2話 料亭“レッド・レイク”にて
料亭“レッド・レイク”は普通の酒場などより活気のある店だということを第一に思った。
私は料亭の女将に話しかけた。
「ここのおすすめって何ですか?」
「初めての人かい?いらっしゃい。ここは料亭“レッド・レイク”。料亭と言っているがあまり酒場と変わらんようなもんだけどね。楽しんでいきんさい。えっと、おすすめだったかい、じゃあそこの席に座って待ってな。」
「ありがとうございます。」
結局、おすすめが何かは分からなかったが、任せることにした。
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「へい、お待ち。本日のおすすめ、『ベヌー豚のソテー』だよ。」
と、10分程待つと女将が持ってきてくれた。ベヌー豚とはサタン領で飼われている豚で、肉質が柔らかいもので、宮廷で調理されるほどの逸品である。
「うわぁ、凄いですね。ベヌー豚なんて滅多にお目にかかれないですよ。」
「うちは知り合いがベヌー豚を飼っているから安く卸して貰えるのさ。」
と女将は豪快に笑う。私は
「それでは有難く頂きます。」
とナイフとフォークを刺し、一口サイズにして口に入れた。
美味い。とりあえず美味い。語彙力が無くなるほどであった。入れた途端に旨みが広がり、えも言われぬ幸福感に包まれていると、もう身は溶けたように無くなってしまっているのだ。
私は飢えた狼のようにがっついてしまい、すぐに食べきってしまった。
「とても美味しかったです。今まで食べたものの中で一番美味しく感じました。」
「そうかい、それはうちのせがれも喜ぶよ。」
「息子さんが作っているんですか?」
「まあ、大抵は夫が作ってるんだけどね。この時間はいつも修行の為って作ってるのさ。」
「あ!そうだ、料金ってどれ位ですか?」
「300rcだよ。」
rcとはリヴァイアサン領の通貨であり、子どもの手伝い賃で10rcがもらえ、5rcで焼きたてのパンが買える程度だ。
私は300rcを渡しつつ、
「とても安いですね。」と言った。
「良心的だろう?どうだい?泊まっていかないかい?」
「では、とりあえず1週間分お願いします。」
「1人部屋1週間で700rcだよ。」
普通の宿屋であれば1泊あたり125rc、一週間あたりで言えば875rcなのであるから、こちらもかなり良心的な価格である。
「あ、忘れていたけど、桶1杯5rc、タオルは一枚20rcだよ!」
尚、こちらも付けると普通の宿屋なら1000rc以上になってしまう。
「じゃあどちらも一週間分でお願いします。」
「175rcね。全部合わせて875rcだよ!」
私は900rcを出し、お釣りの25rcと【ⅲ】号室の鍵を受け取り、2階にある宿泊棟へ向かった。
部屋に入り数分すると女将が桶とタオルを持ってきた。女将が帰った後、すぐさま身体を拭いた。
歩いてきたので草の汁や土埃、汗などでかなり汚くなっているのだ。拭き終わり、ベッドに潜りつつ開けておいた小窓から星を眺めていた。流星が尾を引きながら飛んでいくのを見た後、私の意識は星空へ吸い込まれるように眠りに落ちていった。
─彼女はベヌー豚と戯れる夢を見たと女将に話したという。
所持金
800000rc|(王から貰った200000rc+両親から600000rc)→798725rc
至らぬ点や誤字などがあったら是非ゆるーく教えてください。
宜しくお願いします。