24話 “マリアンナ”
GW第1弾です。
街の呉服屋でレティを着せ替え人形にした後、私たちは食事処へ来ていた。
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「ここがあの店ですよね、レーヴァ。」
レティが若干怯えながら聞く。
仕方あるまい。
なぜならここを勧めてきたのがピチッと体についたメイド服を着た3m級の巨人族だったのだ。
そんな筋肉ダルマが「あら~、いらっしゃい♡」と言ってきた時は本気で吐きそうになったものだ。
尚、この筋肉ダルマの職は案内人である。
(ぜったい連れ去られたやつとかいるでしょ…!)
と女であったことに感謝しつつ思ったのはもう忘れることはないだろう。
「ま、まあ案内人としては結構評判良いらしいよ?あの人。」と一応フォローは入れてみるが、レティは完全に怯え、ミラは顔面蒼白に陥っている。
私は覚悟を決め溜息をつきつつもその食事処“マリアンナ”の戸を開けた。
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そこは3人ほどが座れるテーブル席が2つとカウンター席が4つあるだけの食事処だった。
隠れ家的な形なのだろうか。
「あら、こんにちは。お嬢さんたちは3人だけかな?」とウェイターらしき若々しい男性が声をかけてくる。
2人は想像と現実の乖離に呆けていたので私は、
「はい。席はカウンターでお願いします。」
と言い、案内してもらった。
「ふふ、いらっしゃい“マリアンナ”へ。あなた達はお友達かしら?仲がいいわね!」
と席に座ると奥でエプロンを着た美女が微笑みながらそう言った。
「ありがとうございます。ここって2人で経営しているんですか?」
「そうね、まあ彼は私の旦那様だからね。」
と頬を赤らめながらそう言う。
後ろに立つ彼も頬を赤らめている。
「あ、ごめんなさいね、注文はあるかしら?」と彼女はメニューボードらしきものを指さし聞いてきた。
「じゃあ私は海老のフリット季節のソース添えで。」
「私はクルミと柘榴のジャムとバケット半分をお願いします。」
「…シンス豚のハーブソテーのトマトソースがけ一つお願いしますわ。」
「ふふ、かしこまりました♪」
といいウェイターの服を着た男性と女性は奥へ入っていった。
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しばらくしてお冷を男性の方が持ってきて少し話をした。
男の名はぺヌと言いここの店主をやっていること。
この店は夫婦経営でひっそりとやっていることを聞いた。
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「仲が良いね、あの2人」
ぺヌが戻っていった方向を見て、ふとミラがつぶやく。
「そうですね、まあ夫婦ですからね。」
と私が返したのだが…
「………」
ミラは無言でぺヌ夫妻をじっと見ている。
母親が恋しいのだろうか?、と思ったが最近あっていたのを思い出す。
では、何故ミラはこんなに寂しそうな顔で2人見ているのか。
1人で悩んでいると、さっきまで机に顔を突っ伏していたレティが、
「…ミラは気にしなくても大丈夫ですわよ。そういう年頃ですから。」
と小声でフォローしてくれた。
「…なるほど。ありがとうございます、レティ」
「いえいえ、ふふっ、本当に2人は仲がいいわね。」
「ああ、彼らですか。そうですね、憧れますよ。」
「違うわ、あなたとミラよ。出会ったのは最近と言っている割にはかなり仲がいいじゃない?そういうことよ。あーあ、私も是非とも仲良くして欲しいものだわ。」と悪戯っぽい笑みを浮かべレティは言う。
…なんて恥ずかしいセリフを吐くのだろう。お陰で顔が熱いではないか。
そんなことを言うならばこうしてやろう、と私がレティに思いきり抱き付く。
「っっ~!どどどどうしたの、レーヴァ?!」
レティが素っ頓狂な声を上げる。
「いえ?仲良くしたいって言っていたので仲良くしようかと思っただけですが?」
「そ、そう。料理が来る前には離れるのよ?」
耳まで真っ赤なレティは言う。
正直、可愛い。それも凄く。
そのまま暫く抱きついていると仲間はずれが嫌いなミラがやはり抱き付いてきた。
「み、ミラ?ど、どうしたのですか?」
今度はまだ落ち着いていた。
しかし、ミラは…
「私も仲良くしたい。だめ?」
と上目遣いで聞いてくるのだ。
─まあ、恐らく身長が一番小さいのがミラなので天然上目遣いというものだろう。
その言葉にノックダウンされた私とレティはミラに抱き付く。
ミラも負けじと抱き付く。
十数分後、料理を持ってきた夫妻に温かい目で見られるのは仕方の無いことだろう。
ミラとレティが可愛すぎたのが悪い。
長めですよ。
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