EPISODE75「信長」
風雅たちが刺客に襲われていると同時刻、人造人間の青年・円は記憶と能力を取り戻したかつての友・光と激突する。
闇に蝕まれ始めた円は傲慢的な正義に目覚めた光とついに袂を分かった。
後日、光は村にて円は自分を見つめ直すための旅に出たと誤魔化した。そして村人たちに自分が円を連れ戻すと口実を作り、彼の刀、術式を奪うための追跡を開始した。
それから三日が経った。鶴は帰らぬ夫を心配し、三日三晩も寝ず、食わず、ひたすら祈り続けた。
師範はそんな鶴を心配し、鶴にご飯を持っていくが食べようとはしなかった。
「困ったのぉ…お前が元気でなくては円は喜ばんぞ?」
「そう…ですよね…では、いただきます。」
その言葉でハッと自分の意思を取り戻した鶴は三日ぶりの食事を口にする。
円はどこかの山の洞穴でまた痛みに悶えていた。髪には血のような赤の差し色が混じり、髪はボサボサで振り乱していた。
果てには愛刀の“月闇”で自身の腕を切りつけるなどの自傷行為で体の中の何かを追い出そうとていた。
「おかしい…光が闇を切ってくれたはずなのに…なぜまだ痛むんだ…!」
『お前が生きている限り、俺が鎮まることはない…!』
円の背後で不気味な笑い声を上げる者がいた。
「今までの苦しみはお前の仕業か…『鬼神』…てめぇ俺の式神だろ…。」
『俺様はただの式神にあらず、式神というのは自分の分身…その人間の隠された本能、欲望が形を成して付き従ってるだけだ。俺様はよぉお前の中の心の闇が生み出したんだ!村の連中はお前を忌み嫌っていたのにも関わらず、今ではすっかり英雄扱い。綺麗な女を女房にもした、それも光のガキから引き剥がしてだ!!』
円はさらに頭を抱え、洞穴の中で苦しむ声が木霊する。
「!、それ以上言うな!もういい戻れ、戻りやがれっ!!」
『いいやこの際だ全部言ってやるよ…お前はそれから光との関わり方に悩んでたよなぁ?!無理やり明るく誤魔化して、奴の言い分まで遮って自分のしたことを忘れようとした!その後悔と生来持つお前の闇が今の俺様を創ったんだ!!だーはっはっはっはっ!!!』
「やめろぉぉぉぉぉ!!!!」
気がつけば翌日の朝になっていた。きっと一晩中『鬼神』の真実の声を聞いて耐えきれず気絶していたのだろう。頬は痩せこけ、以前のような明るい好青年は消えかけていた。
そしてあの男が洞穴に到着した。
「随分と非道い格好だな円よ。」
「ひかる…助けてくれ…もう、辛い…お前に術式と刀はやる…だからもう殺してくれ…!!」
「まずは村に戻れ…鶴が心配している。」「鶴が…?」
「三日三晩君を心配して何も口にしていないんだ。生まれつき体が弱いんだ…君より先に死んでしまう。まずは戻って彼女に会え。殺すのはそれからだ。」
結局円が光に処刑されるのは変わらないようだ。
村
その頃全身に布を被って馬に乗った一人の男が村を訪れ、村長が対応していた。
「妖狩りの円と光はどこにいる。」
「今は二人とも用事がありここには居りませんのじゃ。して客人御名前は…?」
「そうか、まだ名乗っていたいなかったな…俺はノブナガだ。」
ノブナガと名乗る男は顔の布をどかすと、赤い長髪に鬼のように凶悪な面が顕わになる。そして村人たちは全員衝撃を受ける。
「の…ノブナガ様と言いますと…七年前の本能寺で明智氏に討ち取られたと聞きましたが…!」
「あー…ちょっくらこいつの体をスキャンして使ってんだよ。だからお前らの知ってる第六天魔王・織田信長はすでに死んでんだよ。」
村長は足腰が弱っている。その上さらにこの狂気を纏ったかのような男を見て、さらに震える。
「なーんだあいつらいないのか…じゃあ少しここで遊んでやるか…。」
村長は何か良からぬ気を察知し、村人に大声を飛ばす。
「皆早く逃げるのじゃぁぁぁぁ!!!!あっ、」
村長は皆に呼び掛けるが、ノブナガの手刀が非力な老人の胸を貫いた。
「残りわずかな命を民のために散らすとは…見事だ。大活躍だったぞ翁よ。さぁ収獲だ…!!」
洞穴にいた円と光もその異常を察知した。
さすがにここで争っている場合ではないことに気づいた光は急いで村の方へと円を置いて走っていく。
「ま、待て、俺も行く!!」
「今の君では足手まといだ、それに私には君の刀と術式がある!!」
と意気揚々で戻っていくが彼は一つ大きな勘違いをしている。別に光は刀を奪ったからといって円の術式 ー「“月闇”」ー を手に入れた訳ではないのだ。
円は黒いモヤを手の代わりにして立ち上がり、光と共に村を目指す。
EPISODE75「信長」完
次回「別離」




