17話 “嫉妬”との邂逅
そのような事があってから数日後、私は無事に傷も完治し治癒院から出てきた。
そこには思いもよらぬ人物が来ていた。
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「む、来たな。」
「え、え?お母さん!?」
と素っ頓狂な声を上げたのはミラである。
そう、その人物とはミラの実母でリヴァイアサン家当主のエンヴィー・マリン・ドラウニールであった。
「えっと…ミラさんのお母さんですか。」
私は呆然としつつも尋ねた。
「うん。そうだよ。」
「ああ、そういえば自己紹介がまだであったな。妾は名をエンヴィー・マリン・ドラウニールといい、リヴァイアサン家の当主で“嫉妬”の業を背負う魔王だ。よろしく頼む。」
といいつつ微笑むエンヴィー。彼女はミラの髪をもう少し濃くした青の髪と抜群のプロポーションを持つ美女だ。周りの男どもが色めき立つのは仕方の無いことだろう。
しかし、すぐに表情を戻すとそこにはミラの母親ではなく“嫉妬”の魔王が立っていた。
「コホン…で、母上。何故このようなところに?」とミラも切り替えたのだろう、敬語に話し方を変えそう言った。
「うむ、お前の友人のことで来たのだ。フェンリルを一人で倒した件についてな話を聞こうということだ。
悪いがどこか2人で話せる場所はないか?」
「…なるほど、わかりました。では、私が泊まっている宿へ行きましょう。」
「あいわかった。」
「ええっ。」
と私とエンヴィーは話し、私たちの宿へ行くこと
にした。
…途中ミラが声を上げ青い顔をしたが知らん振りをした。彼女は部屋の片付けをしないからなぁ。
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宿屋“鶏鳴亭”、2階のある部屋の中。
ここは二部屋に分かれていて、手前側が応接室兼私の部屋、奥側がミラの部屋だ。
「では。何から話したものか…」とエンヴィーは応接室のソファに座りながら言う。
私は「それでは、私からその時のことを話しますよ。」と言って彼女から「わかった。」という返事を貰いその時の事を包み隠さず話した。
ヘルメスで武器を作ってもらったこと。
武器の使用感を確かめに行ったこと。
ボアを多く倒すため、森に入ったこと。
フェンリルに会い、ボロボロにやられつつも倒したこと。
全部を話した。
すると…
「ほう…これは将来が楽しみだ。私の方から掛け合ってBランクまであげてもらうとするか。」
とエンヴィーは言う。
私は今Eランク、要するに最低ランクにいる。
そこから飛び級でBランクまで上げようという話らしい。
あと、「ミラはもうCランクだからな?」と言っていた。そんなところまで上がっていたとは。
話を戻すが、Bランクとなればかなりのことが出来る。
それは魅力的だ。しかし、経験が浅い私にとってそれはかなり危険なのだ。
今回も前世でゲームをしていたから対処ができただけで、突然飛びかかってこられたら間違いなく私は喰われてしまうだろう。
だから、
「いえ、私は経験を積み自分で開けていこうと思います。」と言った。
エンヴィーはしばらく考え
「了解した。ではなにか欲しいものはあるか?討伐報酬として何かやらなくては私の気が済まんのだ。」
「その前に一つ、聞いておきたいことがあるのですが、ミラはどうなされるおつもりでしょう?」
「無論、私が連れ帰る。それがどうしたのだ?」
「では、報酬としてミラと旅をさせては頂けませんか?勿論彼女が嫌がるのなら強制はしませんが。」
ミラが家出した理由は正直わからない。しかし、私はこの数日で彼女と一緒にいてまだ一緒にいたいと思わせる何かがあった。
「良かろう。ではそのように。」
とエンヴィーは嬉しそうに言った。
私もそれに頷き、話し合いは終わった。
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私たちは一旦宿から酒場に場を移した。
そこでエンヴィーが呑んで喰っての大立ち振る舞いをしたことで一気に宴会のようになってしまい、終わると彼女はベロベロになって寝ていた。
私たちも酒を飲まされ、少々酔っていたが無事に宿まで帰還しそのままベッドに吸い込まれるように眠ったのだった。
因みにミラはその後汚い部屋を見られてこっぴどく怒られましたとさ。
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