貫田 光 という漢
投稿遅れました。すいません。
ぜひ感想、レビューよろしくお願いします。
「オレはお前に気付いたんだが、お前はオレに気付いていないようだな、誠。」
先程までメモ用紙による視覚的なコミュニケーションを取っていた女性から女性ではない声が発せられる。それは、誠にとって、懐かしさを感じる男の声であった。
「もしかして、お、お前は、光なのか!?」
魔纏式護身術の技と目の前の男の声質、その2つが誠を答えへと導く。目の前の男、コウは、微笑を浮かべて頷き肯定する。
驚いた...。こんなところに同じ門下生の貫田 光がいるなんてな。
コウは、俺と同い年の親友だ。同じ魔纏式護身術使いでも、得意分野が異なり、突きの技の熟練者だ。
魔纏式護身術に入門したきっかけは、幼馴染の隣に立って、守ること、だと言っていた。
困惑。かつて心技体を磨きあった友が女装をしているからだ。かつての彼は、衣服を着ていてもわかるほどの筋骨隆々な肉体、男らしさを醸し出すソフトモヒカンの髪型だったから、今の姿とは正反対だ。
「久しぶりだな、お前に会えて嬉しいよ。
それでだな、その、お前は随分変わったな...。」
誠は、コウの全身を見て、触れていい話題なのか不安になりながら話す。
「あぁ、そういえば、この格好でお前と会うのは初だったな。この格好、この肉体は、俺の戒め、俺の覚悟だ。容姿は女性だが、俺の目的、意思はあの頃のままだ。」
現在のコウの肉体からは筋肉が少し落ち、髪型によるものなのか以前より童顔になっている。
コウの発言。戒めと覚悟。それがいかに重いものなのか誠には理解できていた。先程の戦闘、門下生時代のコウと比べ、技にさらに磨きがかかっていた。幾度となく魔物や魔人を屠ってきたのだろう。また、身体の魔力の流れが女性のようになっている。つまり、去勢したのだろう。
コウに、なにか壮絶なことが起こったのは確実であろう。誠は、彼の夢を聞いていた。彼は、幼馴染を守りたいと。その背景には幼馴染に恋慕を抱いていることなど察していた。だから、彼が生物的に男であることを捨てなければならないほどのことが起こったのだと、誠は理解したのだ。
「強いな、お前は。」
「いや、見方を変えれば、逃げたことにもなる。...オレは弱いさ。」
「お前は、目標を見つけたようだな。拳を交わしたとき、お前の技には心があった。
橘さん、だったか?ちゃんと守ってやれよ。」
コウは俺に、どこか覇気のない、憂いた表情で忠告する。
「………ああ、守るさ、必ず。」
コウは、誠の発言に満足したのか、フンと鼻を鳴らし、目に覇気が戻る。
「仕事の話をしようか。
魔法少女狩りの正体は、オレ達の同門だ。」
「だろうな。魔力を扱える男なんて俺たち魔纏式護身術の門下生だけだ。多分師範の一番弟子だろ?」
「わからんが、その見方で間違いないはずだ。
それに一番弟子以外にそんなやべぇことする奴はいない、と思う、たぶん。」
「ど、どうだろうな...。」
2人とも苦笑いを浮かべる。心当たりしかない。
門下生の中には、親に捨てられた奴もいた。その怒りや憎しみが国に向かうことも考えられる。
「「!?」」
2人は微力な魔力の波を感じ、波が発生した方向である南に顔を向ける。南地区で何かが起こっていると確信する。
「あっ、やっと見つけた!誠さ、バルカン!ひかりさん!」
橘さんと飯伏さんが少し焦ったような表情を浮かべながら俺たちのもとへ駆け寄ってきた。そういえば、俺らですげぇスピードでいなくなったからな。俺らが何かしでかすんじゃないか不安だったよな。前田、反省します。
「2人とも、探したよ。
急にいなくなって何をしてたのか問い詰めたいところだが、これを見てくれ。」
橘さんたちが焦っていたのは、俺たち以外の理由がありそうだ。飯伏さんが提示したスマホの画面を見ると、大手配信サイトで何らかのLIVEが配信されていた。同接数は、おおよそ5万と超多かった。
配信タイトルは、「人魔共和国 コンソラータの建国とそれに伴う宣言」だった。映像には、誰も座っていない玉座とその横に立つ1人の女性と男の魔人が映し出されていた。
「えーと、繋がっているカナ?あ、おk、良さげネ。
コホン、これから人魔共和国コンソラータを建国された御方のありがたぁーい宣言がなされる!見てる者たちは、ブラウザバックしないよう二!」
タイトルから深刻な内容を感じ取れるが、玉座の横に立つ女性の発言で感情が少しぐちゃぐちゃになる。橘さんも、コウも苦笑いを浮かべる。
画面端から筋骨隆々の男が登場する。その男の両手には、篭手ほどの小盾が装備され、また、右手には、菱形状の大盾を持っている。男は、玉座まで肩で空を切るようにノシノシと歩き、玉座にドサッと座る。この一連の流れで只者ではないことが感じられる。
「我が名は、矛盾 騎堅。人魔共和国コンソラータを建国せし王だ。
貴様らの国の一部である、南1から3地区、西1から3地区を我が国の領土とする。」
橘雪は、もしやと誠の方を確認し、飯伏暁歌は、魔法少女狩りはこの男のことかもしれないと冷静に判断する。
誠とコウは、内心とても驚いていた。門下生であったからではない。何故なら、映像に映し出された男が、かつて門下生の中で最も優しく、蟻をも殺せない性格の持ち主であったからだ。
なぜ一番弟子じゃなくて、お前がこんなことを...。
矛盾 騎堅は、師範に拾われた子どもの1人だった。両親は魔人に洗脳されて、その後殺されたという過酷な環境にいたらしい。鍛えることが好きで、元から身長が190cmとデカイのに、筋トレによる賜物で横にもデカイ。髪型は、ドレッドヘアで髪を後ろに結っており、本人曰く父親のマネとのこと。性格はとても優しくて、鍛錬中に倒れたりしたら一番最初に駆け寄ってきたのが騎堅だった。瞑想中にゲロや下痢したときも騎堅がずっと介抱してくれた。
信じられないことから、俺はコウを見るが、コウの顔は青ざめており、俺と同じ心境だと察する。
「これは、嘘でも茶番でもない、本気だ。
我が国は、人間と魔人の共生を目指す国家である。よって、我が国の領土に暮らす者には、義務を付す。その義務とは、人間と魔人との間で争いごとをしないことだ。」
騎堅の発言から、配信サイトのコメント欄が加速する。至極当然、魔人は人間に危害を加える生き物だからである。コメントは、そのような内容で埋め尽くされる。
「フン、そのような意見など、想定済みだ。
トライトン、魔人について述べよ。」
騎堅は、コメントを見てつまらなそうな表情をしつつ、玉座の横に立つトライトンと呼ばれる魔人に説明を促す。
「御意。
私の名は、トライトン。魔法少女たちの間では、〈逃雷〉のトライトンと呼ばれています。私は、人間に害する意思は無いので、魔法少女から逃げ回っていました。そこから、〈逃雷〉と名付けられました。これから、コンソラータの国民になる方々、よろしくお願いしますね。
魔人は、人間と同じです。人間には、固定観念や常識を抜けた少数派が存在すると聞き及んでいます。
魔人にもいるのですよ。本来、魔人は魔人にしか知覚できない人間が出すフェロモンを感じて、人間に害意を向けてしまいます。それが機能しない魔人、また、機能していてもその意欲を暴力以外の方法で昇華している魔人が存在しているのです。
しかし、そのような魔人は平穏に過ごせないのですよ。人間が、人間社会が少数派にマイナスな感情を向けるように、魔人社会でも人間に危害を加えない魔人は危害を加える魔人たちから苛烈な攻撃を受けるんです。
人間も魔人も怖いのでしょうね、自分たちとは違う価値観を持つ者たちを。だから多数派は少数派を排除し始め、差別が生まれる。まぁ、簡単に言うと、魔人も人間と同じく出る杭は打たれるのですよ。」
誠やコウたちは、たしかに魔人を悪と決めつけていたことに気付く。魔人の中にも、良い魔人がいることを考えれなかった、いや、その可能性を見ないようにしていた。
しかし、ネットの反応は異なっていた。コメント欄では、「王様笑、魔人に騙されてますよ笑」、「隣に魔人が住んでたらストレスで禿げるわ」、「何が少数派だよ、魔人の競争社会に勝てなかったから人間社会に溶け込もうとしてる弱者だろWWW」等、トライトンという魔人の話す内容を信じていない様子であった。
「…まあ、貴様らがそのような反応になるのも予想済み。聞く耳を持つ者だけに話すとしよう。
我が国の建国の宣言は、貴様らの国との戦争を意味する。これから、魔法少女たちが我々の首を狙ってくるだろう。我らの価値観に反する者たちは今すぐ我が領土から離れよ。また、我が国に共感する同士よ集い、共に戦おうぞ。我が国には、既に30人以上の魔法少女と魔人が属している。無論、人間の男も歓迎している。戦う術を教えよう。
我らは争いを好かぬ。我が国は、戦争をしないことを掲げる。しないために、我が国一生に一度の矛盾を抱えた戦争を行う。二度と争い事をふっかけられないように徹底的にな。」
そのように騎堅は述べると、映像が真っ暗になる。コメント欄では、「これ結構やばくね?」「魔法少女が何とかするでしょ」「俺男として社会に居ずらいからこの国行ってやり直そうかな」等荒れている。
誠、コウ、橘雪、飯伏暁歌の4人は暗くなった画面をそのまま見つめ、黙っている。事態は深刻。
始まったのだ、戦争が。
魔人と人間の区別について
・魔人には、角が生えている。
・角の本数や長さで強さがわかる。
▶︎平均は、本数で3本、長さでいうと5cmほど。
▶︎後天的に本数、長さが増すことは全然ある。
▶︎千手殺のバルカンは、7本の角があり、おでこに生えている3つの角が後頭部に沿って長い。つまり、めちゃくそ強い。




