20話 金vs銀
それは突然だった。
金髪灼眼の同じ年くらいの少女が襲いかかってきたのだ。
彼女の頬は痩せこけ、血色も悪い。なのに、目は爛々と輝きこちらを睨んでいる。
フェンリルのように見下すような眼差しではなく、どちらかと言うと獲物を見つけた獣のようであった。
私は試しに「あなたは誰ですか?」と聞いてみたが聞こえていないようだった。
「血…血ヲ…チヲヨコセエエエエエエェ!」
掠れ気味の声で叫びながら、少女は飛びかかる。
私はそれを寸前のところで躱したつもりだった。
が、しかし私の腕には切り傷が出来ていた。
(躱したはず…しかもこれは切り傷だ…)
彼女は私が思考を巡らせている間もずっと攻撃を仕掛けてくる。
そして、10回ほど躱した後、彼女の口元に光るものを見つけた。
(……!)
それは人の2倍以上はあろう牙だった。
(さっきから呟いている血への渇望の言葉、訳の分からない切り傷、そして長い牙。もしや…!)
私はそこでやっと答えがわかったのだ。
彼女は数百年前に滅びたはずの吸血鬼だ。しかも、この場所に現れたということは“緋姫”レティ・フロッティである可能性が高いだろう。
「これは本気でやらないとな…」
そう呟き剣を抜きつつ魔道の準備をする。
今から発動するのは上級魔道だ。初級・中級は無詠唱で発動できる。しかし上級以上は無理だ。
剣で応戦しつつ、詠唱する。
「我、其方に指麾す、紅蓮を喚び求めよ、
此方の憤怒を顕す龍の焔、我に敵する者を灰燼と化すがよい!
煉獄焔陣!!!」
私の呼び出した炎は彼女とその一帯を包み込み青く輝きながら火の柱となって燃えた。
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数分後、周りの木の様に煙をあげている彼女が出てきた。
かなりの火力だったのに生きているなんて吸血鬼は凄いと思ったが、私はすぐに体勢を直し、追撃に応戦できるようにし構えた。
しかし、彼女はそのまま倒れてしまった。
冷や冷やしながらもレティを倒したという実感が湧き私は嬉しくなったが、彼女自身が悪者とは決まってないので、『氷枷』を発動して拘束した後、私は寝たままのミラを起こした。
「おーい、ミラー。起きてください!」
「ん…むにゃ…おはようーレーヴァ…」
まだ寝惚けているようだ。
「ふぅ、寝惚けてないでちゃんと起きてください!!」
「お、おはよう、レーヴァ。ってどうしたのその格好!?」
「え?」
言われてみてみると肩や胸の服が切り裂かれ切り傷から流れる血で真っ赤になっていた。
「その格好で街は行けないよ?流石に」
「わ、わかってますよ!でもどうしましょうね?」
私は『瀑水』に『赤熱』で温水にしたあと、『貌土』で作った容器にいれ体を洗いつつそう言った。
「器用なことするね…まあ服は替えがないか見てみるよ。」
「ありがとう、ミラ」
「いいのよ!…友だちの頼みだしね(ボソッ)」
「何か言いました?」
「ううん、なんでもない!ほらはやく!」
そのまま体を洗っているうちにレティのことを話し合わないとと思い出し拘束した後木陰に隠しているレティに申し訳なさを覚えつつも体を洗い終えミラの元へ向かった。
続きます。
Tips
魔道のランク分け
下級<中級<上級<皇級<覇級
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