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妖狩第二部:北編  作者: 定春
第二部:北編
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EPISODE57「北都」

第二の厄災“戦争”による世界改変で人類の半分がランダムで超能力に覚醒したあやかしという新人類になってしまった。

さらに自分が楽しむために「ウォーゲーム」なる妖同士の殺戮大会を世界各地で開催。妖である主人公・風雅は新たな仲間の招集とウォーゲームを止める仲間たちと北の地へと向かう。


風雅たちは手分けして二人の新たな仲間を勧誘する。一人目は北都の北海道、二人目は東都の山梨県。風雅たちは北海道を担当する。

手始めに花を護衛する人造人間ホムンクルスの一人、“僧正ビショップ”の称号を持つ巫女・こよみは空間転移の術式を使い、北都チームと共に現地へと瞬間移動した。


        ー北都・北海道 函館ー


 「その術式便利だなぁ…壁の検問無しで通れるなんて…。」

しかしデメリットは使えば大量の妖力を消費し、丸一日のインターバルを要するという。現に暦はヘトヘトであった。

「風雅くん、あの壁って一体何なの?」

花はとある組織によって監禁されていたので、大正より後の日本のことは知らない。今の日本は東西南北に巨大な壁が設置され、国内間の行き来が面倒くさくなっている。

「あの壁は第二次世界大戦の後に作られたんだ。戦争に負けてもまだ抗う姿勢を出していた日本国民を団結させないために設置したんだと。だから特に厄災絡みとかそんな設定は無い!」

「でも国を仕切ってもそれぞれの都市で反乱起きたら元も子もなくない?」

「そこは計算に入れてなかったんじゃね?」

六人が降り立ったのは雪の大地。踏めばザクザクと音を立て、白銀の世界が人間の世界と共存している。

「雪見るの久々〜。」

「そんな呑気な事言ってられないぜ?花ちゃん。今や北海道もニューヨークも超能力者の殺し合いの場へと変わってんだ。」


今はテレビを点けたらどのチャンネルもウォーゲームによる被害が報道されており、中にはリポーターが巻き込まれるといった事故映像が流れ茶の間が凍りついた。

北海道でさえも殺し合いの場になり、罪なき人が道端で倒れ、雪は赤く染まっていた。

「あの馬鹿野郎どもが…皆行くぞ!あら?」

風雅は民間人を助けるために一歩を踏み出したが、彼以外はその場からまったく動かなかった。

「おい、動けよ!」

「わしらの最初の目的は妖狩エージェント『白虎』を探すことじゃ。民間人の救助は後じゃ!」

「やだね、俺は元だろうが現役だろうが妖狩エージェントだ、皆の笑顔を奪う奴らは許せない!!」

「おい!」

そのまま風雅は円の制止も聞かずに助けに行ってしまう。

「はぁ…円、ナユタ行ってやってくれ。風雅一人じゃ心配じゃ…。」

「了解…。」

暦の指示で戦闘要員である二人は風雅の後を追っていく。

「ごめんね暦ちゃん。風雅くんあれでも『俺は正義のヒーローなんかじゃない!』って言ってるのよ?」

「彼の心意気には感激するが…厄災を止めるためには多少の犠牲は仕方ないのじゃ。」

「その犠牲を出さないために風雅くんたちは今まで戦ってたんじゃない?」


         ー函館 市街地ー


市街地では五人の妖が暴れており、その影響で建物が壊されて下敷きにされてしまっている人がいた。

「足が……!」

風雅はすかさず近づいて鉄骨を素の力で除去した。

「大丈夫?」

「え…それ…鉄骨…。」

「まぁまぁ細かいことはお気になさらず。歩けますか?」

「足が動かないんです…!」

すると風雅は女性を抱きかかえてまだ比較的被害の少ない場所に移動した。

「ここはまだ人がいるはずです。いずれ助けが来ると思うんで安静にしてて。」

「はい、ありがとうございます!」

女性は風雅に感謝の言葉を贈り、風雅は踵を返して妖たちの元に現れた。

「おい、お前らのせいでどれだけの人が犠牲になったと思ってんだ!!」

「あ?知らねぇよ、俺はこいつらぶっ殺せれば何でも良いんだよ!」

「勝てば俺の理想の世界が作れる…ぐひひ…!」

「そんな美味い話があるはずねぇだろぉぉぉぉぉ!!!!」

風雅の風を纏った一撃が妖の頭部に直撃し、爆ぜた。

「今降伏するなら許してやる…その代わり二度とその力を私欲のために使うな!!」

だが彼らの反応は風雅の想像していたものとは違ったのだ。

「こ…これで一人減った…へへ、ありがとよ。」「は?」

この妖たちは自分のことしか眼中にない。突然超能力を手に入れて調子に乗っているのだろう。そんな輩に風雅は心の底から怒りが湧き上がった。

「何でこうお前らはいつもそうなんだ…何故奪うことしかできねぇんだよ…あっ、それは俺も同じなのか…お前らの命を奪うことしかできねぇや。」

風雅の体から熱を持った強風が吹き上がる。

「誰から来るよ?」

「俺からだぁぁ!!」

翼を生やし、怪鳥のような顔をした妖が最初に攻撃を仕掛ける。だが突如、先程まで完璧だった羽のコントロールを失いかけ、バサバサと必死に羽ばたくようになった。

「何だこれ!羽が上手く動かねぇ?!」

実は風雅は風を操り、気流を乱していた。そして怪鳥の妖が近づいてきた瞬間を狙い、風を纏った拳を怪鳥の顔めがけてぶつける。


           “疾風弾しっぷうだん!!”


翠緑色の狼のオーラを纏った拳が怪鳥の顔に当たり、そして貫通した。そんな風雅の術式は


          ー「“疾風サイクロン”」ー


表向きは風を操り、気流に影響をもたらす能力だが、風雅のたゆまぬ努力で体に風を起こして身体強化を促す能力に強化した。また風のバリア、風の斬撃波などバリエーション豊富な技を放つことも可能。発動条件は事前に体に風を受けること。


 怪鳥の妖が灰化消滅し、残りの三人の妖は風雅の恐ろしさにたじろいた。

「ここはひとまず退散!…なっ!」

突如妖の足が動かなくなったと思いきや、足元から声が聞こえた。

「お前らを今ここで逃がすと不機嫌になるやつがいるから倒させてもらおう…。」

足が動かなくなった妖の影から、円が浮上してきた。

そして腰に差した刀に触れ、居合の構えを取る。

「奴は溜めている…今の内に!」「行かせない。」


            ズジュ


逃げ出そうとした筋骨隆々の妖は一瞬にして心臓を何者かに抜き取られた。あまりの速さだったのか、時間差で服に血が滲み自分の心臓が無くなっていることに気づいた。

「油断ダメ。」

抜き取ったのはナユタであった。右手を水銀の蛇に変え、一瞬の内に心臓を抜き取り、代わりに体内に大量の水銀の毒を添えた。

ナユタの術式はー“メタル”ー。身体を鋼のように硬くしたり、腕を水銀で作った蛇にして猛毒攻撃を仕掛ける事も可能。


「ばいばい。」「くそ…が…!」

筋骨隆々の妖は灰化消滅。残りは二人。

「おい円、建物は巻き込むなよ?」

「面倒臭い…範囲を絞るのは相当な集中力がいるんだ…おい蛇、奴らの動きを止めてろ。」「了解。」

ナユタは水銀で二人の足元を固めて逃げ道を完全に絶たせた。

円の術式はー“月闇ダークネス”ー。文字通り闇を司る能力で、相手の攻撃を暗闇に消すことも可能だが、この術式の真価は斬撃。刃に闇を纏わせて三日月状の斬撃波を

放ち、全てを斬り裂く厨二病大歓喜の能力だ。

発動条件は居合。

そして建物を巻き込まないようにさらに妖力を収縮、一点に集中させて抜刀する。


           “斬月ざんげつ!!”


三日月状の赤黒い斬月が解き放たれ、二人の胴体を泣き別れにした。最後の二人も灰化消滅し、この場にいるウォーゲーム参加者は消滅。

風雅はいくら相手が外道だったとしても必ず黙祷をする優しい男だ。今回も外道だったが軽く会釈をして暦の元に戻った。

「ごめんごめん、今戻った。」

「よし、じゃあ仲間集め再会じゃな!」

風雅はケータイを取り出して別チームの雷牙たちに電話をかけた。

「あ、もしもしー。」

『もしもーしこちら琥珀ちゃん!!今すっごく大変なことになっててーリュウちゃん何とかしてぇぇ!!』


    『あぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!!!!』


皆の断末魔が聞こえた後、電話はそこで途切れた。

「え…え?」


        ー北海道 とある公園ー


 その公園には少し肌寒いだろうにベンチに座ってアイスを食べながら歌を歌う白髪の青年がいた。

「♪雪〜の進軍氷を踏んで、どーこが河やら道さえ知れず〜。馬は斃れる捨ててもおけず、此処は何処ぞ皆敵の国!♪」

                EPISODE57「北都」完

 

           次回「砂塵」

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