40話 フィーネの悩み
前回のあらすじ
レティの笑顔は凶器(いい意味で)
さて、次はフィーネの部屋に行こう。
「フィーネ?いますか?入りますよ?」
私はノックをし、フィーネの部屋に入る。
「あ、主様!ここの部屋を使わせていただきありがとうございます!」
「いえ、フィーネも私たちの仲間ですから当然ですよ!それに部屋はまだいっぱいありますしね」
「主様…一生ついていきます!」
少し目の端に涙を溜めてフィーネは言う。
しかし、それも長くは持たずすぐに決壊してしまい、ポロポロと涙を流している。
「大丈夫!?」
「あ!いえ、これは嬉し泣きです…グズッ…から大丈夫ですよ」
「…本当に大丈夫?」
「…はい、大丈夫ですよ!」
「それなら良かった!」
「主様…少し聞いてもらってもいいですか?」
「うん?いいですよ」
どうしたのだろうか。
「私はですね、言っていたかと思いますが火竜族の族長の娘と言いましたよね?」
「うん」
「まあ、そのお陰で火竜の里では良くして貰って育ったのですけども、族長─お父さんには私しか子どもがいなかったんですよ。しかも、私は里の闘技大会でも負けたことがなかったので族長になるのは確実だとか言われていたんですよ。」
「うんうん」
「お父さんもお母さんも期待していて私もそれに応えようと必死になっていました。
ですが、その期待に応えようとするせいで私、甘えるってことを忘れてしまったんですよ。
皆の期待の眼差しと言いますか、そういうものが里の中、更には家の中まで広がっていたんです。」
「…(頷く)」
「正直、逃げ出して自由気ままに過ごしたかったのです。お母さんとお父さんに囲まれて山に遊びに行ったりとかもしたかったのです。けど、私は族長以外の誰よりも強かった…強くなってしまったのです。3歳からお父さんの特訓を受けていればこれが当たり前のように強くなってしまった。…だって、10歳の時にはもうこの状況になってしまってたんですよ!?」
「………」
フィーネは天才だ。数回戦闘を見ただけでわかるほどに。しかし、それ故に誰よりも孤独だったのだろう。
「…本当に自分の力が嫌いでした。
でも、主様が私を召喚してくれて、私と同じ、それどころかさらに強い人たちがいっぱいの所に連れてきてくれました。主様は目に見えぬ速度で敵を切り裂き、見たこともない魔道を使って私を先導してくれました。里では、付近に魔物が出た時には私が先導しなければいけなかったのです。ですから、私には主様が神にも等しい存在に見えました。…まあ、神なんでしょうけどね、実際。」
「………」
「だから、ありがとうございます。私を召喚して下さって。もし、そのまま里にいたなら私はプレッシャーに押し潰され、私が私でなくなってしまったかもしれません。なので、私はこのお屋敷、厳密に言えば主様のいるところが私のもう一つの家になりました。」
「そうなんだ…」
「はい。主様に一つ尋ねたいことがあります、これからも私を連れていってくれますか?」
「勿論ですよ。こんないい子を連れていかないわけは無いですからね、ねぇ?ミラ、レティ」
私は答えると共に、扉の後ろで聞き耳を立てていた2人に聞く。
ガチャリ…
「…なんだ、気づかれてたのか…」
「まあ、レーヴァですからしょうがないですわよ…」
「!!?いたのですか?!」
「ごめんね、でもあまりに遅いから心配になっちゃってね。」
ミラははにかむように言う。
「そうね、これで分かったと思うけど、フィーネはもうしっかりと私たちの仲間よ。安心しなさい。」
レティが笑顔でいう。
「もし逃げようったって逃がさないよ!」
ミラがおちゃらけつつ言い放つ。
「…皆さん…ありがとうございます…私は幸せです!」
フィーネが泣きつつも晴れやかそうにいう。
「では、皆。食堂に行って御飯にしましょう。フィーネもお腹がすいてるでしょう?」
「はい…もうペコペコです〜!」
「じゃあ、行きましょうか!」
それから4人で仲良く食堂へ向かった。
すいません、活動報告の通りこの更新の後暫くお休みします~




