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第六話 浮かれてるあたし

 今日の授業は気持ちが浮かれていたせいでほとんど聞いていなかった。当然、その理由は今日の夕方先輩に会うことが出来るからだ。

 授業をしていた先生はあたしが浮かれているのは文化祭が近いからだ、と勘違いしていた。まあ、あたしとしてはそっちのほうがいいんだけどね。

 恋愛に関する話なんかされたら多分、あたしは恥ずかしすぎて死ぬかもしれない。でも、実際には死なない拷問よりも苦しいかもしれない。ていうか、そういう話をされること自体が拷問かもしれない。

 でも、女の先生はあたしがどうして浮かれているのかっていうことに気がついていたかもしれない。だって、地理担当の女の先生があたしに「文化祭が近いからって浮かれてるんじゃないわよ」、と注意をしたときからかうような笑みを浮かべてたような気がしたから。

 たぶん、先生は暗に「文化祭で好きな人と一緒にまわれるからって浮かれてるんじゃないわよ」と言ってたんだと思う。それを、意識するとあたしは恥ずかしくなった。

 実際に先輩と一緒に文化祭を見てまわれるというわけではない。ただ、その場面を想像しただけだ。けど、普通の日ならばこの程度で恥ずかしいと思うわけがない。

 今日の早朝に先輩に会って話をしていたからそれが、あたしに恥ずかしいと思わせるほど意識させた。

 その後、先生は先生であたしのあからさま過ぎる反応が面白かったのか忍び笑いをもらしていた。

 そして、更にこういうことに敏感だったのがあたしの二人の友達だった。昼食のときに二人はあたしの席まで来てからかいを交えつつもあたしに質問をしにきた。

 実は、二人にはあたしの好きな人が瀬条先輩だっていうことを教えてある。だから、質問の内容は瀬条先輩に告白したのか、とか文化祭を一緒にまわる約束をしたのか、とかいう感じの質問ばかりだった。

 あたしは、まだだよ、とか、そんなことないよ、とか否定的な発言を繰り返していた。正直に言ってあたしは羞恥で疲れ果てていた。

 そんなこんなで、放課後になった。あたしは、ホームルームが終わると同時に教室からさっさと出て行ったのですでに校門の前まで来ている。

 自然と前へと進む足は速くなっていく。と、そこで校門をくぐりぬけた瞬間に思い出した。今日は生徒会役員が集まらなくてはいけない日だった。書記であるあたしは当然行かなくてはいけない。

 なので、あたしは回れ右をして生徒会室へと向けて走っていった。



 生徒会の仕事が終わったときには辺りは薄暗くなり始めていた。先輩が来れるのが遅くなるというのはこのせいだったようだ。

 あたしは、出来るだけ早く帰ろうとほとんど全力で走っている。猫の姿になって走ろうとも思ったがとある理由のせいで無理だった。

 それは、荷物を持つことが出来なかったからだ。

 試しに一度猫の姿になってみたけど猫に変わった瞬間に鞄は音を立てて地面に落ちてしまった。どういう原理かはわからないけど服とかは人間のときのままだからいけると思ったんだけどだめだった。

 だから、仕方なくあたしは人間の姿のままで走っている。出来るだけ早く帰って身だしなみを整えるためだ。

 家につくとあたしはすぐにチャイムを鳴らす。お母さんが出てくるまでの時間がもどかしく靴のつま先で何度も地面をとんとんと叩く。

 そして、扉が開いた途端にあたしは「ただいま」と、早口で言って即座に部屋へと向かっていった。そのときにお母さんが何かを言っていたのが聞こえた気がしたが、急いでいたあたしには何を言っていたのかわからなかった。

 急いで部屋に入るとあたしは鞄をベッドの上に投げる。それから、洋服の入っているクローゼットを開ける。

 いつもは適当に選んだ服を着ているけど今日はそういうわけにはいかない。あたしが勇気を出すことが出来れば先輩の前で人間の姿に戻るかもしれない。そんなときに適当な格好だったらいいアピールにならない気がする。

 時間がないからじっくり選んでいる時間なんてない。それなのに、どれを着ればいいのかなかなか決めることが出来ない。

 あたしは、早くしないと、とあたふたとする。

 そして、どうにか服装は決めることが出来た。でも、これまでに結構時間がかかってしまった。

 あたしは急いで制服を脱ぎ、先ほど決めた洋服に着替える。それから、鏡の前に立ち自分の姿を確認する。

 髪がおかしい部分は手櫛と机から取った櫛でささっと直す。少し気に入らないところもあるが時間をかけている暇なんてない。

 ある程度、満足がいくとあたしはよし、と頷いて鏡の前から離れる。そして、部屋から出てお母さんに「散歩に行ってくるね」と行ってあたしは家から出た。


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