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壁

作者: ParticleCoffee
掲載日:2015/05/02

 学校内の食堂、友人が壁に頭をなんども打ち付けている。

 周りに人がたくさんいたが、誰も気に留めなかった。一度目を向けるだけで、通り過ぎていく。

 ボクは、アイスコーヒーと椅子をもってきて、壁に頭を打ち付ける友人の近くへ座る。

 近くだが、関係者とは思われない適度な位置だ。

 外が見たいなら横にあるガラスをあければいいのに。

 それともなにか違う目的があるのだろうか。

 友人を眺めながら、アイスコーヒーでクチを軽く潤した。

 見ている限り一定間隔で頭を打ち付けていると思われる。

 携帯電話を向けて10秒ほど撮影した。

 見返してスローでじっくりと見返すと、二秒に一回のペースで打ち付けているとわかった。

 次は、どのくらいのチカラで打ち付けているのかを調べる。

 それには小学校の図工などで使われる油粘土を使う。

 ボクはかばんから油粘土をとりだした。

 すこしだけ捏ねまわし、縦十五センチ、横十五センチ、厚さ五センチの四角に整形する。

 粘土の片面にオイルを塗る。友人のヒタイがあたる予定の部分だ。

 これで頭を打ち付けてもヒタイに粘土がくつかないだろう。

 そして、友人が頭を後ろに引いたタイミングを見計らい、打ち付けるヒタイの位置に設置した。

 低い音を立てて、友人はみごとに油粘土の中心に頭を打ち付けた。

 油粘土は鉢型にへこんだ。

 あとで、これと同じ形にするにはどれだけのチカラを加えればよいか、を調べることでだいたいの威力がわかる、と思う。

 油粘土を壁からはがしてテーブルの上に置いた。

 さて次はバネ秤を使って――

 ミシッ。

 重い音が響く、打ち付けている壁にひびがはいったのだ。

 気にすることなく友人は打ち付ける音を響かせ続ける。

 気が付くと、周りには多くの人間が集まり、全員が固唾を呑んで見守っていた。

 突然、友人のこめかみあたりまで一気に壁に沈み込む。

 友人が頭を引いた時、かべにこぶし大の大きな穴が開いていた。

 穴からは外がよく見える。

 囲んでいた人間は、大きな感嘆の声をあげ大きく喝采した。

 その中心である友人は周りを見渡した。

 近くに座っているボクと目が合う。

 友人は、こちらへきて向かい合うように座った。

 ヒタイがオイルまみれですこし赤い。

 ボクの手からアイスコーヒーを奪い友人は一気に飲み干した。

 なにしてたのかを問うと、

「……ちょっとな」

 はき捨てるように言うと、はれぼったそうな目で重いマバタキをして大きなあくびをする。

 友人は気だるげにテーブルの一点を見続けていた。

 穴の周りには 覗き込んだり写真を撮ったりしている手を通したりしている

 穴の外からも、通りすがりの人間がこちらをのぞきこんでいる。

 穴から吹きこむ秋風はほどよい心地よさがあった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 壁ドンでしょ?
2015/05/02 23:57 退会済み
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