眩しい光
4月13日 軽音楽部室―放課後―
今私たち3人だけで、簡単なブルース(※1)に
合わせてセッションをしている。
私はまだギターを触って間もないので、
コードをバッキングで鳴らしているだけで
樂さんと真結ちゃんがソロバトルを
繰り広げているような状況だ。
――ガラガラガラッ!
海「お待たせーっ!セッションかい?
僕もまぜてよー!!」
明香「アタシも指くわえて待つだなんて
できないねーっ♪」
後から来た2人も、すぐに楽器を出して
セッションに加わり始めた。
海さんも明香さんも完璧だ…。
私はついていくのに必死なのに…。
真結「んーーーーっ!次、海さんどうぞ!」
海「今のフレーズいいねぇー!!
僕だって負けてないよーっ!」
明香「うちだって!本気だそうかな!」
樂「お前ら最高にアツいぜ!!」
玖羅々「……………」
―――ガラガラガラガラ……
少年「すみませーん、お邪魔でしたか…?」
少年の声を聞いて、演奏は終わる。
なんだかホッとしたような切ないような…。
それより少年が持っているのは――
海「あ、それ!あれだね!…あれだよ!」
真結「トロンボーンですよー!」
海「それそれ!びよーんって伸びるラッパ!」
少年「あ、ブラス(※2)って
もしかして、募集してませんか……??」
樂「どーすんの?リーダーさんよ!」
海「ブラスは嬉しいんだけど……
ホーンセクション(※3)が揃ったらなぁ……」
少年「そうですよねぇ……それじゃ―――」
明香「君、良い眼してるね。せっかく
来たんだし吹いてかない?
Cのブルース弾くから、アドリブできる?」
少年「…そうですね、せっかくですし!」
彼は一瞬迷っていたが、すぐに楽器を出して
音出しをしていた。30秒程で準備できたそうだ。
そして、樂さんの合図で
12小節のCブルースが流れた。
次の瞬間―――
―――~~♪
その場にいた皆が、少年の音に驚いていた。
時にはクラシカルな美麗なフレーズ、
時にはBlack music系の豪快なフレーズ。
その全てに聞き惚れていた。
無論、他のメンバーの闘志に
火がついたのは言うまでもない。
………私以外だけど。
演奏が終わり、もうすっかり
日が暮れようとしていた。
少年「今日は楽しかったです!
また明日も来ても良いですか!?!?」
海「あーもちろん!歓迎するよ!
絶対セッションしような!!約束だっ!」
真結「待って待ってー!
そういえば名前は何て言うの?」
少年「あ、申し遅れました!
僕は1年1組、天峰 奏蓮です!
吹奏楽や、ジャズも少しかじってます!」
真結「じゃ、奏蓮クンも入部届、書いちゃお?」
奏蓮「はいっ!!よろしくお願いします!」
真結「私と一緒だね♪
私も今日入部したんだよー!」
皆、新しい仲間の加入に喜んでいる。
そりゃあ…そうか。そうだよな。
多い方が絶対楽しいもん。
…………それに、上手いし…ね。
夕日が目に染みるようで
目を開けるのは、ほんの少しだけ、
苦痛だった。
※1…ブルース形式の即興演奏のことを指す。
ブルース形式の12小節のコードにのって、
アドリブ(自由に)でソロを演奏していく。
※2…金管楽器の総称。
※3…主に、トランペット、サックス、
トロンボーンといった軽音楽での
管楽器部隊のことを指す。
~登場人物紹介~
・天峰 奏蓮1年1組
担当…Tb、ホーンセクションリーダー、
編曲も兼任。吹奏楽兼部。
天峰姉弟の弟。人のよい純粋な性格。
甘過ぎる優しさが故に、女子に好意を
抱かれやすいが、勘違いもされやすい。
トロンボーンの腕はピカイチで、
クラシックからジャズ、ソウルまでこなす。
兼部している吹奏楽部でも、とても重宝される。
しかし、音楽以外はめっぽう弱く、
成績は学年でワースト10入り、その上運動音痴。