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終わり

  『ソロだって余裕』そんな風に考えていた時期がわたしにもありました。




「神人の成長遅すぎじゃーっ! エンチャンター弱すぎなんですけどっ!」


 はぁはぁはぁ……息が切れた。


 実装されている中で一番大きい街、ソアラ王国の王都ソランの中心で叫んでみた。


 はぁはぁはぁ……


「何を叫んでるんだよカリン。そんなマゾ種族のマゾ職なんかでやってるのなんて、お前くらいだぞ?」


 通りがかった知り合いが、突っ込みしやがってくれたりする。


 「うっさいわっ」


 ええ、そうなんです。神人のエンチャンターと言うのは、このゲームの中で一番マゾい組み合わせでした。


 初めの頃はもう何人かいたんですよ、この組み合わせのPCプレイヤーキャラクター


 いろんな人とパーティを組んで、狩りやクエストをしました。ですけどね、置いて行かれるんです。ええ、みんな先にレベルがあがって、すぐに組めなくなるんですよ。


 神人の成長の遅さったら凄かったんです。有志の人たちの検証によると、人間の成長速度を100としたらですね……


 人間=100、獣人=95、ドワーフ=85、エルフ=75、竜人=50、神人=15と、こうなるんです。もちろん小さい方が遅いんだってばっ!


 人間の約7倍もの時間が掛かるんだってばっ!!


 人体への影響に配慮して、なんて事でVRマシンの使用は1に4時間が限度になってたリする。そんな制限がある中で7倍の速度差。詰んだね、あーそうさ、詰んだよ。


 1ヶ月もすると、組める人がいなくなっちゃった。 テヘッ


 それからもう、ずっとソロです。


 しかもね……エンチャンターってばソロ再弱なんですよ。ははっ、はははっ。笑いたきゃ笑えよっ!!


 いやね、攻撃魔法がある職業じゃないですか、ソロは魔法で簡単だよね。な~んて考えてたんだけどさ、もうね、弱いのよ、全種族中一番力の弱い神人の短剣の通常攻撃より弱いって何さっ?!


 でもね、せっかくの経験値100倍じゃない?


 半年間のCβテストの間に、謎の熟練度限界突破を見てみたかったんですよ。うん。


 頑張りましたよ。モンスターの弱点属性を付与した短剣と、エレメントスフィア(これが攻撃魔法なんだ)でね。チクチクと攻撃を続けて5ヶ月です。


 あっ、エレメントスフィアってのはね、自分の頭の上に任意の属性の球を浮かせて念じると、目標に向かって魔力の切れるまで属性攻撃を自動でしてくれるんですよ。あきれるぐらい弱いんだけどねー。


 そうやって、一人でも倒せるモンスターをチクチクとね。うん、チクチクと……


 そうやって5ヶ月、やっとエレメントスフィアの熟練度が10の98%まできたんだよー。 ブイッ


 だけど、今日でCβテストは終っちゃうんだけどね。


 さっきまで狩りをしてて、HPポーションとMPポーションが切れたから、補給に王都へ戻ってきた所だったんだよ。つい叫びたくもなるよね? ねっ?


 残り時間も少なくなってきたから、最後にもうひと踏ん張り頑張りますよっと。







 と言う事で、やって来ました王都の北西にある森の中。ここにはエンチャンターにとっては美味しい『狂った光の妖精』がいるんですよ。


 このモンスターは名前に『光』が入っているので丸判りの光属性モンスター。見た目はピーターパンのティンカーベルみたいな羽の生えた小人なんだけど、何故か飛びません!ちょこちょこ走って攻撃してきます。萌え萌えじゃのう。


 エンチャンターの闇属性スキルに、地上のモンスターを足止めするバインドと言うのが有ってね。自分を中心に半径5メートル以内の好きな地面に、直径1メートルくらいの範囲で黒い触手? が生えてきてモンスターを拘束しちゃう、『それなんてエ○ゲ』な物だったりする。


 光と闇はお互い攻撃すると大ダメージになって、妨害系のスキルの効果時間も延びたりする。


 つまりだっ!


 武器に闇の付与をして通常攻撃、ついでにエレメントスフィア(闇)でチクチクっと、さらにドンッ! で、バインド拘束。わたしはウマーってなわけだったるするんですよ。 はっはっはっ、うまーいぞーっ!


 脳内(正式には頭の中に浮かび上がるメッセージウィンドウって事なんだけど、念どうだから『脳内』)にテスト終了10分前のアナウンスが流れても、ぎりぎりまで頑張っちゃうよ!


 さらに5分前の放送も流れた……だめだったかな、なんて考え始めた頃。


 脳内に流れる熟練度アップの『ピロリ~ン』ってな感じのメロディ。


 きた? 来ちゃったりした? エレメントスフィア上がったんじゃないのこれ?


 残りのモンスターを倒してから、スキルを確認するわたし。


 脳内に流れるスキルの情報…………『エレメントスフィア 熟練度(11) 任意の属性を込めた球を作り出し、継続的な属性攻撃をする。 必要MP(100) 効果時間(300)』


 …………きたよこれっ!! きちゃったよこれっ!!


「やったどーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」


 大きく両手を空に突き出して、これ以上は出ないってくらいの声量で叫んじゃったりしましたよっ!


「いかんいかん、せっかくだから使用感を確かめないとね」ニパッ


 よし、エレメントスフィア(闇)!!


 仕切るを発動したとたん脳内に流れる運営からのメッセージ。


『半年間のクローズド・ベータ・テストに、ご協力ありがとうございました。ただいまよりサーバーをシャットダウンします。速やかにログアウトを行ってください』


「へっ? ちょっと待って、せめて一匹倒してからっ!」


 とにかく急いで、狂った光の妖精ちゃんをさがしますよ。


 いない、いないったらいない。どうしてこんなときに見つからないのっ!


 そして見つからないまま、わたしの視界はブラックアウトしていった。


「せめて一回ぐらい。使いたかったよーーーーーーっ!」


 あっ! 意識もブラックアウト……

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