21話 話し合い
「で、この娘がその伝説のレティ・フロッティということ?」
ミラが不思議そうに言う。
仕方もあるまい、何せレティ・フロッティは600年前のある事件で封じられたのだ。曾が何個もつくような先祖の時代である。彼女が今ここにいるという実感が湧くはずもない。
「そうだと思いますけど、話が通じないのでどうしたものかと。」
「うぅん、どうしようね?」
彼女は意識は戻っているが唸り声を上げつつ草の上でジタバタとしている。
「…あっ!血を飲ませればいいのよ!」とミラは声を上げる。
「それは…そうですけど、人の血を飲ませるのですか?」
「いいえ!ボアの血をですのよ!」
「ああっ!その方法がありましたね!」
街で図書館に寄った際、見た本でそのような表記があったのを思い出し、私とミラは急いでボア狩りに出かけた。
───────────────────────────
数分後、水魔道で窒息死させたボアを山積みにした私たちはすぐさまレティの元へ持っていき、その口元へボアの死体を近づけた。
レティはガリガリヂュウヂュウと音を立てボアの肉を貪り食いつつ血を吸い30秒も立たないうちに1匹目は干物のようになってしまった。
私たちは更にボアを持ってきてレティに食わせた。
───────────────────────────
ボアの山が消えた頃、ようやくレティの目に理性の光が戻った。ボアの骨を齧りながらだが。
「ゴリッ…んぅ、あれ?ここは?ゴリッ」
「あ、起きたんですね。ええと、ここは恐らくあなたが封印された祠近くの森ですね、レティさん」
「?あなたは誰?」
「私はレーヴァといいます。ちょっと私たちが昼寝をこの森でしてたところにあなたが現れたという状況です。」
「ああ、なるほど。で、あなたはなんで私の名前を知ってるの?名乗った覚えはないけれど。」
レティは首をかしげそう問う。
「この近くの伝承であなたをここに封印するという記述があったり、近くの街道の名前の由来になってたりしますから。」
「ちょっと待って、今魔暦何年?」
「1950年ですね」
「………」
レティは呆けている。
余程ショックだったのだろう。
「…だいたい今の状況はわかったわ。あともう一つ聞きたいことがあるのだけれど、なんでそんなに傷だらけなの?あなたたち。」
恐らく自分がやったとは知らないレティは聞く。
しばらく静寂の時が流れたが、私は重い口を開いて、
「えーとですね、さっきまであなたと戦っていたからですかね?」
と言った。
すると、レティは汗をダラダラと流しながら、
「そ、それはごめんなさい…」と申し訳なさそうに言い近づいてきた。
何をするのだろう、と思うと私の傷口に手を当て、
「『治癒』」
と中級回復魔道を唱えた。
みるみるうちに傷口は塞ぎ元の状態へ戻っていった。
ミラにも同じように魔道を使って回復した。
「本当にごめんなさい…このボア?もあなたたちが集めてくれたのでしょう?」
「そうですね。でも600年も封印されてたらお腹もヘ減りますよ。」
「そうさ、それで腹一杯になったのなら良かったよ。あ、名乗ってなかったな、私はミラだ、宜しくな。」
私とミラはそう言い励ます。
「…ありがとう。本当にありがとう、レーヴァ、ミラ。何かお返しはできないかしら?このままでは私の気が収まらないのだけれど。」
「んー、では私たちの旅につきあってもらうというのはどうでしょう?」
「それでいいの?私にとってはむしろ嬉しい事なのだけど。」
「いいんです!戦力が不足してるので。」
レティはしばらく戸惑いのような悲しいような表情を浮かべた後、蚊の鳴くような声で、
「…いいの?」と聞いた。
私とミラは笑みを浮かべ、
「ええ!」「歓迎するよ!」と言う。
「ふふっ、貴方達には迷惑を掛けてばっかりね、私は。これからも迷惑を掛けるだろうけど宜しく頼むわ
レーヴァ!ミラ!」
そう言う彼女は泣きながらも笑っていた。
朝露に濡れて輝く白薔薇の様に。
新キャラ登場です!
至らぬ点や誤字などがあったら是非ゆるーく教えてください。
宜しくお願いします。




