ねずみ
取替神社は、何かを取り替えてくださいます。
たとえば今お祈りしている男と老婆、別々に来たから家族同士ではありません。
「神様お願いです仕事がうまく行くようにしてください」シャリリ~ン
男はオレオレ詐欺を仕事としていた。
「そうだよ、銀行の人が行くから渡してくれればいいんだ」
成功だ、老人世帯だけが載ってあると言う番号だけの電話帳から選んだ相手だが一発で引っかかった。
翌日自宅から電話がかかる。
「婆さんが財産全部詐欺で盗られてしまったぞ」
落ちてあった賽銭を猫ばばしたのがいけなかったのでしょうかね。
組織は下っ端のことなんかかまってくれないのです。
仕事の下見の帰り道、ふと足を止めた神社でお祈りをした。
500円いれとこう。
俺は、裏の世界の仕事をしている。
「老後は穏やかな生活が出来ますように」
何か、カリカリと音がする。
拝殿の壁を蹴飛ばすとねずみが飛び出してきてあっという間に逃げていった。
びっくりさせてくれる。
俺は臆病なんだ。
俺は、裏の世界ではそれなりに名のとおったベテランの泥棒だ。
大金持ちの依頼を受けて美術品を盗み出す。
彼らはその美術品を個人で鑑賞したいがために高い金を出して依頼してくる。
だから盗品が人目について足がつくこともない。
俺は慎重に配電盤から引っ張り出したコードを切っていく。
このコードは金融会社が所有する貴重品保管庫のセンサーに繋がっている。
全て切ればいいというものでもない。
保管庫を開け、持ってきた俺の書いた絵と担保に採られた絵を入れ替える。
偽物と分かっても大きく問題になることも無い。
鑑定家が間違っただけだから。
さて配電盤を戻して引き上げるかと思ったときに警報ベルが鳴り響いた。
あわてて逃げ出すも、裏口から出たところで取り押さえられた。
「警視庁の猫田です。現行犯で逮捕します」
「警部さんなぜ警報機が鳴ったのか教えてくれませんかね」
「あの配電盤には高圧線も入っていてだな、それをねずみがかじってしまったんだ。」
取り替えられたのは猫につかまる運命と感電死する運命。
神様は悪いことを見逃すわけには行かなかったのだ。