00 朝の一幕、そしてクラス分け
前活動報告でアンケートをとり、その結果から始まったこの小説。
若干キャラに変更はありますが、それでも「あ、このキャラ・・・」と思うキャラばっかりだったり。
今回は熾天使オリキャラ組が登場(一部)。
4月7日。世間一般では大体入学式が行われる日。春の日差しが暖かくなってきたその日のとある家のとある部屋。
「・・・に・・・ん・・・だよ」
「・・・あと・・・5時間寝させてくれ・・・」
その部屋の主の少年は今もなおベッドの中で眠り続けている。起こしに来た少女は少年を揺するが、少年は寧ろ『後5時間』と完全に起きる気はない。
「・・・むー・・・お兄ちゃん、起きないとキスするもん」
「起きた。だからキスは止めろ沙霧」
少年は少女、二崎沙霧の肩を抑えて接近させないようにした。最早飛び起きる形で。
「お兄ちゃん、おはよ」
「・・・おはよう、沙霧。だから体を押し付けようとするな」
「・・・おはようのチュー・・・」
「しなくていいからな!?大体兄妹でそんなことやるのってこの年になったらいないだろ!?というか元からいない!!」
ギリギリと少年に迫る沙霧。必死になって抑え込む少年。この拮抗は長く続くと思われていた。
〈いい加減起きなさいよ寝ぼすけー〉
少年、二崎奏を呼ぶ声が。
「げっ、ロロット!?やべ、沙霧、すぐ離れろ!!」
「・・・やだ」
「やだじゃねえ、後々面倒なことになるからすぐ離れろって!!」
「や!」
引き剥がそうとする奏、絶対離れまいとする沙霧。そんな状態でもみ合っているために・・・
「ちょっと、さっきからドタバタ聞こえてるけど・・・っ!?」
そして部屋のドアが開き、少女、ロロット・セストナが部屋の中に入ってきた。そして彼女が目にしたのは・・・
相変わらず奏にキスを迫る沙霧と、それを肩を抑えてどうにか止める奏だった。
「あ、あ、あ、アンタたち朝っぱらから何してんのよっ!?」
「見てわかんねぇのかよ!必死になって止めてんだよ!!」
「・・・キスしようとしてるだけ」
「・・・」
必死になってる奏と訳の分からない答えを言い出す沙霧を見て、ロロットは一瞬俯いてから奏に近づき・・・
「ふんっ!」
「きゃんっ!」
「おぐっ!?」
沙霧をベッドから突き落とし、奏の鳩尾を右ストレートで殴った。
「ぐおぉ・・・っ!な、何すんだロロット・・・!」
「朝っぱらから変なことしてた罰よ!!」
「そういうことはしてねぇって・・・」
奏がベッドの上で鳩尾辺りを抑えて悶え苦しんでいた時。
「ろ、ロロット?なにか今凄い音が聞こえたけど・・・」
下の階から長い金髪の少女が登って来て、奏の部屋をひょっこりと覗いた。
「・・・なんでもないわよお姉ちゃん。ただそこの変態に天誅加えただけ」
「天誅って・・・か、奏君!?大丈夫!?ろ、ロロット!!」
「・・・フンだ」
ロロットはズカズカと下の階へと降りて行った。残った少女は奏の背中を擦っていた。
「だ、大丈夫?」
「・・・悪い、ありがとなルティア・・・げほっ」
その少女、ルティア・セストナは礼を言われると顔を赤くして俯いた。両手は指の先端をつつき合いながら弄んでいる。
「むー・・・」
それを沙霧は恨めしそうに見つめていた・・・
「・・・おろ、リーシャまで来てたのか」
「あっ、おはようございます、かな君♪」
ロロットからの一撃から回復し、どうにかリビングまで降りてこれた奏が見かけたのは、彼の3人目の(女の子の)幼馴染み、リーシャ・メルティアだった。
そのリーシャは奏を見つけるや否やとてとてと歩み寄ってギュウッと抱きついた。
「おっとと・・・いきなり抱きつかないでくれってば」
「えへへ・・・かな君暖かいです♪」
「おいおい・・・まだ着替えもろくに済ませてねぇから制服汚れるぞ、皺も出てくるし」
「かな君にだったら汚されても構いません♪」
リーシャがむぎゅむぎゅと奏に甘えるように抱きついている中、それを見ていたルティアは・・・
「か、奏君は私のだもん!!」
「ルティアまで!?ちょっと待て、せめて着替えさせてくれ!!」
奏の空いている側に抱きつき、リーシャに対抗しようとしていた。
「・・・まったく、いつまでもバカやってないでさっさと学校行くわよ!お姉ちゃんもリーシャもさっさと奏から離れなさい!入学式から遅刻なんて恥よ!」
『はーい・・・』
しょぼーん、と言った感じで渋々奏から離れるリーシャとルティア。その間に慌てて着替える奏であった。
「・・・さすがにここまで来てりゃ遅刻はねぇだろ」
「そうね、どっかの抱きつき魔とキス魔が暴走しなきゃもっと余裕持てたのにね」
「うっ・・・」
「・・・(つーん)」
ロロットに指摘され、いたたまれなくなるリーシャとそっぽを向く沙霧。そんな空気をどうにか打開しようとルティアが口を開いた。
「そ、そう言えば噂で聞いたんだけど、白鷺高校の1年生にアイドルが入学するって。で、勉学に励むから活動を抑えるって書いてあったような・・・」
「へー、お姉ちゃん、どっから仕入れたのよその情報?というか誰なのそのアイドル?」
「インターネットのスレッドで見たんだけど・・・タイトルは・・・忘れちゃった。それで、名前は・・・えーっと・・・」
口に手を当てて記憶を探るルティア。数秒後、ようやく思い出したかのように口を開いた。
「思い出した!テーシア・セイルメリーって子だ」
「テーシアって・・・ちょ、ええっ!?」
「る、ルーちゃん、それって本当ですか!?」
「う、うん・・・」
突然詰め寄るロロットとリーシャに後ずさるルティア。
「・・・嘘・・・テーシア・セイルメリーって今超売れっ子アイドルじゃない・・・グラビアにも引っ張りだこで歌も上手いって言われてる・・・」
「そんな人と同級生なんて・・・凄いです・・・」
呆然とするロロットとうっとりした表情のリーシャを一回見た後、奏は
「ぼーっとしてると置いてくぞー」
の一言を告げたまま先を歩いていった。その後を呆然状態から回復したロロットがリーシャを引っ張る勢いで追いかけた。
「やっと校門か・・・長いな・・・」
「あ、あそこでクラス分けが発表されてますよ」
「よし、見てくるか」
奏を先頭にして5人はクラス分けの紙が貼られている場所へと向かった。
「皆同じ高校志願して同じ高校合格したから・・・一緒のクラスになれるといいですね」
「さすがに全員が同じクラスなんてことはないだろ。1クラス50人って言うマンモス校に合ったシステムのクラス分けだしそれに見合う数の人数なんだぜ?」
「そう・・・だね・・・」
突然といっていいほどの勢いでしょぼーんと落ち込む沙霧。ルティアはというと・・・
「・・・お姉ちゃんったらいつまでたっても奏の後ろにしかいられないのが・・・なんというか・・・恥ずかしいわ・・・」
「だ、だって・・・知らない人が・・・いっぱいいるんだもん・・・」
「ルティア、お前いい加減その恥ずかしがり直そうとしろって」
「む、無理だよぉ・・・」
奏の背に隠れるようにしていた。周りからは「あの子可愛くね!?」とか「くっそ、あいつ美人3人も囲い込みやがって」などとルティアらに対する褒め言葉と奏に対する怨嗟の声が上がっていた。ちなみに前述の美人3人にはロロットは含まれていない。
「・・・っと、気がついたらクラス分け前に到着ってな」
「この中で一番名字が早いのは・・・お姉ちゃんか」
ロロットは1-1から順にクラスを見ていく。
「・・・あ、沙霧あった。1-2だってさ」
「お兄ちゃんは!?」
「まだない」
「・・・」
奏と同じクラスになれなかった、ということに絶望しか見えなくなった沙霧は、音もなくという表現が正しい程に静かに隅まで移動し、そこに座り込んで落ち込んだ。
「・・・沙霧ちゃん・・・大丈夫でしょうか・・・?」
「ほっときゃその内慣れるだろ。つーかそろそろ兄離れしないとこっちも困るって」
「・・・あ、1-4で幸俚みっけ。あら、美雪に鈴風も同じだ。お姉ちゃんがちょっと飛んで・・・といっても1-4、アタシがその次続いてて・・・え、テーシアも一緒!?・・・っと、今は関係ないか・・・た、た、た、た、ち、ち、つ、て、と、な、に・・・奏も一緒かー」
「・・・待ておい、沙霧以外全員同じクラスじゃねえかよ」
「そうみたいですね・・・。昴君や愛理ちゃんもいますし・・・私も同じで、雪姫ちゃんも・・・」
「で、でも、信也君1-5だよ?」
『・・・そうか、あの変態は1-5か。よかったよかった』
「え、えと、奏君、ロロット?どうしてシンクロして良かったって言うの?」
「気にするな」
「こっちの問題よ」
「そ、そうなんだ・・・?」
なぜ信也・・・有沢信也、通称変態が別クラスでよかったのか、それは奏とロロットにしか知る由もなかった。
「おにーちゃーん・・・」
「いつまでもめそめそしてないの!どーせ家帰ったら会えるんだしそれまで我慢しなさいよ!」
「くすん・・・」
とぼとぼと歩く沙霧を蹴飛ばす勢いで後ろから怒鳴るロロット。その前には奏やリーシャ、その後ろで隠れるようにしているルティアが。
「・・・1-2見えてきたな」
「ほら、こっからあんた一人で頑張んなさいよ。あ、この子お願いね」
「え、あ、うん」
「おにーちゃーん・・・」
名も知らぬ女子に沙霧を託し、4人は1-4へと歩いていった。後ろから恨めしげで断末魔にしか聞こえない沙霧の声が聞こえてきたが、あえて無視していった奏であった・・・
次回は大量にキャラが出てきます。タグの『変態は~』の意味も次回分かるかと。
恋愛とギャグの比率が大体6~7:4~3くらいで行くつもりです。お楽しみに。