12話 ルーセさんとレイラさん
夜投稿です。
今、私は鞴で炉の火を起こさせられていて、隣には必死な形相のレイラさんが火に団扇のようなもので扇ぎ続けている。また、その少し後ろには背後に羅刹を浮かべたルーセさんがたち、ミラが失神している。
何故こんなことになっているのだろう…
時は20分程前に遡る。
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レイラさんのお店、鍛冶屋“ヘルメス”に着いた私たちは彼女と挨拶を交わした後、店の奥まで案内されたのだが…
「汚い!!!レイラ、いつ片付けんのさ!とても人をお招きできる部屋じゃねぇだろうが!!」
ルーセさんがレイラさんに怒鳴っている。
あれが素のルーセさんなんだろうか…沈着冷静な美女な見た目の彼女が怒鳴っている様子を見ながら、
(何処ぞのレディースの姐さんみたいだ…!)
と現代社会ではほぼ見なくなった高度経済成長期辺りの遺産に面影を感じた。
そう1人考えている内にミラは足元にあった暗赤色の石につまづいて床に頭をぶつけて気絶し、ルーセさんはまだ姐さんモードで怒鳴っていてレイラさんはそれに問題をおこした安サラリーのように平謝りしている。
まさに阿鼻叫喚の図であった。
「おらっ、とっとと片付けて炉の用意しな!!」
「はいっ!!畏まりました!!!」
と日本軍の軍曹と歩兵のようなやり取りを2人がしつつも、片付けは着々と進み15分もしないうちに終わった。が、ここからが彼女にとっての地獄であった。
炉に火を着け、暫くはゆっくりと眺めていたレイラさんだったが、先程まで御手洗に行っていたルーセさんがその様子を見つけるや否や、
「何サボっとんじゃ、われぇ!はよ火ぃ着けんかぁ!!!」
とYAのつく職業の人たちみたいな叫び声を挙げ、その叫び声に「へぃ!親分!!」と冗談なのかどうかもわからない声で返事をしたレイラさんが必死に鞴で火を吹き始めたのだった。
私は流石に可哀想になってきて、
「手伝いますよ!」とレイラさんに言った。
「手伝わなくていいんだよ?」とルーセさんに窘められたが、レイラさんはとても嬉しそうにしていた。
しかし、現実はそう甘くは無かった。
私が「それでも自分の武器を作ってもらうわけなんで少しは手伝わないと。」といい、その言葉にうーんと唸っていたルーセさんだが、レイラさんのニコニコした様子にイラッとしたのか、言葉に怒気を孕みながら、
「じゃあレーヴァちゃんは鞴をやってね?で、アホ。お前ぇはあれで扇いでろ。あ、勿論金はとるんじゃねぇぞ?」とレイラさんに対しての鬼対応
に彼女は血の涙を流していた。
ここで現在に戻るという訳だ。
2人でやったお陰か火は早めにつき(レイラさん談)、原案の話し合いに突入した。
先ず、気絶したままのミラを起こし3人でどのような物がいいかという話になった。
「で、レーヴァちゃんはどんなのがいい?」
「私ですか…私はレイザー型の剣がいいですね。」と言った。
私が言った『レイザー』というのは、圧縮光線ではなくて、レイザーさんが考えたやり方で作った剣で性能・見た目共に太刀に酷似、というよりそのもので、前世は年頃の男子高校生だった私は武器の名鑑を見るなり「これだ!!」という確信を持っていた。
「ふむふむ、レイザー型の剣ね。ミラちゃんは?」
「あたいは両刃の斧だなー。やっぱあれが一番扱い易いんだよ。」と言った。
「了解!それじゃあつくっとくからその間にルーセと街見ておいで!」
とのレイラさんの言葉に甘え私たちは再び街に出るのだった。
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私はレイラ。しがない鍛冶屋をやっている。
最近スランプで、呑んでは寝、呑んでは寝を繰り返していた私の元に、10年来の親友が2人の可愛い客を連れてきた。綺麗な白い髪の女の子と碧眼の女の子だった。
そこまでは良かった。そこまでは。
しかし、その親友は私がしばらく前に汚したままであった部屋を見るなり激怒しドラゴンのような覇気を纏いつつ精神的にボコボコにされてしまった。
「くぅ…自分も部屋片付けずに行くたびに片付けを手伝わせてるくせに…」と悔しそうに呟くもその親友たちは私の言に従って街に出ている。
ただ、何故か寒気のした私はいそいそと作業を進めるのだった…
至らぬ点や誤字などがあったら是非ゆるーく教えてください。
宜しくお願いします。




