最悪な集会
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集会当日。
橘さんが俺のアパートに来て、そこから集会場所に向かうとのことだった。今は橘さんが来るまで、スマホで調べものをしていた。
調べものとは、Aランクの魔法少女についてである。会っておく前に下調べをしておこうと思ったからだ。とはいっても、魔法少女庁からの情報であるため、情報量はだいぶ少ない。公開しているのは、名前と顔写真、戦績、国民へのメッセージぐらいだ。
魔法少女庁に属する魔法少女の情報は、国から規制を受けている。その理由は勿論、魔人や異能を悪用する者、つまり魔女に知られないためである。
惰性でスマホをぽちぽちといじっていると、インターホンが鳴った。
「誠さん。橘です。」
「あいよ」と気の抜けた返事をして、玄関を開けると、そこには橘さんの3分の1の高さはあるダンボール箱を持った彼女がいた。
「これは誠さんの魔人変装アイテムです!」
彼女は、ふふんと上機嫌でダンボール箱を俺に渡す。とりあえず彼女を部屋の中にあげて、リビングで箱を開封する。
そこにあったのは、焦げ茶のコートに軍服、王冠のような角が生えたハロウィンパンプキンの被り物であった。
素直な感想を言えば、「超かっちょいい」だった。さらに、顔も隠せて一石二鳥。
「ナイスなセンスだ!これで堂々と橘さんと共に戦えるな!」
「ありがとうございます。頑張って考えた甲斐があります!
他の魔法少女と会う時は、魔力を大袈裟に出して振舞ってください。魔人は魔力を出して周囲を威嚇する生き物なので。」
「そして、集会のときに、絶対守って欲しいことがあります。何があっても私の許可無しで話さないでください。」
守って欲しいこと。それを語る彼女の目は真剣で、暗い印象を受けた。
集会の時刻が迫り、俺と彼女は、集会場所へと移動する。道中、変装した俺を見る視線がとても痛く、恥ずかしかった。
目的の場に着く。
その建物は、文化会館のような大きさで、【キュリア ―東第3支部】と玄関横の立て札に記載されていた。キュリアとは、ラテン語で「集会所」とそのまんまの意味である。警備員が何人も巡回しており、監視カメラは死角が無いように至る所に設置され、厳重な造りであることがわかる。
中に入るのが躊躇われる。いや、中に入れないだろ。俺今おかしな格好したやつだぞ。最悪、変なコスプレした変質者としてお縄につく可能性も有り得る。そのような考えが頭ん中を巡っておぼつく。橘さんは、そんな俺なんか気にせずズカズカと建物の中に入っていく。慌てて俺もついて行く。
玄関には、ゲートが設置されており、ゲートの隣にはカウンターがあり、そこで警備員が通る者の身分を確認していた。
「そこの魔法少女と変なの。身分を証明しろ。」
警備員は、俺たちに冷たい目線を向けて、感情がないと感じさせるような声色で問いかけてきた。俺、「変なの」って言われてたぞ。
橘さんは眉ひとつ動かすこと無く、鞄から証明書っぽいモノを取り出し、警備員に見せる。
「っっ!これは失礼いたしました。Aランクの橘雪様でございましたか。お連れ様のことを聴いてもよろしいでしょうか?」
あっ、こいつ、橘さんがAランクだってわかった瞬間手の平返しやがった!もしや、Bランク以下だと雑に扱われるのか?同じ国民を守る魔法少女だというのに………。
「隣にいるのは、私の騎士。私が先日隷属させた魔人です。」
橘さんは、警備員に返すように冷たい目線、冷たい声色で答える。ほんわかした彼女しか見てないせいなのか、冷たい対応をする彼女がとても印象に残った。
「っ!そうでしたか。重ねて、失礼いたしました。ゲートを開放しました、お通りください。Aランク集会の場は、突き当たりを真っ直ぐの、大広間です。」
大広間。
橘さんが大広間につながる豪華な扉を開けた。大広間には、既に何人か待機していた。見たことのある者もいれば、知らない者もいた。
とても重く苦しい空間だった。皆ピリピリとしており、言葉を発せるような状況ではないことがわかる。
「あら、誰かと思えば、魔物と仲良くしてる冴えない魔女っ子じゃない。」
言葉を発したのは、数人の男女を周りに囲って席に座している女性であった。さっき調べたときにいた人だ。Aランク6位の浅霧洋子、だったはず。彼女が発言した時、その周りの男女が橘さんを見てクスクスと嘲笑しだす。
「隣にいるヘンテコなやつは貴方の新しいお友達かしら? 貴方、人間のお友達よりも魔物のお友達の方が多いのねぇ?」
これは、いじめだ。
橘さんは無表情で無言を貫いている。他の人たちは、我関せず、興味無いといったような表情で介入しようとはしない。
「無視してるのかしら?
貴方、Aランクに昇格して私と対等だと思って調子に乗っているのかしら。でも、全然違うわよ。貴方は、Aランク7位の最下位で、私は6位。貴方はすぐ降格してしまう危機的な位置なのわかってる??」
「あぁ、それとも……
この前の件で怒って黙っているのかしら?」
この前の件、その言葉に今まで無反応を貫いていた橘さんの体がぴくりと動く。
「浅霧様、この前の件って何やっちゃたんですかァ?」
浅霧という女を囲う男女のひとりが、芝居の如く尋ねる。
「それはねぇ、簡単に言うと、嘘告白ってやつよ。
私の男のひとり、良ちゃんにそこの女にウソの告白してこいって命令したのよ。幸薄そうなカンジだったし、一瞬でも幸せになって欲しいなぁって思ってね。
貴方の告白されて赤面したときの表情から、嘘だってわかった瞬間の絶望の表情への変化、とっても愉快で楽しかったわよ。そう思うわよねぇ、良ちゃんも。」
浅霧洋子は、大広間にいる人全員に聞こえるような大きな声でわざと話す。そして、嘘告白を命じられた男にも賛同を促す。
橘雪は、拳を震えるほど強く握り、怒りを抑えている。
わかった。彼女が俺に許可無く話すなと言ったワケが。
彼女は、浅霧洋子とその取り巻きにいじめられている。それも、ずっと前から。
今の俺は、魔人だ。意志の無い、命令されれば動く操り人形だ。下手なことはできない。耐えるしかない。こんな場面で耐えることが彼女にとって良いことなのかもわからないまま。
大広間の扉が再び開いた。
大広間に入ってきたのは、ショートヘアで凛々しい表情をした女性と黒髪ロングヘアの中性的な顔立ちをした筋肉質な女性の2人組であった。
「いじめは感心しないな。魔法少女は、国民を魔物から守る平和の象徴だよ。キミの言動はイメージダウンにつながるからやめてほしいな。」
ショートヘアの女性、Aランク3位の飯伏 暁歌が不穏な空気の根源である浅霧洋子を止めに入る。
飯伏暁歌の隣に立つ女性は、ペンとメモ帳を取り出し、何かを書き始め、浅霧洋子の方向に書いたメモを見せつける。
― 私は、いじめという悪を許さない ―
鋭い目つきで浅霧洋子を睨みつけ、書いたメモ用紙をくしゃくしゃに丸めてポッケに入れた。
浅霧洋子は、苦虫を噛み潰したような表情になり、プイと顔を背け、橘雪に対する罵倒を辞めた。
「初めましての方も多いから改めて紹介するね。
彼女の名は、ひかり。異能は持たないため、魔法少女ではないが、魔力を使った武術を心得ている。私より強い。」
「キミは、最近Aランクに昇格した橘 雪ちゃんだね。私は、飯伏暁歌、よろしくね。」
「あ、はい。その、ありがとうございます、助けていただいて。よろしく、お願いします、飯伏さんに、ひかりさん。」
橘雪は、今まで止めに入る者がいなくて驚きを隠せないのかオドオドして対応していた。
「早速質問いいかな?
キミの隣にいる禍々しい存在は何かな?」
飯伏さんと目が合う。俺を魔人だと思っているようだ、バレてない。
「あ、この方は、以前倒して隷属させた魔人です。
」
「なるほど、これが噂の万手殺のバルカンか。接敵した魔法少女全員が殺され、名前ばかりが先行していたあの魔人はこのような感じだったとは。」
いじめに関心を示さなかった者たちも食い入るように俺を見る。というか俺、万手殺のバルカンの設定だったんかい。バルカンの姿を見た事のあるやつが居なくて良かったぞ。
「あれが万手殺…」「Aランクを殺した魔人をどうやって彼女が倒したんだ」「急に襲ってこないだろうか」等、場がざわめき出す。
「皆、落ち着くんだ。
雪ちゃん、この場にいる皆がそこにいる者が万手殺であるか半信半疑のようだ。
すまないが、証明、できるかい?」
橘さんが俺の方を見る。その表情は、焦っている表情だった。
俺は彼女を見て、「大丈夫」という意図で頷く。
「…………バルカンよ。貴方の力、証明しなさい。」
「心得た。」
俺はありったけの魔力を殺気としてこの場にいる者たちに振り向けた。
結果、場はしんとしていた。換気扇の音や外の環境が聞こえるほどだった。もしや、Aランク程の魔法少女であれば、今のは日常茶飯事であったかと焦った。
次に俺は、誰も居ないところに向けて飛ぶ斬撃を披露しようとした。
「待て、待ってくれ!もういい。キミの実力は十二分にわかったよ。今の状態でも手加減していたんだろう?だって、2つ名の由来となった無数の触手もまだ出していない。」
同じ空間にいた魔法少女たちも冷や汗をかきながらこくこくと頷いている。
橘さんはホッと安堵した表情を浮かべるが…
俺に刺々しい魔力が向けられている。
向けた本人、ひかりは俺にメモ用紙を突き出す。
― 私と手合わせしてほしい、万手殺殿。 ―




