しばらくはこの町で生活することになると思います。

まずはこの町で仕事を探す必要がありますね。正直人間社会で働けるかどうか不安です。

でも町にはギルドという仕事を斡旋してくれる場所があるそうです。

村では獣を狩ったり、薬草や果物を採取したりしていました。

ギルドでもそういった仕事があるんだそうです。

このあたりはちゃんと商人の人に聞いて予習してあります。

流石に何も予備知識なく旅に出るほど愚か者ではありませんから。

そういえば商人さんが私を見て、自分の店で働かないかと誘ってくれました。

その店ではお客さんと話をしてるだけでたくさんのお金を貰えるそうです。

機会があれば少しだけ働いても良いかもしれません。

でもその商人さん一度だけ村に来て、それ以降見かけた事が無かったですね。残念です。


 「あの…ギルドに行きたいんですけど、どこにあるかわかりますか?」


 私は門番さんに尋ねます。町は広いですからね。間違いなく迷うと思います。


 「どのギルドの場所でしょうか?」


 どのギルド? 困りました。ギルドというと一つしかないと思っていました。

でもこれだけ広い町なんですからギルドがいくつかあってもおかしくないのかもしれません。


 「獣を狩ったり、薬草を採取したり…そんな仕事を探してるんですけど」


 私の言葉に少し動きを止める門番さん。考え中…なのかな?

顔の表情とかそのままだから、ちょっと怖いです。


 「魔物を狩ったりする仕事でしたら、

 冒険者ギルドで斡旋されています。今地図をお出しします」


 次の瞬間驚くことがおこりました。

私の目の前の何もない空間に突然何かが浮かび上がりました。

光で書かれた記号…のようなもの。これが地図なんでしょうか? 

地図というと紙に書いた物しかみたことがないので、驚きです。

 

 「今現在の場所が赤い点。目的地の場所は青い点で表示しています。ご確認ください」


 門のような場所の部分に赤い点があります。ここが今の場所ということですね。

青い点というと…大きな道をそのまま進んでいけばすぐの場所でした。

すごく分かりやすい地図です。

それにしても門番さんがこんな高度な魔法を使うなんて…

私達エルフは人間の事を知らな過ぎるのかもしれません。

魔法に関しては私達エルフのほうが優れていると信じ切っていますから…。


 「ありがとうございます!」


 私は笑顔でお礼を言うと、門番さんにお辞儀をします。

きっとこの門番さんにはこれからもお世話になりそうです。

ではさっそくギルドに向かうとしましょう。私にもできる仕事があればいいんですけど…。


 「こんにちは」


 私が門に入ろうとすると、突然後ろから声が掛けられました。


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