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暴力

 取替え神社、だれもこない薄暗い神社の境内に俺は連れ込まれていた。

どこでそんなものが売っているのかと不思議に思うくらいど派手で下品な学ランを着ている男に、俺は胸ぐらをつかまれている。

賽銭箱が尻に当たり体が大きくえびぞりになる。

「早く出せよ」

この男、薬座恭くすりざきょうは、俺の中学時代の同級生である。

震える手でズボンのポケットから財布を出し、お金を取り出そうとして手が滑る。

カタ、カタン。

500円玉が零れ落ちてしまった。

”神様助けて。”

一発殴られる。

「落ちた小銭の分だ、財布ごとよこせよ」

力任せに財布を奪われた。

「けっ、高校生にもなってしけたやつ。あさってまでに10万もってこいよ。お前かわいい妹ちゃんがいるんだろ?どうなるか分かってんだろうな」

薬座はそう言い放って立ち去って行った。


 空になった財布を拾い上げる。

バイトの給料もいまとられてしまった。

もう金なんか手に入れる方法はない。

でもなんとしても結衣は守ってやらなければならない。


 その夜、俺は家族に全部話すことにした。

俺はみんなの前に土下座していた。

「それで、地元やくざの息子ってのに脅されているんだな」

親父は名前を聞いたことがないような会社の経理マンである。

相手は広域の暴力団にも深いつながりがあるという噂だ。

「手後れになる前に話してくれて良かった。私が何とかするから安心していていいぞ。」

日頃母さんの尻にひかれてる親父が大きく見えた。

母さんもうんうんとうなづいている。

「わたしもだいじょうぶだよ」

結衣もそう言ってくれた。

「彼が守ってくれるもん」

おぃ。

さりげない爆弾発言はスルーされた。

俺以外は知っていたらしい。

そして本当に驚いた、次の朝精悍な男が妹を迎えに来た。

何かの主将らしい。

そして俺も出かけようとして驚いた。

マンションの玄関先で、いかにも任侠と言う文字が似合いそうな男が、薬座と共に土下座していた。

薬座の左手には包帯が巻かれていて、小さい木箱が置かれている。

「大神部様のご子息とは露知らず、うちのせがれがご迷惑をおかけしました」

理解が現実に追いつかないうちに家から親父が出てきて二人を連れて行ってしまった。

「母さん、あれなんだったんだ」

「お父さん、組の大幹部よ、知らなかったの?法律対策で会社組織にしてるって言ってたじゃない」


 そんなはずはない。

そういえばあの神社で後ろ向きにお願いしたので、バックが取り替えられてしまったみたいだ。

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