始まり 恋したあたし
女の子視点の作品です。
作者は男、ですので女の人についてはよくわかりません。
もし、不自然な点などありましたらお教えください。
では、猫のしっぽ、楽しんでください。
秋がやってきた。日本人にとって秋は一年の折り返し地点。だからなのか、学校ではやたらと行事が多い。
体育祭とか、文化祭とか、合唱祭とか。だから、あたしを含む日本の学生である若者達はとっても忙しい。まあ、例外もあるみたいだけどね。
なかには無理をして体を壊してしまう人さえいる。あたしはちゃんと自分の体のことは自分で管理してるからそんなことないんだけどね。と言っても、体が壊れるくらいに頑張ろうとも思ってないしね。
そんなことはどうでもいいとして、まずは自己紹介。あたしは大西ゆかり。この近くの高校の二年生。成績は普通。運動は好きだけどそこまで運動能力は飛びぬけていいってわけじゃない。容姿は――少し茶色のかかった黒色の髪、肩のところで切られたショートカット、他の人よりも少し大きい瞳、そして、他の人よりも少し成長の遅れた身体。これがわたしの客観的な容姿。
友達は可愛いって言ってくれる。だけど自分で見たら、そうかな?と思ってしまう。胸も少し小さいし。結論、周囲の主観では可愛い。わたしなりの主観ではまだ足りないものがある。
あたしの性格について。自分では結構穏やかな性格だって思ってる。あんまり怒ったりすることないしね。あとは自分の好きなものがあると感情が素直に表に出てしまう、かな。
ちなみに、あたしの好きなものは、猫。なんで猫が好きかっていうとまずは姿。
あのふわふわした感じがとっても可愛い、ってあたしは思う。あとは、結構気まぐれな性格だっていうところ。いつの間にかいなくなってる、と思ってたらいつの間にか帰ってきてるっていうところもいいかな。でも、あたしの家では猫、飼ってないんだよね。猫に対してそんなイメージがあるだけ。
ようは、犬と違って自由気ままなところが好きなんだと思う。多分、他の大多数の猫好きな人もそういう理由だと思う。
まあでも、好きなんだったらどんな理由でもいいってあたしは思う。あたしは猫がいたらそれだけで幸せな気分になれるんだ。やっぱり、幸せな気持ちになってるほうがいいよね。
幸せ、といえば、恋人がいること。あたしにはいないけど、恋人になってほしいなっていう人はいる。
一応あたしも今年で十七歳。好きな人ぐらいいる。
その好きな人というのはあたしよりも一つ年上の先輩。名前は、瀬条博斗。生徒会に所属してて副生徒会長をしてる。実はあたしも生徒会に所属してるんだ。ちなみに役職は書記。
暇なときは暇だけど忙しいときは忙しいそんな仕事。入った動機はどんなことをするんだろう、って思った。それだけ。たぶん、なにかやらなくちゃな、とか思ってたんだと思う。
なんにしろ、生徒会に入ってなかったらあたしは瀬条先輩のことは好きになってなかったと思う。
どこが好きなのか、と聞かれると優しいところ、かな?
最初は瀬条先輩には全然興味なんてなかった。それ以前に、誰かを好きになるということにさえあんまり興味はなかった。今のままであたしは十分だって思ってたし。
それで、あたしが瀬条先輩を好きになったきっかけ――いや、この場合は好きになるまでの過程ってことになるのかな?まあ、どっちでもいいや。とりあえず、あたしが瀬条先輩を好きになった理由。
瀬条先輩はあたしが困っていたらいつも助け舟を出してくれた。そのときはただ単に優しい先輩だな、くらいにしか思っていなかった。
でも、あるとき瀬条先輩が生徒会長にも優しくしているのを見てしまった。普通なら、先輩って誰にでも優しいんだなって思ってたはずだった。なのに、あたしは胸に微かな痛みを感じて他の人に優しくしてほしくないって思った。その優しさをあたしだけに向けてほしいって思った。
そのときに、あたしは気がついちゃったんだ。あたしが、瀬条先輩のことを好きになってたってことに。
それからはとっても大変だった。いや、今でもすごく大変。
考え事をしていてそのときに瀬条先輩の顔を思い浮かべるだけで胸がとってもどきどきしちゃう。
夢にだって出てくる。そのとき、あたしの夢の中にいる瀬条先輩は大好きだよって言ってくれたり、手を繋いでくれたり、抱きしめたりしたりしてくれる。あたしはそんな夢を思い出すたびに顔が火照ってしまう。熱でもあるの?、と親に心配されてしまうほどだ。
そんなんだから、本人の前ではもっと大変。声をかけられるだけでてんぱっちゃうし、どんどん落ち着かなくなっちゃう。でも、瀬条先輩に変な姿は見られたくないって思って表面上は冷静に見えるように頑張ってる。だから、瀬条先輩の前で変なことはしていないと思う。瀬条先輩の前だとほとんど意識が飛んでっちゃってるから本当のことはよくわからない。けど、周りの人たちはなんにも言わないから大丈夫なんだとは思う。
あたしは、瀬条先輩に好きです、って伝えたい。でもあたしにはそんな勇気や度胸なんてない。友達に相談して見たけど「勇気を出すしかないわ」というアドバイスしかくれなかった。
もっとまともなアドバイスはないのか、と思わなくもないけど確かにそれしかないと自分でも思ってる。やっぱり、正面から自分の気持ちをぶつけないと相手には伝わらないと思う。けど、どう頑張ったって勇気なんか持てるはずがない。目の前に瀬条先輩がいるだけですごく恥ずかしくってどきどきしていつもの自分を装うので精一杯だ。そんな状態で告白なんていう大層なことはできない。
だから、あたしは願った。瀬条先輩と自然に話せるようになるような機会がほしいと。自然に話せるようになればどうにかなるかもしれない、とあたしは思ったから。
そして、その願い事はちゃんとかなった。あたしが予想もしなかったような形で。
これは、あたしの恋物語。ちょっぴり不思議で恥ずかしいあたしだけの物語。先輩も巻き込んだ特別な物語。
そんな、物語がいまはじまります。