Side Story 吸血鬼さんのドレス
ドレス回の番外編です!
「んー、ふわぁ…朝ね…」
まだ日が昇りきらない頃、私は起きる。
これは日課だ。
眠い目を擦りつつクローゼットへ向かう。
そこには高級感ある服が数着あるのだが、そのなかでも特に妖艶なドレスと対照的に質素なワンピースが目に付く。
ワンピースの方はガルムの街で買ったもの。
ドレスの方はレーヴァの叙勲式の時のものだ。
また、どちらとも私の宝物でもある。
何せレーヴァとの思い出が詰まっているのだから。
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それはエンヴィーが慌てながら且つ泣きながら服飾職人達に連絡した数時間後。
私たち4人はエンヴィーに呼び出され叙勲式の準備に忙しい王城内にいた。
「何でしょうね?」
「まさかもうドレスができたとか?」
「あのー、それはないと思いますよ…」
「そうね、幾ら何でも早すぎるわ」
「そっかーならなんだろうね?」
「うーん…」
そんなことを話していると呼び出した本人が勢いよく通された応接間の扉を開けてやってきた。
「すまぬ、待たせたな!レティとフィーネのドレスが出来上がったぞ!」
「「「「はぁ!???」」」」
皆が素っ頓狂な声を上げる。
それもそのはず、ドレスは簡単なもので3日、豪華なものになると2週間は超えるのだから。
「とりあえず着いてきてくれ!」
「「「「は、はぁ…」」」」
エンヴィーのテンションに気圧されつつも私たちは彼女についていった。
エンヴィーのあとを付いていき、辿りついたのはドレスが竿の様なものに大量に掛かった部屋だった。
その衣装部屋だと思われる所の奥の方にエンヴィーはドレスの掛かったハンガーラックに手をかけながら立っていた。
「よし!ここが私の部下たちが作ったドレスがある。その中の好きなものを取ってくれ!」
エンヴィーは私たちが来るなり、そう言い放ち少し離れたところで見ている。
私たちはバラバラになって探すことにした。
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(うーん、どれにしましょうか?迷うわ…)
私はハンガーラックの前でどれにしようか迷っていた。
するとそこにレーヴァがやって来た。
「どうしましたの?」
私がそう問うとレーヴァははにかみながら、
「ううん、レティが悩んでるみたいだったから気になっただけだよ」
と言って頭をかいている。
(やはりレーヴァは可愛いですわね)
そう心の中で呟きながらもまだ迷っていた。
「うーん、なかなか決められませんわね…わかりましたわ、レーヴァ、あなたが選んでくださる?」
「…別にいいですけど、服のセンスはありませんよ?」
「それでもいいですの!」
そう私が言うと、レーヴァはドレスを端から端まで眺める。
しばらくすると目当てのものがあったのか走って取りに行く。
そして、戻ってきたその手にあったのは黒のアフタヌーンドレスだった。
「これがいいとおもうよ、レティの髪の色も合ってるし」
「…そうですの?」
「うん、そのドレスが一番似合うよ」
なら大丈夫だろうと思い肩に合わせてみる。
すると、それを見ていたレーヴァがこちらを見て赤面した。レーヴァ曰く、
「可愛すぎだよぉ…」
ということらしい。
まあ、謎の発言は置いといて、レーヴァが選んでくれたものなのでこれ以外にするつもりは無かった。
私はエンヴィーの元へ行き、
「これでお願いします」
と言ってドレスを貰う。
その足でレーヴァの元へ行く。
「あ!それにしたんですね」
「ええ、何せレーヴァが選んでくださったものですもの。それ以外にするつもりはありませんわ」
「…っ!レティ…何言ってるのですか…」
「あら?ほんとよ?ともかくありがとうございますわレーヴァ」
「…もう…いいですよ!」
「ふふふっ…」
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そう言ったレーヴァの顔は真っ赤で、ムキになっているのが可愛かったのを今でも覚えている。
「あの時のレーヴァは可愛すぎでしたわね」
思い出してこちらも顔が熱くなり胸が締め付けられる。
この感情は友情だけではないだろう。
しかし、正体が何なのかは分からない。
でもそれでいいのだ。
だって───私たちは強い絆で繋がっているのは確かだから。
(そういえばここ暫くレーヴァに元気がないですわね。気になりますわ)
そして、私はドレスを着てレーヴァの部屋に向かった。
大切な友人の元へ、熱い想いと共に…
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