序章 あるいは一つの歴史の始まり。
楽『市』楽座、復活!!
ということで、某所に投稿しておきながら、私の身勝手な理由で削除してしまった「楽『市』楽座」ですが、こちらで再掲載することになりました。
皆さん、よろしくお願いします。
それと、この作品は独自解釈やオリジナル要素を多々用いています。
ですので、この話に書かれているようなことを史実で信長が取った、などとは思わないでください。
目が覚めたら赤ん坊になっていました。意味が分かりません。
いや、本当に参りました。視界は霞んでいますし、音は雑音としか聞こえませんし、「あ~、う~」としか喋れませんし、体は上手く動かせませんし。
しかも「あ~」とか「う~」とか言うだけでは、お世話してくれる人(何人も居るので、どれが母なのか、そもそも母が居るのかも分かりません)が何もしてくれないので、お腹が減ったときや排泄行為をした後は大声で泣かないと駄目ですし、なんというか最悪です。
まぁ、そんな状態もある程度時が流れて、感覚が以前と同じぐらいまで回復していくにつれて解決していきました。
その代償に、父親らしき人物とその周りの人物に天才児として騒がれるは、うつけと評判の兄に興味を持たれるは、生母らしき人物に嫌われるは、と別の問題が山積みされていきましたが。
そして、最大の問題は自分の名前が『織田 市』で、父親らしき人物の名前が『織田 信秀』、そのうつけと評判の兄の名前が『織田 信長』であることです。
タイムスリップした上に、信長の妹である、お市の方に憑依(それとも赤ん坊からだから転生になるのでしょうか?)するとか、有り得ないってレベルじゃないんですけど!
因みに、あの織田信長であるという事実を知る前の彼への印象は、『理屈を捏ね回す、喧嘩上等な悪ガキ』
知った後は、『常識に喧嘩を売って歩く合理主義者』に変わったけど。
そして何故か、私、お市の方、四歳は、兄である信長の勉強会に参加することになりました。
というか、四歳児、それも女の子を、同じ城に居るからといって、商人や僧侶たちから経済学・軍事学を学ぶ場に連れて行きますか?普通?
流石、うつけ、戦国の革新児と名高い信長です。誰も真似できないことを平然と行ないます。
商人の人なんか、完全に引いていましたよ。私が『今の津島経済の仕組みとそこから織田家が得られる利益』を兄に問われるままに説明してしまったからかもしれませんが。
いや、だって、あの織田信長に尋ねられたら答えるしかないじゃないですか。後の第六天魔王の言うことを無視する勇気はありませんよ。
勉強会はそのまま『どうやったら収益をより増やせるのか?』という方向に進み、私が『短期的に見るなら増税、中期的に見るなら治安向上と新しい販路の開拓、長期的に見るなら座の解散による自由取引市場の形成』的なことを言ったら、さらに引かれました。
十七歳の兄に問われて、四十代の商人に、持論を説明する四歳の少女。うん、引きますね。こんなことが現実にあったら。
兄はその様子を見て機嫌良さそうに笑うだけですし、私が居る意味あったんですかね?
そして後日、何故か、そのときの商人から私へ贈り物が届きました。
兄である信長曰く「お前の将来性に気が付いたのだろう、貰える物は貰っておけ」とのことですが、こんな四歳の少女に先行投資とか、マジですか。
過大評価しすぎです。この後の歴史を知っている私でも躊躇すると思いますよ、流石に。
これ以後、私は兄、信長の勉強会に必ずといっていいほど出席させられることに。
最初は、流石に場違いだからと、少ない勇気を振り絞って断ったんですが、そしたら今度は兄の後見役である平手政秀までが、「信長様の機嫌が悪くなって大変なので、どうか参加してくれませんか(意訳)」みたいなことを説得に来たんですよ。
史実なら数年後に自害してしまう人だけあって、胃の辺りを押えながらそう言う彼の姿が哀れすぎて、承諾することに。
まぁ、勉強ばっかりしていても飽きてしまうので、空いた時間は那古野城に勤める人々の子供たちに現代風の遊びを広めて一緒に遊んだりしていました。
兄が小姓である犬千代(前田利家)などを引き連れて乱入してきたときは色々とやばかったですが。
子供たちに混じってサッカーをする織田信長と前田利家とか、違和感が在り過ぎて困ります。
しかも、陣形(3-3-4等の人の配置)など、サッカーのルールに含まれる戦術的な要素が気に入ったのか、その後も小姓を連れて度々参加し、終には町の若者に働きかけてサッカーのチームを作らせ、自分のチームと対戦させたりもしていました。
フリーダム過ぎる。
おかげで、那古野城周辺では、サッカーが大ブームです。商人の話では、津島経由で堺などでも子供たちの間でサッカーが広まりつつあるとか。
私は自分も楽しいから良いのですが、胃を押えながらそんな兄を諌める平手政秀が本当に哀れでなりません。
というか、平手政秀が居なくなると、兄の暴走による被害が激増する気がします。
これは是が非でも、私の胃のために、彼の自害イベントは阻止しなくては。
彼が生き残ると歴史が大きく変わってしまう気もするけど………大丈夫だよね?そうだよね?
とりあえず、某所に投稿していた十二話までは、改訂だけなので連日投稿できると思いますが、その後はすごくスローペースになると思われます。
ご了承ください。