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妖狩:第二部  作者: 定春
第二部:世界からの刺客編
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EPISODE66「赤龍」

北海道、並びに他の五カ国で開催されていた地獄の殺し合い“ウォーゲーム”の予選が終わり、五カ国の中でも勝ち残った代表とも言うべき妖たちが北海道に集結し、妖狩エージェントたちに宣戦布告を仕掛けたのだ。


龍我の前には中国予選を勝ち抜いた“ロン”という男が立ち塞がり、龍我は胸を躍らせた。

「いいぜいいぜ、オレとあんたどっちが最強かここで決めようぜ!!」

「日本にもこんなに強さに貪欲な人がいるとは…いいでしょうお手合わせ願おう!!」

まず最初に仕掛けたのは龍我であり、身軽な体を利用し屋上を縦横無尽に動き回ってロンを翻弄したつもりでいる。

ロンは手を後ろに組んで何も問題は無いという態度を取り、片足を上げて勢いよくタイルを踏みつけた。その衝撃で地響きが起き、動き回っていた龍我の体が痺れた。

「そこですか。」

ロンは手を組んだまま痺れた龍我に近づき、足技だけで顔や胴にクリーンヒット、終いには蹴りで頬を蹴られ屋上の柵まで吹き飛ばされ、体が打ち付けられ、柵が凹んだ。

「これが…世界の妖…!おそらく術式なしの巣の戦闘センス!!」

「これで私の恐ろしが分かったようですね…恐れ慄いて…はなさそうですね。」

龍我はロンを相手取った時から興奮冷めやらずで常に狂気的な笑顔を見せていた。

「楽しいなぁ…楽しいなぁ!!世界にはこんな強い奴がいたのか!!」

「それはお褒めの言葉として受け取って宜しいのですね?」

「あー褒めてる褒めてるマジ褒めだよ!あんたを倒せば、俺はさらに最強へと近づくんだ…ワクワクしてんだよ!!」

「…少年、名前は。」「龍我。名字は無ぇ。」


龍我の熱狂的なまでの最強への執着にロンも心を躍らせ始めていた。

「あなたはまるで昔の私を見ているようだ…謝謝シェイシェイ。私はあなたのおかげであの頃の熱を取り戻しつつある。よって本気でお相手いたしましょう!!」

ロンは妖力を高め体からは赤い龍のオーラが立ち昇り、龍我を威嚇した。

「これが私の力です!はぁぁぁぁぁぁ“天龍ティエン・ロン”!!」

ロンが蹴り出した右足から赤い龍が出現し、その威力で龍我を向かいのビルまで吹き飛ばした。前日に初雪を観測し、積もっていた雪が龍我とロンの攻撃によって舞い、崩れた。

「いってぇ…。これがあの人の術式か…なんかオレのと似てるな。」

龍我は口の端から垂れた血を防護服の袖で拭き取り、袖には血が滲む。ロンはすでにビルを移って龍我の前に立っていた。

「これが私の術式 ー“龍撃砲ドラゴンズ・キャノン”ー です。」


         ー「“龍撃砲ドラゴンズ・キャノン”」ー

中国代表の武闘家・ロンが使用する術式。妖力を赤い龍へと変換し、共に攻撃をしたり、防御にも使える能力。発動条件は“本気になること”。


 戦闘狂の龍我は益々面白くなり、血を流しながらもロンに向かっていく。負けじとロンは腕から巨大な赤い龍を顕現させて迎え撃つが一度受けた攻撃は通用しないと自負する龍我は軽々と避け、頭上に移動した。

「“流水ながれ”!!」

右の拳から水の龍頭を作り、ロンを屋上のタイルごとビルの中まで落とした。

中は一瞬で水浸しになった。薄暗いビルの中から二匹の赤龍が飛び出したが、まるでアトラクションのように龍の体を伝ってビルの中まで降りた龍我、ビルの一階ではロンが体に付いた汚れを手で余裕そうに払っていた。

「良かった、まだ生きてて。」

「そう簡単にはくたばりませんよ。(これが彼の超能力…私と似たようなタイプですね。面白い!)」

薄暗いビルの中、二人は同時に走り出し、拳をぶつけ合う。その衝撃で体に付いた水滴が爆ぜ、ビル全体が揺れ倒壊してしまう。そんなものなど気にせずに二人は二人だけの世界を展開、舞台は道路に移る。


「さすがです龍我くん。ここまで一人で鍛え抜いたのですか?その若さで!」

「さすがに一人じゃここまで来られなかったよ。師匠や先輩たちがいたからこそ、最強へと登り詰めようとする目標が生まれた!そして強さには果てがないことを知った。だから色んな奴と戦って、勝って勝って己を磨き上げ続けるんだ…!!」

龍我は両手を水の龍の尾に変えて“龍尾りゅうび”を発動、連撃を繰り出す。

「こっちから質問だ、何故あんたはこのクソみたいなゲームに参加した…?」

「私の家や村は貧しくてね、毎日老若男女問わずに死んでいくのですよ。都会に出ていた私はその現状を知らずに村は壊滅寸前。故郷を救うために勝てば願いを叶えられるウォーゲームに参加したのです!」

「生憎だが、それは嘘なんだ。このゲームの主催者は己の欲を満たすために開いただけさ。だから勝っても何も無い、ましてやあんた殺されるぞ!」

水飛沫舞う龍我の攻撃を受け止めながらその真実を聞いたロンは一瞬怯んだが、すぐに微笑み反撃を繰り出した。

「それならそれで我が故郷の運命を受け入れよう…だが君に会ってこうしてお互いを高め合えた…このゲームが無ければ一生会うことは無かったでしょう。謝謝。」


どれだけ惨い真実を聞こうとも、それすらも諦め、前向きに捉え目の前の勝負に徹してくれているが、その態度は龍我には納得がいかなかった。そして“龍尾”を解き、ロンに問いただす。

「あんたのそれは何だよ…諦めか?このまま死に行くのは分かっていたから踏ん切りついたんじゃねぇのか?」

「!?」

「あんたはオレと同じさ、戦いの中でしか快楽を満たせない。己の力をさらに上の力を持つ者に知らしめるために参加したんだろ!」

図星だったのだろうが、ロンは口角が上がり先程よりもスピードを上げた。

「そうですよ、私はこの力を手に入れた時からさらに上をもっと上を目指し始めた。あなたと同じで、私は感動しているんですよ!」

「そりゃ良かった、さらに熱が上がったな。(この精度の術式と妖力のコントロールだ。おそらくノブナガによる世界改変で作られた妖じゃない。自力で覚醒したオリジナル!)」


ロンは再び妖力を高め、右拳で地面を殴り、地中から赤龍が潜水をするように狂ったように動き回り、潜って浮上を繰り返しながら龍我に近づく。

「“地龍疯狂(ディーロンクェンファン!)”」

龍我は後ろに避けながら龍が消えるまで様子を見て、術式持続効果が切れ始め、赤龍の体が透け始めた瞬間を狙い、最大の突撃攻撃を繰り出す。

「“龍飛翔りゅうひしょう”!!!」

龍我が水の龍頭に身をつつみ、そのままロンに突撃、予想外の攻撃に反応することが出来ず直撃、龍のオーラに突き飛ばされながら、龍我の膝蹴りが胴にヒット、吐血をしながら吹き飛ばされるも持ち前のフィジカルでアスファルトに足を突っ込み耐え抜いた。

「やるねぇ…。」

「まだまだ倒れるつもりはありません。共に命を燃やしましょう!」

「上等!!」

龍我の頬には痣が出現、ロンの頬には龍の鱗の痣が出現し、開眼し、金色の瞳が現れた。


       「登り上がれ『応龍』!!」

         「昇れ『青龍』!!」

          「“武装アームド”!!」


両者二匹の龍を召喚し同時に“武装アームド”。龍我は五匹の龍のオーラを纏ったLEVEL3へとギアチェンジ。

対してロンの“武装アームド”は全身に龍そのものを纏い金色の竜人のような姿になっていた。

「おっほほ…かっけぇw」

おもわず溢れたその本音は龍我の戦闘意欲をさらに掻き立てた。

「これが私の全身全霊…これがおそらく最後の1分半お互い悔いのないように戦いましょう!!」

「あぁ!!」

両者は再び走り出し“武装アームド”が切れる1分半のリミットまで戦う。

ロンは妖力を高めずともデフォルトで龍を出せるようになっており、赤龍から金龍へと変わり、力も速さも倍になっている。

龍我の五匹の龍はそれぞれ意識があり、金龍が迫った時、冷や汗を掻きながら龍我の体の前に五匹集まって金龍を防ぎ切った。

「なるほど…超能力者にはLEVELというものがあるのですね。龍我くん、私は何LEVELですか?」

「“武装アームド”してからもこの妖力の量…あんたはすでにLEVEL3の域に達してるぜ!!」

龍我は真っ直ぐ近づくよりも右手の龍を伸ばして電柱に噛み付かせ、ジップラインのように移動し、少ない移動でロンに近づこうとした。

「頭を使いましたね。ですが無駄ですよ。“天龍”!!」

ロンは龍我のいる空中に向けて蹴りからの金龍を発射。五匹の龍では防ぎ切れず、右手、左足の小龍が破裂してしまい、脇腹を抉り取ってしまった。

「ぐっ!、早く戻ってこい一番、四番!」

『ごめんよご主人〜。』


龍我は地面に落ちたが、たまたま雪がクッションになったのでダメージは少しだけ緩和され、破裂した一番と四番の小龍は涙目で戻ってきた。

「五番、オレの脇腹に潜って治してくれ…一匹足りないけどアレを使う!」

武装アームド”終了時間までのこり僅か30秒。

「これで決めましょう…はっ!!」

ロンは金色のオーラを九体の龍に分け、放とうとしていた。

「とことんオレと似てんのな…。」

「これぞ私の最大奥義“九龍クーロン”!!!!」

ロンは九体の金龍を一斉に放ち、龍我を喰らおうとしていた。龍我は脇腹を抉られようとも目の前の強者に最後まで笑顔は絶やさなかった。

「一匹足りないけどやるぞ皆!“百龍ノ激”!!!!!」

龍我は4匹の小龍から百連撃のラッシュを己の妖力が尽きるまで繰り出す。対してロンの“九龍クーロン”は巨大な九体の金龍を相手を喰らうように放つが、威力ではロンが上であり手数だけでは龍我が上回っていた。


      『うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』


「私は負けない、負けられない!!」

ロンは金色の目を見開いて金龍を繰り出すが妖力の枯渇が近いのか、目から血を吹き出し、体もヒビ割れ始めた。そして次第に金龍も手数が上の小龍たちに喰われ始めた。八体、七体とまた金龍が減っていく。

「オレは勝つ!!そしてあんたを超えてさらに先輩たちを超えて最強になるんだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

さらに土壇場で威力を上げた“百龍ノ激”で押し上げ、ついに金龍は全て食らい尽くされロンは飲み込まれ、百連撃のラッシュが彼を襲う。

そして大爆発を起こし、百龍の衝撃は雨となって街に振り注ぐ。

龍我は“武装アームド”が解除されたが五番の龍だけは残り脇腹を覆っている。雨に打たれながら歩く龍我は瓦礫の上に仰向けになってボロボロで体がヒビ割れたロンを見つけた。

「ロンさん…!」

「龍我くん…君の勝ちです…おめでとう…。」

ロンの下半身はほぼ灰になり、血が滲んで灰色と赤色が混ざっている。体のヒビ割れから灰が落ち、風に舞ってしまっている。

「私…嘘を言いました…。実は…もう、村なんて無いんですよ。」

「オレわかるよ。妖になった直後に力の制御ができずにってやつだろ?そんなやつ五万といるよ、あんただけじゃない。」

「お見通しでしたか…。私は力を磨くと同時に死に場所を探していたんです。あなたに会えて本当に良かった…最期に良い思いをできました。あなたなら…最強の武闘家になれますよ…きっとね。」

「そりゃどうも。」

満更でもない顔をして照れていた時、ロンは灰になってその魂は安らかに旅立ったのだ。

「オレは、あんたという武闘家がいたことを忘れない…絶対あんたの分まで鍛え上げて最強になるよ…!謝謝。」

雨は止み、龍我はロンの使う中国語を真似た後拳を握り、その場に気を失う様に倒れ込んだ。

                EPISODE66「赤龍」完


          次回「本能」

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