縁起
ショートショート、取替神社の縁起です。
ブラバしないで次の一作だけでも読んでやってください。
この世の始まりのことでございます。
男神様が禊をされたとき。太陽を司る神様、夜を司る神様、そして海を司るべき神様がお生まれになりました。
このとき、実は荒ぶる海の男神様に対を成す女神様が最後に洗った額からお生まれになったのです。
父神様はこの女神様に命じられました。
「時を司り、昼と夜を取り替えよ。季節を取り替え生命に恵みをもたらせ」
と。
この女神様は、海の仕事を投げ出された兄神様と違って、毎日正確にお仕事をされていたのでした。
ところがあるとき、太陽の神様の孫同士が争ったとき、負けたほうが方角を入れ替えることで女神の力を使って勝利を奪い取ってしまいました。
争いのためにご自分の力を使われてしまった女神様はたいそう悲しまれて、人々や他の神々からお隠れになったのでした。
それでも生命に恵みをもたらさねばならないため、昼と夜を、季節やあらゆるものを取り替える力をご自分の社から使ってくださっているのでした。
この社はもともと日が登る神の山と日が沈む神の山の中間にありましたが、あまりにも霊験あらたかなのでご利益を独り占めするために、時の権力者が小さな社と取り替えてしまったのです。
たしか豊臣氏とかいいましたか。
神様がお怒りになると怖いのです。
時代が下って土佐の浪士がお参りするまでは誰もこの社を訪れる者がいなかったのですが、なぜか今も朽ち果てることなく、大きな神社の近くにひっそりと佇んでいるのです。