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妖狩:第二部  作者: 定春
第二部:世界からの刺客編
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EPISODE65「正義」

前回、花は椛と友達となりわだかまりを解くことができたのであった。だが“律”の追撃、財団HANDの実験は留まることを知らない。


 そんなある日、風雅たちは“律”の妖狩エージェントたちに追われていた。事の始めは凱と龍我が喧嘩して妖力を高めたからであるが…

「うぉー逃げろぉぉ!!」

「元はと言えばお前らが勝手に言い争ってたからだろが!!」

風雅が走りながら二人を詰めるとお互い顔を合わせず口笛を吹くだけだった。

間に真白が入って二人をなだめようとした。

「二人ともーケンカは良くないよぉ。ほら、スマイルスマイルぅ。」

「言っとる場合か!」

妖狩エージェントたちは追いかけてくる。

真白は立ち止まり、氷の壁を生成し、妖狩エージェントたちの足止めに成功した。

「今のうちだよ皆!」

「サンキュ真白!」

しかし、氷の壁の真ん中にヒビが入り、何者かが壁を突破した。

「逃がさんぞ犯罪者共!!」

突破したのは獣の毛を全身に纏ったような筋骨隆々の青年だった。

「犯罪者だぁ?財団とお前らが勝手に陥れたくせによく言うぜ?」

同じく“律”のクモ男の証言により、“律”は財団HANDの援助により完成した部隊だと。

「奴め…余計な情報をペラペラと…。まぁいい、ここでお前らは死ぬ、証言者はゼロだ!」

青年の名は“地獣隊”の隊長・“大悟だいご”といい、さらに全身を獣のように変化させ、風雅たちに突撃を始めた。

「やってみろよワンちゃん!」

地獣隊の隊員は人だけでなく、顔にバイザーを付けた大型犬までもが隊員であり、獣となった大悟に続いて二匹の大型犬も風雅に迫った。


その時であった。突如無数の光の剣が“律”の妖狩エージェント全員にめがけて振り注いできた。大悟以外の妖狩エージェントは全て串刺しにされ灰化消滅。配下の大型犬は人形だったのか、粉々に砕け散った。

空から光の柱に照らされ、その柱から青年が舞い降りた。

「お前、ヒカルか…!」

ヒカルは風雅の弟子であった少年が、財団HANDにより本来の大人の姿に戻り単独行動をしていた仲間の一人である。

そのヒカルは風雅たちのことをまるで面識のない赤の他人のように無視をし、大悟にトドメを刺そうとするが、大悟は煙幕玉で姿を晦まして撤退した。

敵がいなくなったところでようやく風雅たちの方を振り向いた。

「ヒカル、久しぶり!なんか、めっちゃ変わっちゃったけど覚えてるか?風雅だよ。」

だがヒカルは風雅の顔に光の剣を向けた。

「なっ!」

「風雅さん、貴方には失望しました。私の幼体が殺された際、警察の許可もなく奪還作戦を決行。さらには敵であるはずの財団HANDと手を組み終いには警察から裏切られた…本末転倒ですね。そんな邪道で私を助けたつもりですか?」

幼体と呼ばれた風雅の知るヒカルは、正義を愛し、優しい心の持ち主で風雅を慕っていたが、今のヒカルは絶対の正義を掲げ、純白以外は黒と言い張るような性格になっていた。

「おいおい冗談キツイぜ、お前を助けるためには仕方なかったんだよ!」

「それともう一つ…貴方が厄災の一人を目覚めさせなければ連鎖的に厄災は目覚めなかった。貴方のせいです。私が今すぐあの女を始末します。どこにいるのか白状しなさい。」

ヒカルはさらに刃を風雅の首に近づけた。その時風雅の影の中から黒刀が飛び出し、ヒカルの刃を弾いた。

ひかる、寝起きで元の性格に戻ったか…。」

「円…!」

ひかると円は風雅と出会う500年も前の戦国時代に子供時代を共に過ごした仲である。

「場所を移そう…」

「そうですね。」

ヒカルは円と共に光に包まれ、北海道のさらに北の大地へと移動していった。

「先輩、ヒカルくん行っちゃいましたよ。」

「だけど、どこか変だった…。」

「変って?どういうことです?」

「なんかさ…あいつの態度嘘臭かった。まるで俺たちを危険な物から遠ざけるようにつく嘘だ。」


            北部


 円とヒカルは吹雪吹く北の大地へと移動し、互いに向かい合っていた。

「相変わらず行動と言動が一致しない男だ…何が目的だ。」

「本来光と闇の術式は一つ。二つに分かれている内は中途半端な力しか出せない。全ての厄災を倒す悲願のため、その術式を私に譲渡しなさい!」

「苦悩して磨き上げたこの力…貴様にやすやすと渡してたまるか!」

円は黒刀を構え、踏み込みで雪原を割り、ヒカルへと向かっていく。ヒカルも光の剣を生成し、円の黒刀・“月闇ツクヨミ”を受け止める。受け止めた側の大地も割れ、術式無しでも凄まじい威力なことが分かる。

そして距離を取ったあと、黒刀に妖力を流し、“斬月”を繰り出す。

「相も変わらず穢れた力だ!」

ヒカルも負けじと剣から光の斬撃波を放ち、“斬月”を相殺した。

「すべては私の正義のために…」

頭上に無数の光の剣が出現し、ヒカルの手の合図でそれらが一斉に円に向けて振り下ろされた。

「“流星ながれぼし”!!!」

「“黒穴”!!」

円は通常の“黒穴”よりも巨大な真円を宙に描き、“流星”にて生成された剣を全て闇に呑み込ませようとしたが、数が多く、数百本しか呑み込めず、円に振り注いだ。

黒刀だけでも弾くことは出来ず、さらにヒカルは光の速度で移動し、近距離攻撃に出る。

「“彗星ほうきぼし”!!」

拳から繰り出された必殺技はまるで光のビーム。防ぎ切れずに吹き飛ばされ、雪はその熱で解け、その下の大地も割れてしまった。


          ー「“天照スターライト”」ー


円の ー“月闇ダークネス”ー とは対を成す光を操る術式。その副作用で、使用者は“絶対正義”の思想に飲まれる。


        「ひかるぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」

        「円ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


二人の500年に及ぶ戦いの決着が今始まる。


 その頃の北海道。風雅は人のいなくなった市街地のビルの屋上で項垂れていた。

その時だ龍我と花が風雅と合流し、今すぐケータイのワンセグを繋げと言ってきた。

試しに点けてみるとニュースは未だに世界各地の被害について報道していた。

この時点で死者は全世界で3万人を超え、避難所も襲われるという悲惨な状態であった。

「突然世界各地で攻撃が止んだ…政府は敵国の侵略だと思ってるるしいけど、実際は違うよな。」

「はい、巨大な妖力がこの北海道に近づいています。」


「御名答。しかしその相手はすでにあなたたちの近くにいる。」

「!?」

龍我と花の背後に中華服を着た糸目の男性が立っていた。

「誰だあんた…。」

「私は中国の予選を勝ち抜いた“ロン”。ニッポンの超能力者と手合わせに来た。」

八雲夫妻は身構えるが、龍我が制止する。

「先輩、花さん。ここはオレに任せて逃げてください…。」

「龍我、まさかお前…。はぁ、分かったよ。花行こう。」

龍我の意図を感じ取った風雅は花を抱きかかえてビルから飛び降りた。


「あんたが中国最強の妖かい…?」

「それが、どうかしましたか?」

「だったらよぉ、最っ高に楽しめるじゃねぇか!!」

元来龍我は戦闘狂であり最強の武闘家になることを目標

とし、日々強さを探求している。

そして中国最強を自称するロンを目の前にして戦闘狂の気が抑えられなくなり、笑みが溢れる。

「いいぜいいぜ、オレとあんたどっちが最強かここで決めようぜ!!」

「日本にもこんなに強さに貪欲な人がいるとは…いいでしょうお手合わせ願おう!!」


凱は資源は無いかと商店街を漁っていた時、白い服を来た少年に声を掛けられた。

「なんの用だガキ。」

「ガキじゃないよ。財団HANDから来た“J”っ言うんだけど。」

Jと名乗るこの少年はおそらく“エンジェル”。隣には優しい顔つきだが冬に近い北海道でタンクトップ一枚というイカれた格好をしたちょび髭の男性が立っていた。

「わたくし、ドイツ代表の“ミハエル”と申すものです。」

「ねー早く死んでよー。」

「悪ぃな、“死ねねぇんだ”!」


拠点にも魔の手は迫っていた。

真白の目の前には色白で金髪の美青年が現れた。

「君もしかしてはるばる海外から来てくれた子かい?」

「そうさ、俺はロシアから来た“アレクセイ”!ジャパンの超能力者。俺の術式の前に消えてもらおう!」


さらに無人のショッピングモールでは琥珀と椛の前にクソ長い爪を携えた褐色の女性が立ち塞がる。

「イギリス代表、クレア。3分で殺してあげる。」

「なんであーしが出かけるといつもこうなの!!」

「あー、それアタシも同じ。」


それぞれの場所に海外の妖、“エンジェル”が現れる中、風雅と花が乗ったバイクの前に、火の鳥隊の妖狩エージェント、隊長の紅 悠介が立ち塞がる。

「またお前かしつこい!」

「世界の敵が…焼き尽くしてやる!」

                EPISODE65「正義」完  


           次回「赤龍」

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