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妖狩:第二部  作者: 定春
第二部:北編
9/10

EPISODE64「血盟」

風雅の妻・緋月 はなは同じ人造人間ホムンクルスの椛と親交を深めるためにアピールをするが、まったく相手にされなかった。だが「なかよし作戦」を試みて再度アピールを繰り返したら、クレーンゲームを一緒にやることに…


 花が見た椛の姿はどこか淋しげでクレーンゲームの景品のくまのぬいぐるみをじっと見ていた。

花はそのぬいぐるみを取ってあげようと立ち上がるが、クレーンゲームなど大正生まれの彼女には未知のものであり勝手が分からぬ代物であった。

呆れた椛はこっそり百円玉を投入口に入れてゲームを始めた。

仕方なく入れてくれたと捉えた方がよいのか、その対応はいつもの邪険に扱うようなものではなかった。

「いい、こういうゲームはね、お金を入れてこうやって動かすのよ!」

「へぇ~おもしろーい!」

そんな花の笑顔を見て少し満更でもなさそうだった。だがそんな自分に気づいたのか、すぐに首を横に振って浮かれた気分を消し飛ばす。

クレーンでぬいぐるみを掴むところまで成功し、持ち上がろうとした時、まるでわざとかのようにクレーンが緩み、ぬいぐるみが元の位置に戻ってしまった。

「は?何よこの台あーしにケンカ売ってんの!?」

「椛ちゃん落ち着いて!」

椛はイラつき台を掴んで揺らしまくる、花は必死で止めていた時であった。

二人の背後に黒い装束を纏った五人組が現れた。

「見つけたぞ、“支配”の厄災とその従者!」

「あ゙ぁ゙?誰が従者よ!」

二人が振り返った先に居たのは妖狩の新部隊“律”であった。

「俺は“律”、火の鳥隊の隊長・紅 悠介。信頼する財団のため、厄災を滅ぼす!」

「あんたね、色々と誤解していると思うけど財団は厄災の排除なんて求めてないわよ。厄災を“利用”したいの。どうせあんた達も財団にとっては使い捨ての駒に過ぎないのよ!」

その一言に悠介の体がわなわなと震え始めた。

「財団は俺を地獄から救い出してくれたんだ…財団HANDを悪く言うのは許さない!!」

悠介は手に持った剣に炎を纏わせて二人に突撃を仕掛けた。


 一方で花を探しに向かった風雅と暦は走りながら会話を繰り広げていた。

「そういえばさ、何で椛ちゃんは花のことを邪険に扱うんだ?今更聞くけどさ。」

「それはのぉ…椛は赫夜によって人生を変えられてしまったからなのじゃ。」


椛は鎌倉の世に生まれ、貧しい生活をして日々を食いつないでいた。服はボロく、痩せこけ、髪はボサボサでハエがたかっていた。

都では貴族たちはきらびやかな着物を纏い、歌を詠み、遊び、肉欲に溺れる。まるで桃源郷のようなものだと幼い椛は考えていた。

そんなある日だ。山に山菜を採りに行った時、白く輝く霊体にであった。名は赫夜という。

赫夜は願望を一つ叶えてやろうと椛に言い、まんまとその誘いに乗ってしまった椛は「都で平和に暮らしたい。」

と言うと、赫夜は椛の頭に手をかざし服を貴族が着るものに変え、化粧も施した。

「なら私の名前を使うが良い。皆がお前に夢中になるであろう…。」

初対面の霊に命じられ、都に降りた瞬間、椛の美貌で都の人間はたちまち夢中になり、男たちから言い寄られる程にもなった。帝に嫁ぎ、その美貌は国を傾けてしまった。後に椛には一国傾城という名前が付けられた。


時の陰陽師が椛に会い、彼女は自らを赫夜と名乗るとその場で仲間の陰陽師により拘束され、そのまま処刑されてしまった。

「当時の赫夜は霊体となって陰陽師たちから逃げ延び、椛に赫夜が取り憑いたと思ったんじゃろうな…。」

「そんなことが…。恨むのも無理ないな…でも花は悪くないんだよ。」

「それは椛も薄々感じ取るよ。姫に言い過ぎたとわしに相談したこともあった。気まずさで会話がままならんだけなんじゃ。」

「そうか…って何でお前走るのやめて俺の上に乗ってんだ!!」


 そのころ二人は炎を避けつつ、店から飛び出した。しかし術式を持たない妖狩エージェントの部下たちが弓矢で攻撃し、刀を携えて襲い掛かる。

椛は途中で道路の亀裂に足が引っかかってこけてしまった。

「椛ちゃん!」

そして銀の矢が椛めがけて放たれる。死ぬ覚悟を決め、目をつぶった。


           グサッ!


そんな音が聞こえ、痛みに悶え苦しむかと思ったが、椛には何の痛みもなかった。ゆっくり目を開けると、自分の目の前に誰かが遮るように立っていた。

「…!、花っ!!」

目の前には花が手を広げて椛を庇い、左肩を矢によって貫かれてたいた。

「あんた何で…。」

「友達…だから!風雅くんと凱くんが言ってた…友達も仲間も命を掛けて互いを守るんだって…!だから私もあなたを守りたかったの!」

左肩から血がダラダラと流れ、ついには痛みに耐えきれず膝をついてしまった。

「厄災の方は虫の息だ。今の内に始末する!」

『御意!』

悠介は手に火球を出し、残りの部下たちは弓矢を花に向ける。

「灼熱に飲まれるがいい…“支配”の厄災!撃て!!」

悠介の合図で矢を放ち、さらに火球まで放たれた。

その時だった。

今度は椛が花の前に立ち、“律”たちの攻撃を全てその身に受けた。

「椛ちゃん!」

「うぉぉらぁ!!」

椛はその身に受けた攻撃を全て妖力のレーザーに変換して相手へ反射した。

「あーしは…赫夜に人生をめちゃくちゃにされた…あんたに宿ってるって知った時は怒りしか湧かなかった…今更だけど…恨む相手はあんたじゃない!」


         ー「“反射リフレクション”」ー


相手の攻撃を身を挺して受けることでその攻撃を妖力に変換し、そのまま相手へと返す能力。しかし直接体に受けるので反動がとてつもない威力なのだ。まさに“巨塔ルーク”の名にふさわしい術式である。


椛が倒れ込んでしまった隙に悠介は刃を地面に擦り、火花を散らしながらこちらへと歩み寄ってくる。

「一度はどんな術式かと思ったが、体にそれだけの負担が掛かれば一日一発ということだろう…。死ぬがいい!」


「おぉらぁぁ!!」

悠介の背後から風雅が現れ、拳を構えていた。

一瞬で気づいた悠介は剣で対抗する。

「お前らか…花たちを傷つけたのは…」

「またお前か…!」

「そりゃお前たちしかいねぇか…全員この場でぶち殺してやる…!!!!」

「このままお前とやり合えばここら一帯が消える…ここは撤退だ!」

5人は黒い布に身を包んでその場から撤退した。

「待ちやがれぇぇぇ!!」

商店街に風雅の怒号が響き渡る。

「私は大丈夫だよ風雅くん!」

暦は二人に向けて妖力を送り、たちまち傷が塞がった。

椛は照れくさそうに花を見る。

「その…今まで怒ってごめんなさい…あーし…気まずくて…。」

「もーそんなの大丈夫だって!今日から私たちは友達、はいこれで今までのはチャラよ!コレでいいんでしょ風雅くん?凱くんとの友達論。」

「まぁ…二人がいいならそれで良いんじゃないかな…?(友達論?)」

こうして椛と花は互いに守り合う仲であり、晴れて友達となることができたのであった。

再び自分の中の厄災が目覚めるとも知らずに…

                EPISODE64「血盟」完


          次回「正義」

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