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妖狩:第二部  作者: 定春
第二部:『光と闇、過去の因縁を覗け』
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EPISODE76「別離」

風雅たちが刺客に襲われていると同時刻、人造人間ホムンクルスの青年・円は記憶と能力を取り戻したかつての友・ヒカルと激突する。


            2011年 


 時は戻り現代、北都の北部で光と闇の戦いが繰り広げられているが、終わりは近づいていた。

「はぁ…はぁ…君も頑固だな…円。なぜ厄災に手を貸す!」

「別に厄災(赫夜)を庇おうとはしていない…だが、宿主の姫には…罪は無い。」

「変わったな君は…だが厄災は厄災。宿主ごと焼き払わせてもらう。」

「変わらないなお前は…頑固、傲慢、負けず嫌い…今なら言える…昔からのそういう所が大嫌いなんだよ!」

「私からも言わせてもらおう。軽率、馬鹿、負けず嫌い…君のそういう所が昔から嫌いだ!!」


二人の妖力が高まり、空へと上がっていく。これは式神召喚の合図だ。


       「斬り裂け『鬼神・零式』!!」

         「照らせ『麒麟』!!」


円は巨大な黒鬼を召喚、ヒカルは天下泰平の世に現れる伝説の瑞獣『麒麟』を模した式神を召喚。

「相変わらず眩しい獣だ…。」

「君のやつこそ、相変わらず陰湿そうな魔人だね。」

式神を召喚した後もさらに二人は妖力を高め続ける。



           戦国時代


 ヒカルが闇に蝕まれた円と対立している間に村には織田信長の姿をスキャンした第二の厄災・“戦争のノブナガ”が現れ、“暇つぶし”と称して村人たちの虐殺を始めた。

ただならぬ気配を感じた二人は山を降りて急いで村へと向かう。

しかしヒカルは円から彼の愛刀である“月闇ツクヨミ”を取り上げ、先に村へと着いてしまう。


ヒカルが目撃したのは、七年前の熊の被害よりも酷く、惨い大虐殺の光景だった。

老人たちは為す術もなく殺害され、この先長い子供たちですら胸に風穴が空けられた状態で道に放置されていた。

そして目の前に村を地獄絵図に変えた張本人が現れる。「お、やっと来たなぁ妖狩り。」

「貴様…よくも村の人たちを…!!」

ヒカルはまず自分の刀を抜刀して、光を纏わせた状態から突き攻撃を繰り出す。

すると周りに無数の光の剣が出現し、その光の剣と共に攻撃するが、ノブナガはまるで全ての軌道を知っているかのように全て回避し、ヒカルの刺突を指二本で挟み、そのまま手首を真横に動かして刃をへし折ってしまう。

「そんなもんか?」「くっ!」


自分の刀は折られたが、腰にはもう一本、禍々しい気を放つ黒い刀がある。

「コレを使えば…奴を倒せる!」

彼は一つ大きな勘違いをしている。円の刀さえ奪えば彼は苦しみから解放され、闇を操る術式は全て自分に引き継がれると思っていた。だが違ったのだ。刀の持つ呪いと術式は何も関係はなかった。

その事を知らずに鞘から抜き、構えるが、“月闇”の持つ呪いの力が彼の腕を蝕む。


「どうやらお前の力ではソイツを使いこなすことは出来ないようだな。それは円だからこそソイツを抑えることが出来た。お前の力ではソイツと相反するんだよ!」

「そんな…!」

「返せ馬鹿野郎!」

遅れて駆けつけた円がヒカルから“月闇”を奪還し、そのままノブナガに切りつける。

「お前、織田家の!」

「勘違いすんなよ?俺はアイツをスキャンしただけだ。まだ完璧な肉体を取り戻していないんだよ。」

「す、…すきや…あぁもうどうでも良い!!死ねぇ!」

しかしノブナガは軽い身のこなしで円の放った“斬月”を回避し、ついでに腹を蹴り上げて円を倒す。


 「円、私に合わせろ!」

「うるせぇ…言われなくてもやってやる!」

ヒカルは腕を光の刃に変えて、円はすぐに立ち上がり刃に禍々しい気を纏わせながら二人で共に斬撃を放った。ノブナガの着ていた上半身の着物は破け、胸にはバツ字型の傷が出来た。

さすがの厄災も二人の強大な力が重なった同時攻撃で後退りした。

「やるじゃねぇか…」

するとノブナガの右手の人差し指にヒビが入り、そこから灰がこぼれ落ち始めた。

「そろそろ“時間”か…短い時間だったが楽しかったぜ!そして忠告だ。お前ら二人、この先楽には生きれんぞ?はーはっはっはっ!!!」

ノブナガは豪快な笑い声を上げながら消えてしまった。

「待ちやがれ!!」

円は追おうとするが、ヒカルが止めた。

「まずは…むくろを片付けるのが先だ…!」

悔しみが手に滲んだ血で伝わってくる。二人は村を歩いて犠牲になった人たちを寺の前に集める。生き残った村人たちも骸を集めてくれた。

その晩、簡易的な葬式を開いた。その死体の中で、円は信じ難い光景を目の当たりにした。

「…鶴…?」

目の前で安らかな顔をして眠っているのは彼の妻・鶴。村人が言うには、子供を守ってノブナガの拳に倒れたということだ。その守った子供はその直後に殺されてしまった。

失意の中、円は膝を着いて力が抜けてしまった。何も考えられなかった。

隣にヒカルが座った。そしてヒカルを視界に入れた円は口を開く。

ヒカル…二人でアイツを殺そう…二人でならやれる確実に!なぁ!」

円がヒカルの方を振り向くと、それは期待していた表情ではなかった。彼はまるで罪を犯した人を見るかのような冷ややかな目をしていた。そして

「これも全て君のせいだ…。」

     

           「……は…?」


と吐き捨てた。そこでついに円の何かが音を立てて切れた。

「は?何言ってるんだよ…。」

「君という人間が最初からこの世にいなければ、鶴は死ななかった、皆も死ななかった!織田のうつけ者に目をつけられることもなかったのだ!!」

「こらヒカル、自棄にしても言い過ぎじゃ!円、今日はもう休みなされ!」

と村の老人は二人をなだめようとしたが、今の円にそんな声は聞こえていなかった。


「いいぜ…そこまで言われるんだったらよぉ…この場で全員ぶち殺してやるよぉぉぉぉぉ!!!!」

円の髪には血のような赤色が入り、瞳も藤色から紅色に変わった。

「皆見ろ、これが彼の本性だ。こうして皆を殺す日を待っていたのだ!安心してください私が引導を渡します!!」

「けしかけたのはアンタでしょ!皆逃げるよ!」

村の若い女は村人に呼び掛けて急いで避難した。

「殺してやる…!」

「これで正義は果たされる…!!」

二人は同時に走り出し、妖力を纏った拳が互いの顔に食い込む。そして現代にシンクロする。


「なぜあの時、俺にあんなことを言った!!」

500年ぶりに感情を表に出した円は左腕に『鬼神・零式』を武装してヒカルの顔を殴り飛ばす。

ヒカルも負けじと『麒麟』を武装して右手を光の刃に変えて腹を切りつける。

「あの時は、村を焼かれ、鶴を失い、自暴自棄になって君に全てぶつけてしまったんだ!!」

「お前はいつも不器用なんだよっ!!!!」

妖力を纏った左手から放った拳が見事光ヒカルの顔面にクリーンヒット。

血を吹き出しながら倒れた。お互いに出血し、白かった雪の地面が真っ赤に染まっていく。

すると円はヒカルの姿にとある疑問を感じた。

ヒカル…お前、体が…!」

彼の右腕にヒビが入っており、そこから灰がパラパラと舞っていたのだ。

「あぁ…そろそろ肉体の限界が近いようだ…。元々このボディは完璧ではなかった…限られた時間の中でせめて厄災を倒したかったんだ…。」


 戦国の世では村の中心で二人は倒れ込み、虫の息でも立ち上がり、そこから決着がつくと思った矢先、突如二人の首筋に注射器が刺さり、何もない空間から時代に合わない白い制服を着た男たちが現れた。

二人は倒れてしまい、半分閉じた眼から周りを見ると男たちは何を言っているかは分からないが、何かを相談している。

そして体液を採取した注射器を二人から抜き、二人の背中を口封じと言わんばかりに執拗に背中を軍刀で刺し始めた。苦しむ声を上げながら、二人の意識と記憶はそこで途絶えた。


村人たちが村に戻ると円、ヒカルの姿は見当たらず、村の中心には灰が積もっていた。

                EPISODE76「別離」完


           次回「支配」

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