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~関西弁のマーメイド!?~  作者: 七福 船
9/17

9話 人間の恋愛事情ーその1。

時刻は2時15分。


僕はアーシュの恋愛経験について聞いた。


今度は僕が僕の恋愛経験を話す番だ。


『で、恋人おるんか?白状し!』


『いませんよ』


『今はおらんのやろ?聞かせてーや。あんたの恋物語を』


『そんなに経験ありませんよ』


『ほぅ~、今まで恋人は何人おったんや?』


『…1人だけです』


『えらい、純粋やな』


『そう言われると照れますね』


そう…「上辺だけの人間関係」を築くことしかできない僕にも唯一、1人だけ恋人がいた。


あれは…中学3年生の秋の話だ。


その頃、文化祭が近く僕のクラスは文化祭の合唱コンクールで賞をとることを目標にしていた為によく放課後、残された。


『皆、声を出してしっかり歌ってよ!』


特に合唱コンクールに力を入れていた女子生徒がいた。


同じクラスであり合唱コンクールで僕達のクラスのピアノ伴奏者の水野(みずの) 絵里(えり)である。


彼女は伴奏者と共にクラスを引っ張るリーダー的な存在だった。


勉強とスポーツができて美人。


それだけを聞けば良い女なのかもしれない。


『明日も放課後に練習するから皆、残ってね!』


そう彼女はすごく気が強かった。


「いやだー」「またかよ」というぼやく男子に渇を入れる彼女に便乗してクラスのその他の女子生徒も、男子に渇を入れる。


一見、男子生徒と女子生徒の仲が悪いのでは?と疑われがちだが、とても仲が良かった。


お互いに文句を言い合っている様に見えるが、互いが互いの良い所を理解し、尊重しあっている。


その証拠に、放課後の合唱コンクールに向けての練習には必ずクラスメイト全員が参加していた。


その中で僕は居心地の悪さを感じていた。


クラスメイトが嫌いという訳ではない。


ただ、心の距離のとりかたがわからなかった。


『また明日な!青野!』


『うん、また明日!』


同じクラスの男友達と別れの挨拶をして僕は教室を出た。


『今日もだるかった』


僕はそうぼやきながら、下駄箱に向かった。


『青野君!待って!』


水野 絵里にひき止められた。


『どうしたの?水野さん』


『その…青野君って文化祭実行委員だったよね?』


『そうだけど』


『合唱コンクールのこととかで、色々と話したいことがあるから連絡先を教えてほしいんだけど』


ちょうどその頃は携帯電話を使用する生徒が多かった。


その中の1人に僕も水野さんも含まれていた。


『まぁ~いいけど。実行委員としてあんまり仕事してないから力にならないかも』


『いいから、いいから!』


水野さんとはあまり会話をしたことはなかったがここで断れば、面倒くさいことになると思った僕は連絡先を交換した。


『ありがとう。それじゃまた明日ね』


そう言って水野さんは帰っていった。


それからというもの、水野さんは何かあれば僕に連絡をしてきた。


「合唱コンクール、賞をとれるかな?」「他のクラスはどうなんだろうか?」など、どうでも良い連絡ばかりだった。


最初は嫌々、連絡を返していたがやがてその連絡は僕の日常の中に溶け込んでいった。


そのせいなのか、学校でもよく会話するようになっていた。


そんな日々はあっという間に過ぎ、いよいよ合唱コンクールの日がやってきた。


僕もその時は本気で賞をとりたいと思っていた。


緊張の表情を浮かべながら、僕達はステージへ足を運んだ。


時刻は2時30分。


アーシュは僕の話を黙って聞いている。

【登場人物】

青野 海→人間、20歳。

アーシュ→人魚、220歳。

水野 絵里→昔のクラスメイト。

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