第3話 目が覚めてもそこは知らない天井だった
目が覚めてもそこは知らない天井だった。
うんごめん。前々回と似たような言い回しだね。でも仕方ないのね。本当にそんな感想しか浮かばないんだよ。
あーーー。目が覚めたら自分の部屋だったとか、ちょっとだけど期待してたんだよ。
今何時だろ?そんな事を考えたら、脳内にシステム時計が浮かび上がった。おー便利。
朝の五時か~。
いやまて、この時計合ってんのか? うん、合ってるのかなんて判る訳ないね。
耳を澄ますとニワトリの鳴き声が聞こえる。
朝なのは間違いなさそうだ。
昨日おばさんが、朝ごはんができたら呼ぶって言ってたし、それまで色々とチェックしてみよっか。
昨日チェックしなかった、サブスキルが使えるかどうかだね。
MEOには職業に関するメインスキル、全職共通のスキル、クエストで最大2種類を覚える事のできるサブスキルがある。メインと共通スキルは昨日のうちに、あるのは確認したからおーけー。
そう言えば情報の転写って出来るのかな?
これはスキルってわけじゃなくて、データブックの内容をコピーして、それを人にあげたり、貰ったりできる能力なんだけど……そもそもデータブックを持ってる人っているのかな?
確認の方法すら思いつかないから、後回しでいっか。
サブスキルに戻ろう。これは野営で便利になるスキルや、モンスターがドロップしない素材を集める収集や採掘、素材を加工とか出来たり、料理が作れるなんてのもあって、武器や防具それにアクセサリーの製造なんかも出来たりする。
わたしは、原石から宝石へのカッティングじゃなくて精錬と、さらにそれから魔力石や属性石なんかに出来る『錬金』っていうスキル。
何故、精錬て言うのか? 原石にスキルを使うと、なんか融けて不純物と宝石の部分に分かれるんだよね。そんで両方とも球体になる。だから精錬。
それで魔力石って言うのが、ステータスにボーナスが付く魔力のかかった宝石で、防具やアクセサリーに付けると効果が出る。
スキルの熟練度が高いほどボーナスが多くなって。熟練度(10)なら最高で+10も付くらしい。それぞれに決まった宝石があって……
体力=サファイア(青)・回復力(HP)=ターコイズ(水色)
魔力=アメシスト(紫)・MP回復力=タンザナイト(青紫)
力=珊瑚(赤)・知能=ロードライト・ガーネット柘榴石って言われてるやつ(赤紫)
敏捷性=エメラルド(緑)・器用度=ぺリドット(黄緑)・強靭性=ジェダイト(黄色)
現実では同じ名前でも何種類かの色が存在するやつもあるけど、ゲームではこんな感じに色が決まってるんだよね。
属性石は、武器に付ける事によって、特定の属性を付与した時の、効果時間とか、属性攻撃力をアップするんだ。アップ率は熟練度×2%って計算式になる。ただしこれは最大値で、低いときは1%のやつが出来る事もある。やっぱり属性によって宝石は決まってて……
火=ルビー(赤)・土=トパーズ(黄色)
風=トルマリン(緑)・水=アクアマリン(水色)
光=ダイヤモンド(透明)・闇=ブラックダイヤモンド(黒)
そして、魔力石に加工すると長い方が2センチくらいのFF(ファイ○ル・ファ○タジー)のクリスタルみたいな長方形で狭い方がとがった形になる。属性石は、ぱっと見は直径2センチくらいの球体っぽいけど、よく見ると数え切れないくらいの多面体、ミラーボールみたいな感じになる。
それを、アクセサリーは製造の時に一緒に作って、武器や防具は専用の爪の付いたへこんだ部分に取り付ける。ただし、一度付けると爪が閉じて外せなくなる。ちなみに、NPC売りの武器防具にはへこみが無くて、PCが作った武器防具だけに1個分のへこみが出きる不思議仕様だったりする。
もう一つが、そのものずばりのアクセサリー製作スキル。
貴金属と魔力石を使って、ネックレス・ブレスレット・指輪を作れるスキルで、魔力石のボーナスによって使える貴金属の種類が変わってくるって感じだね。
ん~っと、+4までは銅、+6までが銀、+8までが金、+9がアダマンタイトで+10がミスリルになる。
わたしは錬金も製作も7なんで、魔力石は+7までで、貴金属は金までが使える。
と言う事で…
ファーストステップ、原石から宝石にする
セカンドステップ、宝石から魔力石と属性石を作る
サードステップ、出来た魔力石と貴金属で、なんかアクセサリーを作るっ!
以上の事をやってみますよ。
ウエストポーチから目に付いた珊瑚の原石を取り出す。この世界では珊瑚も採掘で手に入れる。きっと取れる場所は昔海だったんだと納得するしかない。
珊瑚を手に持ってと、『錬金』……よし、不純物が分かれて、子供用のゴムボール大の珊瑚になった。成功だね。これくらいの大きさだったら魔力石が3個くらい作れるかな?
そのまま続けて、魔力石を作る。『錬金』……よしよし、珊瑚からクリスタルの形状になって分離する、元の珊瑚がその分小さくなる。そのまま続けていくと合計3個できた。
いったんポーチに仕舞って、属性石用の宝石がないか見てみる。
「たしか、前に錬金したときの残りがあったと思うんだけどな~」
あったあった。
属性石が1個取れそうな大きさのトパーズがあった。
『錬金』……うん、ミラーボールみたいな多面体になった。属性石も出来た。
それを仕舞って、さっき作った魔力石を一個出して、鑑定する。あっ、自分が作れる物は鑑定できるんだよ。自分が作った物がどんな能力か判らないとか、ありえないでしょ?
「あれれ?」
おかしいな、熟練度7だから最大+7ボーナスなんだけど……+10って見えるんだけど?
悩んでも仕方ない。これまで色々と違う事があったじゃないか!!
とにかく実験だよ!
と言う事で、いつかは使えるようになりたいなって思って、取っておいたミスリルのインゴットを取り出す。
ミスリルは魔力との相性がよくて、ミスリル製の武器ならそれだけで、属性の効果に10%のボーナスが付く……らしい。
いや、ミスリル製の武器は未実装だったんだよっ!
防具ならあったんだよ! 付けた魔力石の性能にかかわらずそのステータスに+2の追加ボーナスが付くらしい。うん、エンチャンターだったから、金属鎧とか着れなかったんだよね。
それよりもアクセサリーだ!
ミスリルか~……白金色なんだけど、なぜか紫色のオーラみたいなのが漂ってるんだよね。だから遠目で見ると何ともいえない色に見える。せっかくだからネックレスにしてみよう。
ミスリルと珊瑚の魔力石をもってと、ネックレスをイメージしながらっと『アクセサリー製作』……あれ? 反応しないよ。
アクセサリー製作が機能しないのかな?
でも、今のところ一覧にあるスキルは発動してるよね? 組み合わせが悪いのかな?
とりあえず、手持ちの貴金属で試してみるしかないよね。
金……だめ。
銀……出来たよこれっ!
えーっと、どういうことなの?
鑑定能力がおかしいのかな? 出来たネックレスを改めて鑑定してみる……あれぇ?
力のボーナスが+10ある、そして何故か体力のボーナスが+2あるよ?
なんだこれ?
ん~~~~~~~~~~~~~~
装備してみればいいじゃん!!
まずは今のステータスを確認。
体力6・回復力(HP)5・魔力16・回復力(MP)14・力3・知能17・敏捷性7・器用度8・強靭性7
昨日、お風呂に入ったときにアクセサリーも外したから、素のステータスだね。
問題のネックレスを装備してみる……
体力6+2・回復力(HP)5・魔力16・回復力(MP)14・力3+10・知能17・敏捷性7・器用度8・強靭性7
ふえとるがなっ!!
………おーけー、おーけー、落ち着けわたし。驚く事なんて、昨日から幾らでもあったじゃないか!
これ以上の事はここじゃあ判らない。ご飯を食べたらちょっとモンスターを狩って実験するしかないね。と言う事で後回しっ!
いい匂いも漂ってきたし、そろそろご飯だろう。
パジャマのままじゃあれだから、着替える事にしよう。うん。
着替えが終ってちょっと経ったら、シンシアちゃんが起こしにきてくれた。
相手の方が見た目じゃ年上なんだから、ちゃん付けはおかしいだと? そんな事は関係ない、生身もキャラ年齢も年上だ!!
「あ、お客さん早いですね。あと10分くらいで朝ごはんの準備ができますよ」
そう言ってシンシアちゃんは戻っていった。多分寝てたら、起きて準備をする時間を考えて10分前なんだろう。
てか、10分って言い方をするって事はだ……時間の数え方はわたしの感覚と同じなのかもしれない。しかも正確に10分と言ったから、何処かに時計が置いてある可能性があるってことだよ!!
うん、降りたら聞いてみよう。
そう言えば顔も洗ってないよね?
と言う事で、ユニットバスへ向かい。洗顔と歯磨きをした。
歯ブラシはどうしたかって? アメニティグッズの中に混じってた。
違和感が凄いけど、便利だからおっけぇ♪
顔を洗ったり歯を磨いていたらいい時間になったので、食堂に降りてきたわたし。
時計があった。えっとね、宿屋の出口のドアの上の壁にアナログ時計が掛けてあった。
そりゃね、昨日はそんなに見てなかったけど、気づけよわたしっ!
てか秒針まであるって、相変わらずアンバランスな世界だ。
よし、とにかく脳内時計との時間差を見てみよう。
こっち6時を回ったところ、壁の時計、同じ時間。えっと、秒のテンポも同じっぽい。つまり、この脳内時計は使える? いや、安心するのはまだ早い。今夜また時間を確認して、狂いが無ければ使えるって事にしよう。
それにしても宿屋の朝食なのに、若い男の人が結構いるなあ。宿泊客ってわたしだけじゃなかったっけ?
「おやカリンちゃん、空いてる席に座っとくれよ」
おばさんがつっ立ってるわたしに気づいて、座るように言ってきた。
じゃあ、適当に座りますか。
朝食の皿を持ってきたので、この疑問をぶつけてみる。
「若い男の人が多いですね。何か理由があるんですか?」
なぜか、きょとんとした表情をする。
「ああっそうかっ!カリンちゃんが知ってるわけないんだね」
どういうこと?
「この国じゃあね、成人すると長男以外の男は家を出なきゃいけないんだよ。どっかの商家とか工房に弟子入りできりゃいいけど、そうじゃない男の方が多いからね。村で作った大きな下宿があってねぇ、そこに寝泊りするんだよ。そん中の料理が下手なのがうちに食べに来るのさ」
そんな説明をして、すぐにまた空いた皿を下げたり、新しく入って来た人に料理を出したりと動き回ってる。忙しい時間に邪魔をしちゃった。今度から気をつける事にしよう。
それにしても下宿って言ったから、料理も出るかと思ったのに自炊なのか。
朝だし仕事前で時間が無いのか、夜と比べておばさんもお客も結構せわしない。
わたしは食べ終わっても、特に急いでやる事も無いので、の~んびりとご飯を食べることにする。
メニューは色々な野菜を細かく刻んだ物が入ったさっぱり味のスープ、パンが2個に焼いたソーセージが2本。このパンがかなり美味しい。焼きたてって言うのもあるけど、それだけじゃない美味しさだ。ゲームにも満腹度ってのがあって、定期的に料理を食べてたけど、平凡な味でとにかく空腹で動けなくならない為に食べてた。タイミング悪くゲーム内で食べた直後に、現実でご飯になると満腹感が残って食べられなくなるって弊害があって、わざとそんな味にしてたらしい。
ゲーム会社も大変だよね。
全てを食べ終わると、お腹がくるしい。神人は少食の設定なうえ肉体年齢13なので、軽めのはずの朝食がきつい。昨日はかなりお腹が減ってたから、気が付かなかったよ。
だったら残せ? ご飯を無駄にすんなっ!
うー、正直言って動くと逆流しそう……きつい。
そんなわたしの様子に気づいたのか、おばさんが何かお茶をもって来てこう言った。
「ちょっと多かったかい? うちに来るのは大飯ぐらいばっかりだからカリンちゃんには多過ぎたかもねぇ。これ飲みなよ。消化をよくするお茶だよ」
お茶も見たくないなんて考えてごめんなさい。
「ありがとうございます」
「ああ、落ち着くまでそこでゆっくりしなよ」
気遣いが嬉しい。
「助かります」
おばさんは、テーブルに残った皿の片付けに戻っていった。
ピークは過ぎたみたいで、入ってくる人は殆んどいない。テーブルも空きの方が増えてきた。
そんな様子を眺めながら、お茶をちびちびと飲む。いや、これくらいのペースじゃないと戻しそうでね。それでも飲むたびにお腹が軽くなってくのが判る。これ凄いよっ!
お茶の効果にびっくりしながら、次からは食べ過ぎに注意だね。なんて事を反省した。ゲームだと満腹度100%で食べれなくなるからその辺りが判んなかったんだよ。
これには裏話があって、お腹の減る速度や一度に食べれる量には種族によって違うって検証結果がある。成長速度の速い種族ほど、満腹になるまで必要な食事の量が多くて、しかも減るのが早い。人間と獣人は満腹まで食べても1日3食必要で、エルフとドワーフは腹八分目まで食べて1日3食、竜人は満腹まで食べれば1日2食、神人は1日2食なんだけど満腹まで食べちゃうと、次の食事の時間になっても満腹度が50%も残ってる。
それを考慮に入れると、晩御飯を満足感のあるくらいまで食べたんだから、今朝は本当に軽く出よかったんだね。
そんな事を考えてたら、お店に残ってる人もわたし以外は2人になってた。30代くらいの男の人とドワーフだ。ちなみにドワーフの設定で女の人はよほどの事がないと外に出ないので、PCとしても使えない事になってる。なので外で見かけるドワーフはイコール男なのであ~る。ゲームの中で確認できた女のドワーフはたった一人で、しかもドア越しの声だけだった。なので、わたしがドワーフと言ったら、特に注釈のない限りは男だ。
多分二人ともそんなに急ぐ必要がない仕事なんだろう。どの村にでもドワーフがいて鍛冶をしていたから、あの人もそうなんだと思う。人間の方は何だろね?
「お客さん、ちょっといいですか?」
シンシアちゃんが遠慮がちに声を掛けてきた。まだちょっとお腹が苦しいから、それを見て声を掛け辛かったのかもね。
というか、いつまでお客さんて呼ぶんだ?
「何ですか?」
「洗濯物が出てなかったんですけど、今日は必要ないんですか?」
へ? 洗濯のサービスまであるのかっ?!
「えーと、出すってどこに?」
そう聞くと、シンシアちゃんってば、両手で口を押さえて目を見開いて驚いてた。その仕草は可愛すぎるぞおぃっ! 元々、ウェーブがかった肩まである赤って言うよりピンクに近い色の髪で青い瞳をしてて、うっすらそばかすが有って丸めで愛嬌のある顔をしてるんだ。
そんな仕草を見せられたら、お姉さん抱きしめてぐりぐりしちゃうぞ!
……なんとか理性が勝った。 ふぅ。
「ごめんなさいっ。お客さんって神人だからそういうの知らないんですよねっ。連泊のお客さんはベッドに洗って欲しい衣類を置いてもらえば、洗濯するサービスがあるんです」
謝るときに、上半身を90度まで曲げちゃうのがまた可愛い。などと、また欲望と理性のはざ間での戦いに夢中になって、あとの説明を危うく聞きそびれるところだったよっ。
う~ん……洗濯物はポーチに入れちゃったし、ここで下着を取り出すのはいくらなんでも恥ずかしい。まだお腹が重いから部屋に上がるのは嫌だ。そんなに無いし今日はいっか。
「そんなに無いので、今日はいいですよ」
「そうですか、わかりました」
そうだ、いつまでもお客さんとか呼ばれたくないよね。
「あの、カリンって呼んでもらえますか?」
わたしの返事を聞いて、厨房か裏口に続いてそうなドアに向かおうとしたシンシアちゃんに、そうお願いしてみた。
振り返ったシンシアちゃんの顔がまた可愛いの何の!
こうね、『え! いいのかな?』とか『そんな…お客さんの名前を呼び捨てなんてっ』とか、こう悩んでそうな顔なんだってば!
「えっと、じゃあ……カリン…ちゃん…で…いい…ですか?」
悩みながら答えるシンシアちゃん、可愛い!!
ん? ちょっとまて! ブルータス!お前もか!
ああ、ごめん。正直スマンカッタ。
シンシアちゃんにもちゃん付けで呼ばれるのか……あ~あ~、この見た目がにくいね。
こうなったら!
「わたしも、シンシアちゃんって呼んでいいかな?」
首を傾げながら聞いてみたら、すっごいにこやかに頷いてくれた。
おおぅ、そんなに喜ばないでくれ~。報復の気持ちで、ちゃん付けで呼ぼうとした自分の心の汚さを痛感してしまう。君の笑顔がまぶし過ぎるんだっ!
そこまで喜ばれると、訂正も出来やしない。
そんな感じで困っていたら、まだ残ってた男とドワーフがニヤニヤしながらわたし達を見てるのに気がついた、おいお前ら! 絶対わたしの考えてた事わかってんだろ?!
くうぅぅぅぅ……目が合ったドワーフの野郎、意地の悪い目つきをしながら左手をこぶしにして親指を立ててビシィィィッっと、わたしに突き出してきた。『グッジョブ』
しかも突き出した瞬間、ウィンクまでしやがった!
「カリンちゃん、どうかしたの?」
怒りと羞恥で身もだえしてたら、シンシアちゃんがわたしを心配してくれた。その仕草がまたっ!
こう首をだ、右に傾げて両方の手のひらを交差させるように前で握って、右の頬にペタッとくっつけてる、しかもそんな仕草を心配そうに眉を寄せながらするんだよっ!!
あーもぉ…………か・わ・い・いぃぃ!!
気がついたら椅子に座ったまま、シンシアちゃんを抱きしめてた。
いきなりの事で驚いてるのが誰にだって判るくらい、手をあたふたと彷徨わせてるシンシアちゃんが、いっそう可愛くて抱きしめる手の力がさらに強くなったのは言うまでない。
彼女からは見えないだろうけど、残ってたうちの男の人が、鼻の辺りを右手で抑えながら、『いいもん見せてもらったぜっ!』って感じの表情で、左手でグッジョブしやがった。
そんな男を見ながら、わたしは内心『なんて事をするんだよわたし、言い訳を考えるの面倒じゃんかよ』てなことを考えてた。はいそこっ、相手に悪いとか、いきなりこんな事して恥ずかしいとか、考えるべきじゃないのか? とか言わない!
こんな可愛い娘を抱きしめるのに躊躇する女子高生がいると思うか? いいや居ないね!
このままだと視線が痛いから、とにかくお礼を言ってごまかす。
「うん、シンシアちゃん心配してくれてありがとう。わたしは大丈夫だよ」
そう言うと、やっと落ち着いたのか手を振り回すのをやっと止めた。
「えっと、その、そろそろ放して貰えると助かりますぅ」
この世界の女の子は、女の子同士のこういう抱きつき合いとかあまりやんないのか?
普通ここは、おずおずと抱きしめ返す所なんだけどなぁ。
「急にごめんね、シンシアちゃんみたいに可愛い娘に心配してもらえて嬉しくって」
もうちょっと反応が見たかったから、離れながらそんなことを言ってみたら、シンシアちゃん、真っ赤になって固まってるよっ。
おいそこのドワーフ。頷きながら何をメモしてる? 口説きの参考にはならないぞ。今のこれは、同姓補正が入ってるからなんだぞ!
それよりもだ……いまだに固まってるシンシアちゃんをどうするかだね。どうしたもんか?
いまだにメモを取ってるドワーフを睨みながら、途方に暮れるわたしなのであった。 ちゃんちゃん♪
『文字数(空白・改行除く):7,777文字』←なんかいい事がありそうな数字w
そして1話毎が、どんどん長くなっていく……