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妖狩:第二部  作者: 定春
第二部:『世界からの刺客を破壊せよ』
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EPISODE72「黒炎」

世界からの挑戦者たちは元妖狩エージェントの手により倒されたが、八雲夫妻の元には財団HANDの支援により作られた団体妖狩エージェント・“律”のメンバーが立ち塞がる。


 風雅は花と共にバイクに乗って拠点に戻る道中、歩道に“律”の部隊が銃を持って横一列になって待ち構えていた。

「随分なお出迎えだなぁ…。」

「もーあの人たち嫌い!」

その銃撃部隊の中央には赤い特殊防護服に頭にゴーグルを着けた赤髪の青年が部下たちを指揮し、その部下たちは八雲夫妻目掛けて一斉射撃を仕掛ける。

持ち前のバイクテクニックで銃撃を避けた後、風の術式を使って弾丸を全て薙ぎ払い、隊長である悠介は部下たちを流れ弾から守ろうとはせず、その弾丸に当たらせ、命を無駄に散らせた。


風雅はバイクから降りて、肩を動かしながらウォーミングアップ。花は頑丈なバイクの陰に隠れさせた。

「お前、自分の部下だろ。同じ命だろ?守ってやれよ。」

「弱い奴に価値はない。」

と一言だけ吐き捨て剣に炎を灯し、風雅に向かって走り出す。

「やるしかないのか!」

風雅は拳を構えて走り出す。そして二人の闘志がぶつかり合う。

「焼け死ねがいい、過去の遺物め!!」

「お前それ俺傷つくって!」

軽口を叩きながらも風雅は火の点いた剣を片手で受け止め、さらに跳ね返す。

「“鎌鼬・V3”!!」

風の刃をLEVEL3しようのV3にまでギアを上げて放つが、全て剣でいなされてしまう。

「俺と貴様では能力の相性が悪い…貴様の風を受けて俺の炎はさらに燃え上がる!!」

「こいつはやべぇな…。」

炎はさらに火力を増して斬撃を繰り出す。

「“焔斬り”!!」

「あぶね!」

風雅がギリギリで“焔斬り”を避けると背後にあったビルに直撃し、炎に包まれてしまった。

「幸い無人だったから良かったものの…ん?」

風雅が悠介の方を見ると、頭を抱え始め、頭に着けたゴーグルをまるでそれに頼るように触り始めた。

「お、おい大丈夫か?」

「うるさい!黙れ!俺に近づくなっ!!」

どうやら風雅相手ではなく、誰かに怯えているようだった。風雅は心配になり、考えるよりも先に体が動いた。そして悠介の体を覆い被さるように抱擁した。

「おい、しっかりしろ!(何があったか知らないけど、おそらく燃えたビル…いや燃えた建物を見て怯え始めた?)」

「俺に近づくな!離れろ!財団こそが正義、すべては財団と“父様”のため!!!!」

まるで自分の意識と違う意識が混在して、暴れているように感じられた。

「俺から…離れろぉぉぉぉ!!!」

悠介の体から黒い炎が噴き上がり、風雅をバイクまで吹き飛ばした。

「黒い炎…もしかして龍我と同じかアイツ!」

悠介は黒い炎を纏って立ち上がり、その黒炎を両手に纏わせてそして合わせる。

「“灯矢”!!」

黒炎の矢を連続で三発で放ち、風雅は“鎌鼬”を出して相殺しようとするが、風の刃が黒炎に触れた瞬間にとてつもない爆発を起こし、残りの二本の矢が爆煙を抜けて風雅に襲い掛かるが、とっさに街路のゴミ箱を拾って投げつける。一本は地面に、もう一本は投げられたゴミ箱に当たった。

ゴミ箱は灰になるまでもなく跡形もなく燃え尽きてしまった。

「“燃やす”というより“消す”だな…。花ちゃん無事?」

「私はだいじょーぶー!」


 やがて体全体に黒炎を纏い、瞳にも炎を宿し始めた。そして呪文のように何かを唱え始めた。

「俺は強い…俺は強い俺は強い俺は強い俺は強い俺は強い!!!!」

そして体の黒炎が次第に鳥のような形を成し空に羽ばたく。


       「燃やし尽くせ『朱雀』!!」


悠介の式神は四神と呼ばれる霊獣の一体朱雀を模した式神。だが伝承のような赤い霊鳥ではなく、今は悠介の黒炎に蝕まれた邪悪な黒い霊鳥の姿をしている。

「“武装アームド”!」

悠介は手を伸ばして顕現した『朱雀』を強制武装。体は黒い陰に包まれ、鳥のような仮面に手足、黒い翼を生やして姿に変わってしまう。

「体から青い電撃…悠介はLEVEL2のはずだがLEVEL1のような姿だな…これが『朱雀』の武装形態なのか?!」

武装した悠介が一度腕を動かすと、黒炎が立ちのぼり、全てを焼き尽くす。

「仕方ない、こうなってしまったら力づくで止めるしかないな!」

風雅の目元に風を模した痣が出現し、右腕には翠緑色のラインが浮かび上がり、紅いマフラーを取って右腕に巻き付ける。

「『神狼』“武装アームド”!!」

右手にはバイクを模した打撃武器が装備され、マフラーからは風が吹き出す。

「風雅くーん頑張ってー!!」

「はーあーいー。」

とのろてけいると黒炎が風雅を襲う。さきほどのバイク移動と爆風で体内に風は充分と言うほど蓄えられている。黒炎を纏った悠介に物怖じせず、ブーストを使って

悠介に急接近を試みる。

「相手は自我を失っている…だったら最速最短かつ最大の力で屠る!!」


         「“疾風弾・V3”!!」


風雅の一番得意な必殺技であり、最短のコストで最大の威力を出す“疾風弾”をさらにV3まで押し上げて、悠介の腹に直接ぶち込む。当然の威力を発揮し、悠介は苦しむが、自分の剣を握り、切り返す。

風雅は武装した右腕でガードしようとするが、黒炎に触れた瞬間にマフラーの部分が消滅してしまった。

「しまった!ぐあ!」

さらに黒炎を纏った刃で切りつけられ、胸を切られてしまい、大火傷を負ってしまう。

「風雅くん!」

(この火傷は俺でもまずいと思うレベルだな…血すらも燃えて…このままでは肺が焼けてしまう!)

肺は風雅にとっては重要な器官。風雅の術式は風を肺に取り込むことで蓄えられるが、悠介の黒炎によって内臓まで焼かれているとすれば生命活動にも関わる。


花は二人の攻撃から巻き添えを食らわないようにバイクに隠れいたが、一方的にやられる風雅を見て、自分の無力さに落ち込み、風雅の手助けをしたいが、自分には何も出来ないとさらに引っ込んでしまう。すると体の中から何者かの声が響いた。

『力が欲しいか…ならばそなたに妾の力の一端を授けようではないか。』

「その声…まさか赫夜かぐや!?」

風雅の妻・緋月 花の体内には第一の厄災・“支配の赫夜”が宿り、その体内で完全に目覚める時を着々と待っていたのだ。

「誰があなたの言う事…。」

『このままではお主の伴侶は焼け死ぬぞ?そなたとようやく逢えたと喜んでいた伴侶の命を見殺しにする気か?そうなる前に妾の力を使った方がよかろう。』

大正の世に一度死に別れ、一日足りとも自分の事を忘れなかった風雅を今度は自分が救う時ではないかと花も自分の心に言い聞かせ、ついに決心する。


「私や皆を騙さないと誓うならば、あなたの力を使う!」

『よかろう…ふふっ。』

赫夜は不敵な笑みを浮かべたが、人を疑うことを知らぬ花はすぐに承諾、意識を戻した花はバイクから体を出し、手を合わせる。

「“飛梅とびうめ”!!」

合わせた手から血のビームを放ち、武装した悠介に直撃させた。

「花!?」

「私だって皆の役に立ちたいの!風雅くん、早くその人を苦しみから解放してあげて!!」

風雅は赫夜の力を得たことには何も言わず、ただ目の前の悠介を止めるためだけに動いた。

「“武装アームド”の残り時間は僅か14秒、その内に決める!!」

ガントレットのマフラー部分は半分焼失してしまったが、残った体の風を使ってブーストし、“疾風弾”とは違う、最大のコストを払って最大の威力を発揮する必殺技を武装した悠介の顎にぶち込む。


           「“旋風”!!」


白目を剥くほどの威力を悠介の体に打ち込み、さらにこのままでは足りないと感じ、“疾風弾”を連続で叩き込む。

「ウリィィィィィィィィ!!!!!!」

その音はまるでマシンガン。悠介も負けじと抵抗し、掌から黒炎を発射、全身が炎に包まれるがそれでも構わずに打ち込み続ける。マシンガンと同じスピードの連続パンチを食らわせて最後の一発でビルへと吹き飛ばした。その衝撃で肺の火傷は進み、風雅は口から大量の血を吐き出す。


土煙が晴れると悠介の“武装アームド”は解除され、黒炎も体から消えた。気絶した状態で地面に落ちた。

花の術式が無ければこのまま風雅は悠介に殺されていただろう。

全身まで焼かれ、喉も壊れた風雅は火傷した胸を触りながら花へと近づく。

「花ちゃーんありがとn…、!!?」


突然グサりと風雅の胸に何かが刺さった。血の刃であった。

「花…ちゃん?」

花は風雅を血の刃で刺したことに今ようやく気づいた。そして戦慄する。

「何で…どうして?約束するって言ったのに!う、あぁぁぁぁぁ!!!!」

花は突然苦しみだし、髪は黒から次第に白く変色していく。そして紅い角が生え、人が変わったようだった

「お前…まさか…厄災の!」

「御名答。まさか花がこーんな簡単に騙される女とは知りもしなかったぞ。そうだったらもう少し早く事を進められたのじゃが…」

現れたのは第一の厄災、支配を司る赫夜。白髪に血のように赤い瞳を持った妖女である。


 2011年 10月2日 PM15時26分 赫夜 完全復活


    「日本国家は全て妾の支配下じゃ!」

                EPISODE72「黒炎」完


           次回「月光」

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