15話 双刃の剣戟
翌日、私たちは近くの草原てきていた。
レイラさんに作ってもらった武器の使用感を確かめるためだ。
「ここあたりでいいでしょうか。」
「そうだな、開けているし丁度いいな。」
と、私は二本の刀を腰に帯び、ミラは肩に斧と案山子を担ぎながらそう言った。
「よいしょ」とミラは適当な場所に案山子を刺し、私はその案山子に向かい、ミラは何も無いスペースに向かってそれぞれ武器を振り始めた。
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数時間後、太陽が頂点に来た辺りで私たちは昼食をとることにした。
この数時間で、素振りや案山子に向かっての攻撃、途中から2人で実戦演習などをして私たちはもう腹の虫が悲鳴をあげるほどだった。
なので…私たちは何処ぞの狼のようにパンと干し肉に貪り喰っていた。
この状態の2人をもし誰かが見ていたら、素足で逃げ出すことだろう。
「ふぅ、あー美味かった!今まで食べた干し肉の中で1番美味かった。」
「そうですね!」
と2人で軽口などを話しながらも食べ終わり、午後の予定を決め始めた。
「で、どうするんだ?この後。」
「えーと、近くにボアの縄張りがあるらしいんでそこに行ってみませんか?」
「おお!それはいいな!じゃあ夜飯はボア肉の串焼きだな!」
「今さっきご飯食べたじゃないですか…」
「うん、まだ食えるぞ!」
「…そうですか。まあ、その縄張りに行きましょうか!」
「ああ!」
と森の方へ歩いていった。
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「ここかぁ、ボアの縄張り」
「はい、魔道士クランでも最近ボアの個体数増加は問題視されてただけあって、わんさかいますね~」
「よし、2人で手分けして狩りまくるか!あたいはそっち行くから、レーヴァはあっちから行って!」
と指差しそのまま言った方にミラは行ってしまった。
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私は言われた方向に足を進めつつボアを狩り、少し開けた場所に出た。
尚、ボアの屍体は怪しい露店で買った魔力量によって内蔵量のかわるマジックバックの中だ。
同じものをミラも買ったのだが、魔力量が私ほどにはなく、ボアの屍体が入り切るのか心配になった。
私は近くにあった石に腰を下ろし、魔道で水を出して、それを飲みながら刀を見つめていた。
使ってみた感じでは、曙の方は切れ味抜群で、かなり硬いボアの牙ですら易々と切り裂いてしまうほどだ。
暁の方は魔道効率がとても良く、同時に2つの魔道を纏わせても平気であった。
ただ、どちらの刀も使いやすいのだが、どこかしっくりと来ないのだ。
などと考えているとどこからとも無く、
「…グルルルル…」
と唸り声が聞こえる。
そして、その声が大きくなるにつれ、ズシンという重量感のある足音も聞こえてきた。
私は急いで立ち、刀を構えて迎え撃とうとした。
音の元は体長3mほどの巨大な狼だ。
その狼の名を私は知っていた。
「フェンリル…」
灰白色の毛並み、鋭い牙、血走った瞳、それは忌み伝えられる魔獣【フェンリル】そのものだった。
『ほう、私のことが分かるのか、人間。』
「ええ、あなたはクランでも危険種認定されている魔獣ですからね。」
『ならば…その聡明な頭を喰いちぎってやろう。』
ととびかかってきた。
危険種は並の冒険者では直ぐに殺されるような種でAランクの冒険者でも単独撃破は難しいとされる。そんな相手に勝てるわけがない。
だが、戦わねば私は喰われてしまう。
それは嫌だ。
そう思い私は曙を振るった。
しかしそれは空を斬り、そのままフェンリルはその爪で私の肌を薄く切り裂かれそこから血を流した。
その後も私は攻撃を仕掛けても躱されて爪に切られ、身体を吹っ飛ばされ、どんどんボロボロになっていった。
『その程度か、人間。興ざめだな。』
とフェンリルは嘲笑うように言う。私は傷が痛み蹲る。
『ふふ、もう限界か。ならば貴様の喉をかっ裂いた後、近くにいる人間も殺すとしよう。』
「近くにいる人間!?ミラ…ミラは駄目!」
と私は怒気を溢れさせ、もう片方の手で暁を抜いた。
(いちかばちか、やるしかない!)
私はそう決心し、狼に剣を振るった。
流石のフェンリルもこの様子には驚いたようで爪で裂こうとしたが、大振りになってしまっていた。
「闘技・桜花の舞!!!!」
私はその隙を逃さず、双刃に焔の魔道を纏わせ逆袈裟斬りに斬り、フェンリルの腕を斬り飛ばした。
『人間風情が舐めた真似をしよって!!』
フェンリルは怒り狂い、その牙で喰いちぎろうと飛びかかってきた。
「ごめんなさい、でもあなたはミラに手をかけようとした!だからここで私が討つ!人間の本気をくらえっ!闘技・迅雷の舞!!!!」
と言い、私はそのまま曙に水の、暁に雷の魔道をかけ、横一文字に斬った。
「『グルララアアア!!貴様ぁ…』」と断末魔をあげ口から横に真っ二つにされたフェンリルは倒れた。
「やった、やったよ!」
と1人でガッツポーズをした後私もその場に倒れた。どうやら血を流しすぎたようだ。
その後、私は断末魔を聞いたミラに運ばれ街に戻ったのだった…
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