気球乗りの夢
掲載日:2026/05/05
草原のなかで 虚しい空へ昇ってゆく
気球の華やかな ラタンと熱い火種と
風船のように膨らむ 布地の軽さ。
ながいながい夜のすみで眼をさまして
幼い子のように泣いている。
わたしは遠い国の夢をみていたようだ。
夢のあとに残る さみしい秋の香りと
枕元から聞こえる あなたの寝息。
わたしは前世から
ずっとあなたに憧れている。
朝焼けのなかを昇ってゆく
あなたの気球を貸してと。
ながれる雲とぼやけた水平線…
そうしたものすべてを越えてゆく
その魂を貸してと。
海原のなかで アフリカの砂浜へ漕いでゆく
小舟のふるびた 釣り網とタールの匂いと
太陽にさわれそうな 櫂の重さ。
またあたらしい夢をみていた。




