第6話(下) 冒険者達と
「あの、到着しましたよ。起きてくださ~い」
そんな感じの声が、上の方から聞こえた。
う~る~さ~い~。私は眠いんだ。
「ボクも色々とやる事があるんですよ~」
声が近いよ、アカンサスくん。そんなに近くで喋られると、耳がくすぐったいじゃないか。
…………へ?…近く?……耳?
ここって、どこだ?……宿屋じゃなかったっけ?
枕だって……さわさわ。
「ちょ、ちょっと、そんな触り方しないでくださ、あっ!」
変な硬さのある枕が動いたっ!
そうか、馬車で眠っ…ゴンッ
「「痛っ!!」」
慌てて起きたら、何かに頭をぶつけたよっ!
ぶつけた頭を抑えながら、何に当たったのか涙目で探すと、顔を抑えてるアカンサスくんが見えた。
えーと……起きる前に聞こえた「上」からの声、何かとぶつかったこの頭、痛そうに顔を抑えるアカンサスくん……イコール、わたしがアカンサスくんにヘッドバッド?
ピンポンピンポンッ♪
「えと、その……ごめん」
「いへ、あれくりゃい、よけりゃれにゃいほ」
ごめん、何を言ってるか判んない。
お互いで謝っていたら、後ろでブッて音がして振り返ったら、護衛のリーダーのおじさんが、笑うのを堪えるのに失敗したのか、口元を抑えて、肩をピクピクと震わせてた。
笑うなこらっ!
そんな気持ちをこめて、おじさんを睨み付けるっ!!
「お嬢ちゃん、そんな顔で睨んだって可愛いだけだぞ」
そんな、可愛いだなんて言っても……よし許す。
だがしかしっ! ひとつ許せない事があるっ!!
「お嬢ちゃんじゃありません、カリンですっ!」
「そっか、カリン嬢ちゃん。さっきは助かった。改めて礼を言わせてもらう。ありがとう」
……くっ! また嬢ちゃんて言った。 でもお礼されちゃったし、文句が付けにくいんですけどっ。こいつやるなっ!
「そういや自己紹介がまだだったな。俺はチーム黒狼のリーダーをしてるランティスだ。神人を見るのは初めてなんだが、カリン嬢ちゃんみたいな小さい娘が1人で降りてくるのは普通のなのか?」
また子ども扱いかっ!
「こう見えても2百(中身は16)歳越えてます~っ」
「あら、神人は4百歳を越えてから降りると、聞いたことがあるんだけど」
うっ……ゲームでもそういう設定だったけど、ここでもそうなのか。さすが姐さん痛いところを突いてくる!
「それは~~~~……」
いかん、目が泳ぐ~。こっち見ないで~。
姐さん、そんなに近づいて見つめないで~。
「もしかして落ちちゃって、天空の島が降りてくるまで戻れないの?」
へ? 降りてくる?
「島の高度が変化するのは、確か3百年後よね?」
よく判らないけど、その話のったっ!
ばれちゃったから、仕方なく認める振りでっ!
「……はい」
「なあシルヴィア、落ちたとか、島が降りてくるとかって何なんだ?」
いい質問だランティスのおじさん。私も知りたい。
「里の長老に聞いたことがあるのよ。なんでも神人の住んでる天空の島は、5百年周期で高さが変わるのよ。さすがに空を飛べる神人も、一番低い時にじゃないと途中で体力が尽きて届かないって話よ」
ほほう、そうなのか。
「それでね、神人の成人は4百歳で、そうなれば地上に降りるのも自由なんだけど、カリンちゃんはまだ2百歳だから、本当ならこここ居るはずないの。だから、多分だけど事故で落ちちゃったって事になるのかな?」
なんて理論的な説明!
「つまり、このお嬢ちゃんは、帰りたくても帰れない、家なき娘って所か!」
うっ、微妙に違うけど、当たってるよ。
「しかし、神人の事なんて、よく知ってるなあ」
うんうん、それは私も思った!
「私は会った事がないないけど、里の長老が若いころ神人と知り合ってね。その時に色々と教えてもらったそうよ」
余計なことをしてくれたな、ちょーろ~~~~~~~~っ!
「じゃあ、カリンの嬢ちゃんはこれからどうするつもりなんだ?」
そのために商隊を待ってたのさっ。
「せっかくだから、色んな所に行こうかと思ってる」
「それじゃあ、よかったらギルド登録して、うちのチームに入らないか?」
……は?
「何を言ってるのランティス! カリンちゃんはまだ子供よ。冒険者なんて危険な仕事に誘うなんて!」
いや、ギルドに行こうとは思ってたけど、入るかは決めてなかったなぁ。
「だが、国を越えるなら、どこかのギルドに入った方が良いだろ?」
どういうこと?
「どうして、入った方がいいの?」
「ああ、そりゃぁな、普通の人間は国を越えるのに許可がいるんだ。だが、ギルドメンバーなら、その証さえ見せれば許可が無くっても通してもらえるんだ」
パスポートみたいな物なのかな?
「昔、国が乱立していた時に、民は兵士として必要だったの。それで、勝手に他の国へ逃げ出さないように、出入りの管理はとても厳しかったそうよ。今ではそんなことも無いんだけど、それでも国を出るためには手続きが必要なの。でも、商人や職人、そして冒険者は、仕事の為に他の国へ行くことも多いわ。そのたびに手続きをするのは手間のかかる事だから、ギルドの働きかけで、何かあった時の処理をギルドで行う代わりに、ギルドメンバーとしての身分が保証されていれば、手続きをしなくても通れるようにしてもらったの」
やっぱり姐さんだ。よく判った!
理由は判ったけどね。
「ギルドに入るとしても……どうしてチームに入らないといけないの?」
「そんなもん、同時に複数の相手にエンチャントが出来る様なやつを、ほっとく訳がねえだろ?」
あー、納得。
「だからって、まだこんなに小さい子なのよ」
「ちっこくてもよう。後方でエンチャントとヒールするだけだぜ」
「後ろから奇襲を受けたらどうするのよっ!」
いやまあ、一応は1人でも戦えるんだけどね。
「それに、この嬢ちゃん。まだなんか隠し玉が有る気がすんだよなぁ」
おじさん鋭いっ!
「隠し玉とか、あなたの勘だけでしょ!」
「それに2百歳越えてんなら、お前より年上なんだぞ」
「年上でも、こんなに小さくて可愛いのよっ!」
姐さんがそう言いながら、ひざを着いてわたしを抱きしめた。
おっと、姐さん。そのポジションはとても弾力のある物が顔に……い、息が……く・る・し・い……
ふう、天国という名の地獄を見たっ!
ふわふわのもにゅもにゅで窒息死とか、なんて拷問なんだっ!
はははっ、どうせ、わたしにはあんなに胸ないよ。
この体でも、現実でもなっ!
……落ち着こう、うん。
え? チームの勧誘はどうなった?
カーネリア(商隊のリーダーの人ね)さんが、何かお礼がしたいって来たから、う~や~む~や~。ふふっ、逃げた。
お礼は、商隊に同行させてもらう事にしました。無料で!
同行だけだと気がすまないと言うことだったので、ソアラ王国の地図を貰ったよ~ん。
エンチャントして、ヒールを使っただけで、地図が無料!……うめえっ!
その貰った地図を見て判ったことが、MEOと同じ所に知ってる街や都はあった。だけど、知らない町や村も多かった。
まあゲーム内だと、村って3ヶ所位しかなかったしなあ。現実にそんなに少ないはず無いもんねぇ。
それで確認してみたんだけど、ソアラ王国は大陸の東にあって、ローレル王国がその北西、アコード王国が南西に有るってことは判ったよ。書いてあるんだよ『至ローレル王国』とか『至アコード王国』ってね。
さらに驚いたことが一つっ! この地図……データブックに登録できた。
出来たら楽だなぁ、なんて考えながらデータブックを出して、ゲームのときみたいに入力してみたら、出来ちゃった♪
これで脳内データから見放題だね。だけど実際行ったところ意外は、ちょっと精度が低いんだよね。まあ、この村の周りくらいしか、行ったこと無いけどね。
商隊の出発は2日後になるって話。
それまでは、シンシアちゃんとの別れの時を楽しまねば!
待っててね、シンシアちゃ~ん。
「っくしゅん」
「なんだいシンシア、風邪かい?」
「ううん。なんだか鼻がムズムズして……」
「代わりなんて居ないんだから、気をつけとくれよ」
「は~い」
連続で短くてすいません。