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妖狩:第二部  作者: 定春
第二部:北編
6/11

EPISODE61「白虎」

かつての友、真白と再会し、昔話をしていたのも束の間。真白の家族・小雪が通う学校が“律”のクモ男の手により地獄と化した。真白と協力して生徒を救い出せ。


 一人屋上に着いた風雅はクモ男と対峙し、先制攻撃を与える。

「今度こそ倒す!」

「やってみなさい、消耗品がぁぁぁぁ!!」

クモ男は蜘蛛糸を幾重にも重ねて盾を作り風雅の風を纏った拳をキャッチした。そして粘着性のある蜘蛛糸は風雅の拳を離さない。

絡め取られた風雅はクモ男の強烈な一撃がクリーンヒットし、後退る。そしてワイヤー状の糸を指から伸ばし、風雅の体を切りつける。

絡められた腕には糸が食い込み血が吹き出す。

「くっ…!」

「ほらほらぁ早く切らないと腕が落ちますよ…!」

いっそその方が手っ取り早いのではないかと考えたが、その考えはすぐに脳内で否定。迷わず金属をも切る糸を逆に掴んで、こちら側へと引き寄せる。

「うぉぉらぁぁぁぁ!!」

ついに拳がクモ男の腹にクリーンヒット。マスクの中から血反吐を吐かせることに成功。

(こいつ…イカれている!わざわざ私の糸を触って引っ張っただと…!当然彼も無事なはずが無い…血まみれじゃないか!!)

クモ男の術式は糸の練度を変えることで強度、切れ味を変えることが可能で、さらに切れ味が増した糸の刃十本

が風雅に襲い掛かる

「まずい…このまま一本を止めても残りの糸に八つ裂きにされる!」

その時だった。突如糸が凍りつき、空中で静止した。

「この冷気は…真白!」

「待たせてごめん、教室に雪ちゃんはいなかったよ。」

クモ男は真白に向かって捕縛用の糸を吐くがその分厚い糸ですらも宙で止まり、真白がツンと指で突くと粉々になった。

「まだ知らないようだね、僕の術式…」


         ー「“絶対零度アイスエイジ”」ー


冷気を自在に操り、霜や氷を生成することもできる。

この術式の真髄は絶対零度にまで冷気を下げ、物体の動きどころか原子の動きすらも停止させてしまう。


 「なるほどそういうことでしたか…ではこれが絡めばあなたも手は出せませんよね?」

クモ男がそばにあった繭を裂いて取り出したのは小雪であった。

「雪ちゃん!」

「野郎…人質取りやがった…!」

「ほらほら冷気を放って御覧なさい、お嬢様まで凍死してしまいますよ…?」

こうなっては真白も手出しは出来ない。それどころか彼は戦時中に暴走して殺してしまった少女を思いだしてしまい、その場から凍ったように動けなくなってしまった。

「ではさらば!」

クモ男は気絶した小雪を抱えて蜘蛛糸で何処かへ跳び去ってしまった。

「真白、行くぞ真白!」

「!?…そうだね…行こう!」


 二人がビルを下って階段を降りていると目の前に白い和服を来た侍のような人物が現れた。

「お前は…たしか兄貴に倒されたんじゃ!」

二人の前に立ちはだかったのはかつて風雅の兄・雷牙に倒されたはずの“Eの天使”こと人斬り伊蔵。

彼の術式はー“エッジ”ー。両手を刃物に変え、空間ごと切り刻む能力だが何故生きていたのか。伊蔵は雷牙のキックを食らい灰化消滅したはずだ。

「拙者は刃の欠片一つあれば、拙者そこから再び蘇る。」“エンジェル”の中ではシンプルな術式であるが、副次効果の強みがあるため実力者として君臨しているのだろう。

「お主らには消えてもらおう。厄災殿の邪魔はさせん。」

伊蔵は両手を刃に変えて二人に斬りかかるが、


突如風雅の足元の影から円が愛刀・月闇つくよみを振りかざして登場。

しかしいつもの長髪ではなく、おしゃれなスーツに身を包んで髪は現代風のセンター分けであった。

「お前…冒険したなぁ…」

「黙れ、変なオカマの美容師に髪を切られた…!」

「そうか…大変だったな。」

「ここは俺に任せろ。お前に死なれては面倒だからな。」

風雅たちは円にこの場を任せ、先を急ぐ。

「邪魔者はどくがよい!」

「消えろ、邪魔者はお前だ…。」


           ー廃工場ー


 今は使われていない廃工場。ここにクモ男は小雪と共に潜伏した。

「嫌、離して!!真白さん!」

「彼は来ませんよ。戦うのに相当なトラウマを抱えているようですねぇ…貴方も孤独にはトラウマがあるでしょう。」

「それは…。」

クモ男は自身が得意とする精神攻撃を仕掛ける。真白は戦うことへの恐怖、小雪は孤独で捨てられることへの恐怖を

「待てい!!」

「来たんですね。」

元妖狩エージェント八雲 風雅!」

「同じく真白、」


           『参・上!』


「真白さん!風雅さん!」

「なんかずいぶんとはっちゃけてますが、何か策があるのですか?」

「風雅くんと二人で決めた作戦さ。」

真白は前に踏み出し、妖力を高める。

「風雅くん、もしまた僕が暴走したら…」

「おう、ぶん殴っても止めてやるさ。」


         「唸れ『白虎』!!」


冷気の嵐から赤い瞳の白き虎、『白虎』が咆哮をあげながら顕現した。

「『白虎』“武装アームド”!!」

真白の顔には虎の爪のような痣が出現。身体は黒い影に覆われ、白銀の白虎の爪が両腕に装着された。

これが戦時中、制御できずに多くの人々を殺めた姿だ。真白はついに覚悟を決め60年ぶりに戦場へと戻った。

「見てみなさいお嬢さん、これが彼の真の姿バケモノではありませんか!!これでも彼を信じるのですか?」

とクモ男は自分の心配をせずに小雪へ挑発を仕掛ける。

「ソの子カら…離レ…ろ!!」

(たかが式神の完全調伏が未完のLEVEL1。私の敵ではありません!!)


妖には“LEVEL”というものがあり、LEVEL1は式神の調伏が完全ではなく、真白のように黒い影に式神の特徴を持った武装を施された姿である。

しかしクモ男とは年季の差が違う。何も知らないクモ男が真白の前に近づくと、冷気を纏った爪で切り裂いた。

「がっ!」

「うがぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!!!」

「貴方たち、止めなさい!!」

クモ男は手下の妖狩エージェントを呼び出し、真白へ切らせる肉壁と化した。

真白はまるで豆腐を切るが如く妖狩エージェントたちを斬り伏せていく。

風雅は万が一真白が暴走した時に止めるため、そばにいたが、真白にはすでに風雅の声は響いていなかった。

かつての恐怖に囚われているのか、鳴き声は慟哭と化し、まるで泣いているようだった。

「真白、もういい落ち着け!!真白!」

「…うがぁぁぁぁぁぁ!!!」

真白は風雅の声を聞かず、止めようとした風雅を吹き飛ばした。

そして再度小雪を人質に取ったクモ男へと向かっていく。しかしクモ男は自分の体よりも前に小雪を差し向け真白に殺させるようにした。

「さぁこの女を殺してみなさい妖狩エージェント『白虎』!!」

「やめろ真白ぉぉぉぉ!!」

真白は咆哮を上げながらその巨大な爪を小雪に突き立てる。

小雪は最後まで彼を信じていたが、ついに目を瞑ってしまう。

「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「ひひっ!」

クモ男が狂気の笑みを出したその瞬間である。


           カチャ


突如咆哮は止み、小雪は目を開けた。真白の爪が自分の眼前で止まっていた。

「真白さん…?」「何ですと!」

「……ごめんね…雪ちゃん。怖がらせちゃって…。」

虎の化物からいつもの優しい声が聞こえた。正気を取り戻したのだ。実は小雪の顔に爪が届く前に、風雅が真白の腰に抱きついて寸前で止めたのだ。

「あっぶね!お前まじで危ない!!」

「風雅くんごめんなさい!」


「暴走状態のLEVEL1を克服した…まさか!」

「そのまさかさ。」

黒い影にヒビが入った瞬間、体に青いスパークが発生し化物の皮が弾け飛んだ。

そして現れたのは虎の爪型の痣を出現させ、白虎の爪を装着、青いスパークに包まれた生身の真白の姿であった。


        「『白虎』LEVEL2!」


LEVEL2は式神を完全調伏し、生身の状態でも武装できるようになる状態。体には青いスパークがほとばしる。

「嘘だ、嘘だぁぁぁぁぁ!」

「さーてと、やってやりますか真白!」

「いや、ここは僕にやらせてもらえないかい?」

風雅は真白に出番を譲り、真白は爪を構えた。

その刹那、真白は一瞬にしてその場から姿を消し、クモ男の懐に入っていた。そして勝負は一瞬にして決まる。

「なっ!」

「“白蓮びゃくれん”!!」

鋭い突きの攻撃の影響で氷の道が生成され、クモ男はその爪に貫かれ、凍りついていた。

最後に指をパチン!と鳴らすと氷に閉ざされたクモ男は粉砕されたのだ。


 真白は“武装アームド”を解除し、二人の元に戻る。小雪は勢いよく真白に抱きついた。

「真白さん!」

「ごぉ!あーごめんごめん怖かったねー。へへっ。」

「真白、今回はありがとな。ゆっくり暮らしてくれ。」

そうかっこつけて潔く去ろうとした所、真白は呼び止めた。

「なーに言ってんの!僕も手伝うよ、君達の戦い!」

「は?でももう戦いたくないって…。」

「今回で吹っ切れたよ。あと、皆一緒に消えれば別に良いとか強がって言ったけど…やっぱり好きな人が死ぬのは辛いから…だから僕も戦うよ。」

こうして強力な仲間を一人手に入れることができたのであった。

                 EPISODE61「白虎」完


          次回「墜落」

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