表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖狩:第二部  作者: 定春
第二部:北編
5/10

EPISODE60「真白」

新たな仲間を手に入れるため、北海道に来た風雅たち。

そこで風雅のかつての友である妖“真白ましろ”と再会、彼を仲間に誘うものの断られてしまう。

さらに現在の真白の家族・小雪こゆきと出会い、家に招かれる。


         ー真白・雪愛宅ー


風雅は招かれ真白たちの家にお邪魔した。中は何の変哲もないただの家。部屋は小さく、個性があると言えばテレビやベッドのそばにはかわいい動物のぬいぐるみがあるくらいだ。

「お、お邪魔しまぁす…。」

風雅は恐る恐る家の中に入る。

真白は小雪の買い物袋を玄関に起き、小雪は風雅にお茶を淹れた。

「どうぞごゆっくりと。」

「あ、どもども…。」

風雅と真白はテレビ前の小さな机に向かい合わせの形で座り、陶器の湯飲みに淹れられたお茶を飲む。

小雪は真白に

「私、今から学校に行きますから大人しくしててくださいね。分かりました?」

「はーい☆もー朝から顔が怖いぞー雪ちゃん。スマイルスマイル!」

「もー。貴方ときたら…まぁ今の真白さんだったら大丈夫か。じゃ、行ってきまーす!」

「いってらっしゃーい!」

真白は笑顔で小雪を送り出した。小雪は専門学生であり、登校時間ギリギリまで真白の分までの買い物を済ませていたのだ。

「あの子が新しい家族…。」

「そ、小雪こゆき。僕は雪ちゃんって呼んでる。十年前、両親から虐待を受けて雪の中に放置されていた所を僕が助けて以来一緒に暮らしてるんだ。」

真白がもう戦いたくない理由も彼女が一因なのだろう。と風雅は察した。

「真白、『白虎』は制御できたのか?あの戦争から…。」

「ううん、出来てない…だからもうこの力を使いたくないんだ。」

そう、彼の運命の歯車が狂ったのは今から60年以上に行われていた第二次世界大戦中のことであった。


       ー太平洋戦争 某島での戦いー


敗北が重なっていた頃、日本政府は超人、つまり妖の存在に目をつけた。そして片っ端から日本にいる妖、軍の中にいる妖をかき集めて特殊部隊を結成。

「そのなかに風雅くん、雷牙くん、僕もいた。この頃の妖は超人といえども皆国のために自分の命すら投げ出す覚悟を持った軍人や国民ばかり、

はっきり言ってイカれてたよね。」

最初は真白もその一人だった。

『一緒に勝とうぜ!え、えー…っと』

『八雲 風雅。』『そうそう風雅! 』


「お前この頃一人称“僕”じゃなくて“俺”だったよな?」

「若気の至りということで…。」

とあるアジアの島に降り立ち、敵軍を迎え撃つことになった。ここで突破されては日本本土にも危険が及ぶ、大変重大な任務だった。

風雅と雷牙は得意の連携プレイで敵軍を迎え撃っていた。

『本当は戦いたくない…無意味に人を殺したくないのに…』

『だが俺たちにはやるしかないんだ…どんなに苦しくても…俺たちには…!』『兄貴…。』

『甘ったれたこと言ってんじゃねぇ!』

怒号を飛ばしたのは真白であった。

『奴らの事情なんて考えるな、奴らは“敵”!大勢の日本人の命を奪った鬼だ!俺たちはただ国のために戦い勝利するのみ!!日本に爆弾落とされたくなきゃ戦え!!』

防空壕の中に真白の怒号が響き、一同の士気は上がってしまった。防空壕にはその島の住民たちも隠れて怯えていた。優しい風雅は一人の少女に近づいて膝をつく。

『俺の手をみてご覧。』『?』

泣いていた少女は涙を小さな手で拭って風雅の手元を見た。

『ん~~パッ!』『!?』

風雅の手からは赤い花がポンと飛び出した。

真白は気になって風雅に近づき覗き込んだ。

『何してんだ?』

『軽い手品さ。辛い時こそ笑った方が良い。そうすりゃ僅かでも希望が生まれる…笑顔が一番さ。ほら、言葉が通じなくても人を笑顔にしようという気持ちがあれば何でも出来るんよ!』

この時の荒んだ真白にはただの現実逃避の言葉にしか聞こえなかった。彼は呆れて防空壕を出ていってしまった。

次の日、敵軍が奇襲を仕掛けてきた。妖の部隊はもう十人と残っておらず絶望的な状況。他の妖に住民を任せ、八雲兄弟、真白が迎え撃つ。

『うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!』

この時の真白は力の制御が効かず、ただ本能のみで暴れ続けた。そしてここで真白の運命が狂った。


『真白やめろ!!止まれぇぇぇぇぇ!!!!』『!?』

そして真白は我に返り気づいた。爪の先に滴る血の前に突き刺さった物を…

『何でだ…何で…』

真白が貫いていたのは、風雅が手品を見せた少女だった。

正気を失った真白は敵軍ではなく避難民に襲い掛かっていたのだ。

辺りは血の海、他の避難民も止めようとした仲間も全て切り裂いていた。

激しい自負と恐怖が一瞬にして真白の頭を覆った。

真白の慟哭が島中に聞こえた。それを嗅ぎつけた敵軍が爆撃機を伴って、生き残った三人の下に迫った。そして一機の飛行機が爆弾を落とした。

『真白!!』

庇った八雲兄弟ごと真白は炎に包まれた。


 「そこからの記憶がない…気づいたらすでに平成になっていた…。」

「俺もだよ。あの頃からの記憶が無くて起きたらすでに平成だった。」

これが真白が戦いを拒否した理由だ。そして二人にはそれからの記憶が無い。

「でも今でも覚えているのは…“辛い時こそ笑え。”この言葉昔は分からなかったけど、雪ちゃんと出会った今なら分かるんだ。」

小雪と出会った真白は笑わなかった小雪に「スマイルスマイル」と魔法の言葉を覚えさせていたようだ。

「久々に君と話せて良かったよ。仲間にはなれないけど、ウォーゲーム頑張ってね。あっ、そうだテレビつーけよ!」

真白が気分転換にテレビを点けた途端に速報が舞い込んだ。

『専門学校に突如巨大な蜘蛛の巣が!?』

というニュースが全国で報道された。

真白は一瞬にしてテレビに齧りつくように凝視した。

「風雅くん…これ…雪ちゃんの学校…。」

「まさか…あいつ生きてたのか!」

この蜘蛛の巣には見覚えがあった。奴しかいない。そうと分かり風雅は急いで外に出た。

「真白、来い!」「でも…僕…」

「雪ちゃんを見殺しにしたいのか!!これ以上後悔したくないなら戦えっ!!」


          ー専門学校ー


 風雅と真白は巨大な蜘蛛の巣が張られた学校へと到着。裏口から入り、二人は戦慄する。

壁や天井には蜘蛛の巣が張られており、教室の扉は空いていて中には人一人が入れる程の大きな繭が一つの教室に二十数体ほど吊り下げられていたのだ。

その時だった。天井から例のクモ男がぶら下がって現れた。

「ごきげんよう『神狼』さん。おや、お友達もご一緒ですか?」

「生きてたんだな…何故こんなことを!」

「上から言われたんですよ…このまま失敗するのは許されないと…だから貴方たちを尾行してお嬢さんという弱点を突かせてもらいました。」

(気づかなかった…どうした俺の鼻!)

風雅は狼の特徴を持った妖で、そばに妖がいればその匂いを嗅ぎ分けることができるが、今回は尾行され、盗聴されていたのにもかかわらず何故か気づけなかった。

「雪ちゃんたちを解放するんだ!」

「それは出来ません。妖狩エージェントならともかく一般人の貴方の指図には答えかねます。ではさらば。」

クモ男は窓を突き破って屋上へと蜘蛛糸で上がっていった。

「待て!!」

真白は血を流す程拳を握りしめて怒りをあらわにした。

「風雅くん…やるしかないんだね…。」

真白の右手に冷気が集まり、それが大きくなったと同時に真白は廊下に冷気を帯びた手を付けた。

「はっ!!」

一瞬にして廊下、壁、天井が凍りついた。幸い教室までは凍りつかなかった。

「ごめん…ちょっと腹が立って…」

だが真白の冷気により蜘蛛の巣が凍り、除去しやすくなった。

「真白、これやるよ。」

風雅は真白に銀のブレスレットを投げつけた。

「これ…僕に?」

「別に今回限りでいいから。雪ちゃんを一緒に助けよう。」

「うん!」

真白がブレスレットを付けると特殊防護服が体に展開され両手に金属の爪が装着された。

「よし行こう!」

「待って。僕は生徒を助けるよ。この中に雪ちゃんがいるかも知れない。」

「分かった。俺はクモ男を倒してくる!」

真白は蜘蛛の繭の凍らせて、爪で切裂き生徒たちを救出していく。

「このクラスにもいない、他か…!」

一方屋上まで駆け上がった風雅はクモ男と対面。対面するなり風を纏った拳で殴りかかった。

「次こそ確実に倒す!!」

「やってみなさい!!消耗品がぁぁぁぁ!!!」

                EPISODE60「真白」完

 

          次回「白虎」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ