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妖狩:第二部  作者: 定春
第二部:『世界からの刺客を破壊せよ』
16/25

EPISODE71「射手」

世界からの挑戦者たちは元妖狩エージェントの手により倒されたが、雷牙、八雲夫妻の元には財団HANDの支援により作られた団体、妖狩エージェント・“律”のメンバーが立ち塞がる。


 雷牙は“律”の火の鳥隊隊長・紅 悠介の名前が気になり、手がかりを求めるため、わざわざ東都の東京の郊外にある山に登った。

その時黒く焼け焦げた屋敷であっただろう建物を見つけ、年数ならば10年以上は経っているはずなのに焦げた状態で雨風にも耐えていたのだ。そこで家族写真らしき物を拾った時、突如狙撃手が彼を襲ったのだ。


雷牙は雷の如きスピードで弾丸を避けるものの、その弾には術式が込められており、跳弾を繰り返しながら雷牙に当たるまで追ってくる。

雷牙の真上にある木の上からでリロード音が聞こえた。顔を上げると眼鏡を掛け、オールバックの青年がいたのだ。

「お前がスナイパーか。」

妖狩エージェント獬豸かいち』。あなたを始末するために派遣されました。」

「自己紹介どうも。生憎無駄な殺生はしたくないんだダルいからな。手短で頼む…!」

リロードを終えた銃から再び三発の銃弾が放たれる。


          ー「“弾丸バレット”」ー


『獬豸』の術式。弾丸に術式を込めて撃つことで相手に当たるまで止まらない自動追尾弾を作り出す。発動条件は相手を視界に入れ続けること。対策は諦めて撃たれるか、銃弾そのものを破壊するしかない。


「まったく、何が目的だ…。」

「お前たちは世界の管理者である財団HANDにあだなし、厄災とも協力関係にある…それを我々正義の使者“律”が止めに来た!」

「お、おう…。」

言われていることはたしかにド正論だ。人類幸福を探求し、全ての妖を管理していると発言している財団HANDに反旗を翻し、さらには厄災を中に宿した花とも行動を共にし、雷牙たち“妖狩エージェント”は財団と手を組んだと濡れ衣を着せられている。財団HANDを崇め、正義の使者と名乗る『獬豸』たちには彼らを疑うことは決してしないだろう。

三発の弾丸はこちらに向かってくるが、雷牙は天に手を掲げて振り下ろす。

「“神鳴かみなり”!!」

三つの雷が弾丸に当たり、自動追尾弾は効力を失い地面に落ちた。

「これが八雲 雷牙の術式 ー「“神速サンダー”」ー 。全ての妖の中でも上位のスピードとパワーを誇ると言われている自然系の能力…!」

「どうした、怖いか?」

「このバケモノめ!」

『獬豸』は残りの三発を無造作に発砲する。しかし適当に撃った弾丸だ。プロからしてみれば簡単に避けれてしまうのだ。

「怖いか…恐怖で弾道が狂っているぞ。もっと落ち着いて撃ったらどうだ?」

その言葉は彼には煽りに聞こえたのだろう、必死でリロードをして二発連続で発砲。

「僕の術式はターゲットを見続けるだけでいいんだ。だからどんな弾道だろうと自由自在、必ず当たる!」

雷牙はいつも通り避けようとした、だが今回は違った。

一発目の弾丸を避けたが、その銃弾は地面に落ちた。

続いて二発目の弾丸に集中しようとした時、ふと地面に刺さった弾丸に目を向けた。

「…何だと!」


地面に刺さった一発目の弾丸は忽然と姿を消したが、そこには土をほじくった跡が残っていた。

一発目に気を割いていた雷牙は続いてくる二発目に肩を撃ち抜かれ、そして突如として一発目の弾丸が雷牙の背後から飛び出し右足の太ももを撃ち抜いた。

「ぐっ!自動追尾弾…まさか一発目は地面を潜ってここまで…?」

妖狩エージェント・『獬豸』が言った通り、彼がターゲットを見続けていれば弾道は自由自在、相手に当たるまで止まらないのだ。

「お前、やりゃ出来るじゃないか…!」

「敵に褒められてもうれしくないぞ。」

『獬豸』は続いて二発連続で発砲。そして二発とも地面に潜り込み、どこから来るか分からない追尾弾の完成だ。

雷牙は撃ち抜かれた足から血を吹き出しながらも力を入れて跳び上がる。その直後に二発の弾道が地面を突き破って飛び出す。そして空中にいる雷牙に目掛けて飛んでいくが、再度“神鳴”を放って弾道を鎮める。


 そして五点着地で地面に着こうとするが、肩も太ももも撃たれた状態では完璧な着地は出来ず、体を強く打ちつけて着地する。

その後すぐに痛みながらも起き上がって武器の手斧を構える。

「さぁ、かくれんぼは終わりだ…“迅雷”!!」

“迅雷”は縦横無尽に雷と同じスピードで移動しながら周囲を攻撃する必殺技だが、今回は木に登っている『獬豸』を引きずり下ろすために周囲の木々を切り倒す。

木が倒れる寸前に『獬豸』は飛び降りて地面に着地する。

「八雲 雷牙…!」

「やっと面と向かって会えたな後輩。さぁ、ゲームスタートだ。」

『獬豸』も正々堂々と戦う気になったのか、腰から二丁目の拳銃を取り出し、銃口を向ける。さらに

「断罪しろ、『獬豸』!!」

自身のコードネームにもなっている式神を召喚。一本角を生やした青い羊の見た目をしている。

「ゲーマーとして公平になるようにお前と同じルールで戦ってやる。轟け『雷獣』!!」

配信者として活躍している雷牙は公平を好み、相手に合わせるため金色の獅子の式神を召喚した。


           『“武装アームド”!!』


 両者共に“武装アームド”。『獬豸』の武装は弾丸に込められたのはおろか、空間内にも弾丸が生成され、千発の弾丸が雷牙を囲んでいた。

対して雷牙の武装は目元に稲妻の形を模した痣が出現し、口にはマスクを付け、両足には金色のアンクレットが出現した。

「まるで獣だな…。」

「じゃあお前はそれを狩る狩人だ…!行くぞ後輩。」

と言った瞬間、雷牙は目の前から一瞬で消えた。1秒遅れて気づいた『獬豸』はすぐに千発の弾丸を雷牙目掛けて叩き込むが、速すぎて当たりはしなかった。

「当たれ、当たれ!奴は肩と足を負傷している、見えないとは言え、通常のスピードは出せないはずだ!」

と自分に言い聞かせて残り五百発の弾丸を浴びせる。


ターゲットが見えない以上自動追尾弾にするのは難しいが、『獬豸』は目を凝らして見てみると雷牙の残像を僅かだが捉えることが出来た。

「残像だろうと何でもいい、自動追尾弾発動!!」

残り五百発の弾丸は自動追尾弾へと進化して跳弾を繰り返しながら雷牙に襲い掛かる。

しかし雷牙は一瞬だけ踏み込んで手斧で弾丸切裂きながら走り出し、『獬豸』の腹に見事なキックを決め込んだ。

負けじと跳弾を繰り返させながら雷牙は手斧で切るが、とうとうその時が来た。手斧が一発の弾丸に当たった瞬間に折れてしまった。

「奴の武器は無くなった今こそチャンス!」

武器が無ければ自身の武装した足を使って弾丸を『獬豸』に蹴り返していく。

避けながらも雷牙を瞬きもしないで見続けとうとう残り五発になった。

だが雷牙は全て蹴り返し、再び力を入れて真っ直ぐ『獬豸』の方へと突き進む。

「残念だったな…僕にはまだ一発残っている!」

と右手に持った拳銃から最後の一発を発砲する。雷牙は避けずになんと片手でキャッチしてしまう。

「なんだと!」

「“神速・雷霆らいてい”!!!」

電撃を纏った神速の蹴りが『獬豸』に直撃し、そのまま巨木へと激突。キックの衝撃で巨木はまるで雷が落ちた後かのように真っ二つに分かれてしまった。

「ゲームオーバーだ。(あんま素手で掴むもんじゃねぇな弾丸なんて…)」

雷牙は“武装アームド”を解き、倒れた『獬豸』の胸ぐらを掴んで尋問する。

「お前、別の理由で俺のとこ来ただろ。」

「何故そう思った…。」

「俺を始末するだけだったらお前の部下を連れてくるはずだ。だが今回はお前一人だけだった。隠れている部下もいないようだな。」

『獬豸』は自身の胸ぐらを掴む雷牙の手を逆に掴み返し、これに反論する。

「いいか…僕は隊長格のような偉い立場ではない!僕はただの中級兵士…部下を引き連れるほどの階級では…ない…!」

『獬豸』はポケットから液体の入った注射器を取り出した。刺されると思った雷牙はすぐに『獬豸』から手を離し、距離を取った。

「安心してください…もうあなたに敵対する気はありません…任務に失敗すればこの薬で自害するように教えられているので…。最期に、あなたの求めている答えを教えます…!ここはかつて栄えた紅家の屋敷。そしてあなたの知る悠介は本名ではありません……彼の本当の名は…。」


           ーーー


そう伝えた後、安らかな表情で首元に注射器を刺した。

「おい、死ぬな…自分から死ぬな!」

「これで財団から解放される…死に目に観察しても仕方ないからな…。」

「早まるなまだ死ぬんじゃない!」

と雷牙が呼びかけても『獬豸』の体は色を失い、灰色一色になったかと思えば、体の形が崩れ落ちた。

手を伸ばしたが、その手はもう届かなかった。だが雷牙が知りたいことは知ることが出来た。後は北都に戻るのみ。

その時だった。茂みの中から誰かが出てきた。

「雷牙か…。」

「!、あづまさん…?」

彼の前に現れたのはかつての友であった刑事、あづまであった。

                 EPISODE71「射手」完


           次回「黒炎」

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