29話 勇者の勧誘
「え?」
素っ頓狂な声が出てしまった。
アンネは勇者でありながら王族にも名を連ねる高貴な身分の人だ。
一応私たちもそれなりの立場ではあるが、それでも勇者直々に勧誘など聞いたこともない。
「ごめんね?この娘こういう癖あるから~」
とアンネの隣にいつの間にかアンネの頭を叩きつけた女性が立っていた。
「あれ?貴女はアンネさんのお仲間さんですか?」
「あら!私としたことが自己紹介がまだだったわね。私はキューネよ、気軽にキューとでも呼んでね」
「あ、はい宜しくお願いします、私はレーヴァって言います…ではなくて!なんで私は突然勧誘されたんですか!?」
するとさっきまで黙っていたアンネさんニヤニヤしながら、「あなたたち仲がいいわね~私仲間はずれかしら?」と言った。
「いいえ!アンネさんに聞いているんですからキューさんに答えさせないでくださいよ…」
「あら、いつものことよ?ねえ?キューネ」
「確かにそうね。」
一向に話が進む気配がない。
「とりあえずアンネさん、貴女はレーヴァをあなたのパーティーに加えたいということですわね?」
「確かあなたはレティさんかな?私はあなたたち全員をパーティーに加えたいのよ?」
「…そうですか。ちょっとこちらで話し合いをしてよろしいかしら?」
「ええ、それなら私は野営の準備をしてるわ~決まったら呼んで?」
「わかりました。」
私たちはそれぞれのパーティーの方へ戻った。
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「レティ、うまく話をまとめてくれてありがとうございます」
「いいのよ、レーヴァ。あれは大変だったでしょうから」
レティもそう思っていたらしい。
「…で、レーヴァ、レティ。結局あちらは私たちをパーティーに加えたいの?」
「そういうことですね、勿論全員ですよ」
「全員なら大丈夫か、な?」
「私的には3人で旅を続けたいですわね」
「でも、あっちのパーティーに入るといいことも多いしな~」
そうなのだ。
聞いたところによると、勇者のパーティーに入ると1日3食、宮廷料理レベルのものが出され、給金もあり、装備も支給され、重要な地点でも顔パスになるらしいのだ。
恩恵が多すぎてパーティーを決めるだけで大会が開かれるほどなのだ。
「3人旅だと色々きつい所もありますしね…」
主に野営の準備などである。
「そうね…まあでも、やっぱり私はこのままがいいな」
「私もですね、皆さんと一緒がいいです!」
私たちはお互いの顔を見て微笑みあい、意思を確認した。
「それではそのような感じでいいですか?」
「うん!」「ええ!」
「ではそのように言ってきます!」
私はアンネさんのテントに歩いていった。
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─アンネのテント内─
「失礼します」
「あら、来たわね~」
読書をしていたらしいアンネさんが顔をこちらへ向ける。
「はい、ではいきなりですがパーティーの件はお断りさせていただきます」
「…まあしょうがないわね、3人とも仲が良さそうだから正直断られるとは思ってたんだよね。あ、でも、何かあったら頼っていいからね?」
「ありがとうございます!その時は是非お願いします!」
「分かったわ~」
そして、私はアンネさんと握手を交わしミラたちの方へ戻っていったのだった。
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